シチズン時計創業100 周年を記念して刊行される『寺山修司 時計をめぐる幻想』について

 By : a-ls

平成も終わろうとしている今の若い方々に、寺山修司という記号がどのような意味を持っているのかはよくわからないが、昭和、それも戦後と区分される時代を若者として生きた世代にとって、寺山修司は新しいカルチャー(カウンター・カルチャー)の代表みたいな存在だった。当時はアングラという言葉しかなかったが、今で言うサブカルチャーの先駆者であり、歌人、詩人、劇団主宰などといった多彩な表現において、常に本流とは異なるアプローチを志向し、時代を揺さぶる存在であった。

正岡子規や与謝野晶子など、かつて、歌人の言葉は国の行方にも大きな影響を及ぼした。俳人としてスタートした寺山は、そうした歌人の系譜の終末を看取ったような存在でもあったが、その分、言葉という表現を根本に置き、言葉にこだわり続け、結果、47歳という決して長くない人生の中で膨大な言葉(=作品)を残している。
 あ、そうだ。アニメの「あしたのジョー」の主題歌を作詞した人といえば、今の若い人でもわかるかしら?
『あしたはどっちだ』 というアレだけど。

で、これは知らなかったのだが、1967年2月から1970年9月まで、27回に渡って、「Citizen Sales News」という当時のシチズン商事(現在はシチズン時計に合併)の社内報にまで、つまり当時のシチズンの営業マンたちに向けて、「時計」に関する物語やエッセイを連載しており、その自筆原稿の一部は県近代文学館(青森市)に所蔵されているという。

そしてこの度、2018 年5 月28 日に100 周年を迎えるシチズンが、その記念事業の一環として、『寺山修司 時をめぐる幻想』という書名で、この連載からの15編の物語に現在活躍中の画家の絵を加えた画集として、4 月2 日にシチズングループの出版社、東京美術から刊行した。
また、27連載のうちの残る12編は、シチズン営業マンに向けてセールスの心構えを綴ったエッセイだそうで、「セールスマン博物誌」という括りで同書の巻末に収録されている。ちなみに同稿は本画集が初公開となるそうだ。



寺山修司『寺山修司 時をめぐる幻想』
出版社:東京美術
定価:2,300 円 税
発売日:2018 年4 月2 日

【内容】
はじめに  知られざる貴重な作品群との思いがけない邂逅によせて  青森大学社会学部教授  久慈きみ代

Ⅰ 時計幻想館
魔女時計       絵 北川麻衣子
花時計         絵 山科理絵
だまし時計      絵 小川香織
見えない時計 絵 水野恵理
少女の時計    絵 奥村彰一
天文時計        絵 北見隆
天文時計★リフレイン 絵 川口起美雄
時計牢            絵 塩月悠
猫時計            絵 田嶋香里
蝶時計            絵 智内兄助

甦る寺山さんの言葉 映像作家   萩原朔美

Ⅱ 時計の歴史
日時計        絵 谷村友
方柱碑        絵 伊豫田晃一
火時計        絵 山本タカト
焔時計        絵 菅野まり子
振り子時計 絵 浅野勝美
小型時計    絵 阿部千鶴

制作を終えて
特別付録『セールスマン博物誌』


シチズンからのプレスリリースにはこうある。
『連載開始時の1967 年は、寺山修司が、日本の演劇史に輝かしい記憶を残した、演劇実験室「天井棧敷」を設立した年でもあります。彼は、既存の演劇スタイルに異議を唱え、常に新しいスタイルを追求し、演劇の可能性を広げることに精力を傾け続けました。その活動は、多くの表現者に影響を与え、彼の精神は、今尚、数々の作品の中に受け継がれています。
寺山修司の妖しく美しい「時計」をめぐる物語の世界に触れることで、ふだん何気なく過ごしている「時間」や、いつも身近にある「時計」について、新たな発見や豊かな考察が生まれることを、シチズンは願っております。』


まだ未読なのでレヴューは書けないが、寺山の故郷・青森を拠点とする東奥日報の書評によると、
『新刊本の挿絵は、鉛筆画で有名な小川香織さん、耽美(たんび)的な作風の山本タカトさんら現代の作家16人がそれぞれのエッセーの世界観に合わせて書き下ろした。絵は1編ごとに見開きの紙面いっぱいに描かれ、文章を読まなくても楽しめるデザインになっている。』とのことである。


確か、寺山の時計にまつわる言葉に、こういうのがあったと思う。

 時計の針が
 前にすすむと「時間」になります
 後にすすむと「思い出」になります…。(「思いださないで」より)


 人は「時を見る」ことなどできない。
 見ることができるのは、「時計」なのである。(「仮面画報」より)


まぁ確かに、自分は時計ばっかをみてるわけだが(笑)。
最後に、代表作「田園に死す」から、時計を材にした有名な句を。


 「売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき」   







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東京美術
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