シチズン、機械式時計の開発部門に「Skillnote」を導入~機械式時計の開発を担う時計事業本部時計開発センター在籍の技術者を対象

 By : KITAMURA(a-ls)

先日、株式会社Skillnoteから、「シチズン時計が、機械式時計の開発部門に、クラウド型スキルマネジメントシステム"Skillnote"を導入」というプレスリリースが配信された。

それによるとこの"Skilltone"は、機械式時計の駆動部分である「ムーブメント」の開発を中心とした業務を行う時計事業本部時計開発センター(=ME開発部)に導入されたということだ。つまりはシチズンの時計開発の根幹にかかわる導入で、『現場と人事をつなぐ人財スキル情報のハブとして人的資本経営を支援』と謳われている。

いまひとつ理解が及ばない点もあるのだが(すみません・汗)、なのでまず最初に、スキルマネジメントとは、"Skilltone"とは、いったいどのようなシステムなのかを、株式会社Skillnoteからのプレスリリースから抽出してみる。

『スキルマネジメントシステム「Skillnote」について~
「Skillnote」は、製造業において、従来Excel等で管理されてきたスキルマップ(力量管理表)を一元的に管理・運用することのできるクラウドサービスです。現場のスキル/教育データがクラウドに登録され見える化が進むことで、スキルデータを活用した計画的な人材育成・人材配置を実現し、技能伝承、多能工育成、即戦力化といったものづくり企業の人材管理に関する課題解決に貢献します』、とある。



さらに、『技術者には非常に小さい部品の製作から、複雑な機構の設計、部品を作るための工作機械の製作など、非常に高度で多岐にわたるスキルと知識が求められています。「Skillnote」は、従業員の力量情報(註:"力量"とは個々の業務に必要なスキル[技能]、知識、資格、経験等の能力のことを指し、人財スキルを可視化・一元管理できる情報)を活用した計画的な人材育成と最適配置を実現するスキルマネジメントシステムです。従業員のスキル情報を軸に教育情報(OJTや講習の計画、履歴)および資格情報のそれぞれを連動させた一元管理により、組織的な人材戦略の策定および個人に最適化した育成計画の立案、進捗管理を実現します。』、ということらしい。

つまり、個人のスキル情報をクラウドで共有(一元化・可視化)することで、人材の配置や教育などを最適化できるというシステムらしい。新たに開発したいムーブメントの構想に対し、力量的・経験的に最もふさわしい人員を配置したチーム作りをしたり、チームに加える際にどのメンバーにどのスキルを教育すればより理想的かなどが、組織内で見える化されることになるシステムのようだ。

これを共通認識として踏まえ、以下に引用を続ける。


製造業に特化したスキルマネジメントシステム「Skillnote」を提供~現場と人事をつなぐ人財スキル情報のハブとして人的資本経営を支援

製造業のスキルマネジメントを牽引する株式会社Skillnoteはシチズン時計株式会社がクラウド型スキルマネジメントシステム「Skillnote」を導入したことを発表します。
シチズン時計株式会社は、機械式時計の開発を担う時計事業本部時計開発センター(ME開発部)に在籍する技術者を対象に、2023年12月1日からSkillnoteの運用を開始しています。これによりME開発部は、人事部門とも連携しながら、各部署で独自に管理されていた力量管理を一元化し、スキルデータを活用した戦略的な人材育成を本格化します。また今後シチズン時計は、ME開発部での運用と効果を踏まえ、他部門での導入を検討しています。

シチズン時計は、腕時計の部品から完成時計の組み立てまで自社で一貫製造することができる総合時計メーカーとして、世界約140の国と地域でビジネスを展開するグローバル企業です。1918年の創業以来、革新的なテクノロジーと、 マニュファクチュールとして培ってきた熟練の技能とともに、腕時計の本質と新たな可能性を追求し続けています。



(作業風景 提供:シチズン時計)



(機械式時計のムーブメント、提供:シチズン時計)


Skillnote導入の背景
シチズン時計は、グループの長期ビジョン「シチズングループビジョン 2030」のもと、サスティナビリティ領域における重点的な取り組みとして人的資本経営を推進しています。そのため、同社の人事部門は、資本の1つとしての従業員のスキルを正確に把握し活用することで、ベテランの退職に伴う技能伝承や多能工化、キャリア開発支援などを、部門を越えた会社全体の取り組みとして戦略的に推進することを目指しています。

しかし、従来の力量管理はそれぞれの現場主導で進められており、管理方法も基準も異なることから、人事が情報を一元的に把握、活用することが困難でした。一方で、現場部門のME開発部も、部内の複数の課がそれぞれに力量管理を行っていたため、部全体でのスキル情報の活用に課題がありました。

そこで人事部門とME開発部は連携し、社内における人財スキルデータ活用の端緒となるべく「Skillnote」を導入しました。これによりME開発部は、部全体のスキル保有状況を可視化し、データに基づいた戦略的な人材育成や技能伝承、新規事業における最適な人財アサインなどを本格化します。


Skillnote選定理由
導入の決め手には大きく3つのポイントがあげられます。

・人財スキルを可視化し一元管理できる
各部署共通のフォーマット、統一した基準のもとで技術者のスキルを可視化し、一元的に管理、運用することができる。部門全体の人財スキルの保有状況を把握し、戦略的な人材育成や最適な配置に活用することができる。

・スキルデータに基づいた人財検索と人財アサイン
新規プロジェクトの際に、求められるスキルや知識、経験で最適な人財を検索し、アサインに活用することができる。異動の際にも、同一基準のスキルデータを新たな部署でも引き継ぎ、更新することが出来るため、評価等のバラつきを防ぐことができる。

・スキル分析機能
「Skillnote」で一元管理している従業員のスキル情報/資格情報/教育情報などを、部門・年代・時系列といった様々な軸で分析ができる。会社全体の課題となっている技能伝承に関し、経年変化で失われるスキルを分析することで、中長期的な戦略立案に役立てることができる。


シチズン時計株式会社 時計事業本部 時計開発センター ME開発部部長 鈴木紀寿さんのコメント
『私たち、ME開発部が手掛ける機械式時計作りは、これまで熟練の技術者による勘と経験の世界でした。今後、技術力に更なる磨きをかけていく為には、人財のスキルや経験を資本として捉え、見える化し、管理し、維持向上していくことが極めて重要です。これは私たちの部署だけの問題ではなく、会社全体、日本のものづくり産業全体の喫緊の課題であると言っても良いでしょう。『Skillnote』の導入は、会社にとっては人財スキルデータの一元的な運用と活用の基盤となるものであり、従業員にとっては自分の保有スキル、求められるスキル、他領域のスキルを確認することができるため、自律的なキャリア形成の支援となると考えています。今後Skillnote社には、この領域におけるパイオニアとしての知見をもって当社の取り組みに伴走して頂けることを期待しています。』


シチズン時計株式会社 人事部人財開発課 河島慎様のコメント
『昨今、人事領域では、人的資本経営や非財務情報の可視化と開示、ジョブ型雇用の浸透など、外部環境が大きく変化してきています。また、当社内に目を移せば、ベテランの退職に伴う技能継承や多能工化、キャリア開発支援など、部門の枠を越えた全社的な取り組みが増々必要になってきています。今回の『Skillnote』の導入は、こうした背景を鑑み、従業員のスキルの可視化とそのデータ活用を実現するためのものです。加えて、人事部門と現場部門の連携を促進するハブとしての役割も担っていくと考えています。これにより、事業戦略と人財戦略の連動性を高めると同時に、従業員一人ひとりの成長や働きがいの向上や支援にも寄与していきたいと考えています。』




親方がいて弟子がいて、技術は限られた人間のみへ口伝という時代は、もはや遠くになったのだろうが、時計師や熟練職人の織り成すロマンや心意気みたいなものを、時計にはまだまだ感じていたいというのもある。
しかしこうした進歩が、作業の能率化や新規機構の開発面などで、とても画期的なのもわかる。ユーザーサイドとしてはちょっと複雑なものもあるけれど、素晴らしい開発が進むにこしたことはないので、シチズンさんの今後の新ムーブ開発に大いに期待したい。



シチズン時計株式会社
https://www.citizen.co.jp/ 

株式会社Skillnote
https://www.skillnote.jp/