ヴティライネン ますます進化する芸術的な工芸ダイヤル

時計師のカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏が率いる独立メゾンVOUTILAINEN(ヴティライネン)、美しいムーブメントと芸術的な工芸ダイヤルを備えたタイムピースを作り出しています。
今回のSIHHにもCARRÉ DES HORLOGERS(カレ・ド・オロロジ：時計の広間)に出展、新しい表現を試みた芸術的な工芸ダイヤルを備えたヴァントゥイット(Vingt-8)のユニークピース・リミテッドピースを展示していました。
機能としての新作は無かったものの、ますます進化し、より美しい表現を求める姿勢は素晴らしいと思います。

エナメル・ギロッシェ・ガルバニック・ペイント…様々な技法を既存の常識にとらわれずに組み合わせています。
ダイヤルは自社でだけではなく、他社にも供給、アーミン・シュトローム(Armin Strom)のギロッシェ文字盤も氏が率いる文字盤工房コンブレマイン(Comblémine)製です。



ギロッシェの上にブルーエナメルとグレイのガルバニックを組み合わせた文字盤。
光を捉える様はとてもすべては写しこめません。



一枚板のように見える文字盤は巧みに張り合わされた複数ピースで構成されています。



ギロッシェとガルバニックを組み合わせた赤文字盤。
正面から見ると単色でわずかに濃淡のような模様が見えるだけですが…



斜めからではギロッシェの方向による鮮やかな模様が出現！



部品をカシメて作っているツートーンの針もタダものではありません。
毎回美しさを写しこめないか挑戦していますが未熟です。



こちらはよりはっきりとしたチェック模様。
しかし、ギロッシェの細かさは同様に繊細です。



編集長も挑戦、ここまで寄ってやっと僅かに"目"が見えます。
控えめなレターで、HAND MADEと誇らしげに入れられています。



天然石を象嵌したものも。



完成品のほか、ダイヤル単体のサンプルもいくつか用意されていました。
ユニークピースの相談の時、見ながらディスカッションを行いイマジネーションを広げるそうです。

そして"超大物"…



完全社内製のブラックエナメル！
社内で研究したレシピによって焼き上げに成功したそうですが、さらに驚くべきはエナメルにもかかわらず、インデックスはゴールド製のアプライド・インデックス、すなわち文字盤上に開けられた穴に"足"を差し込んで固定する方法を取っています。
エナメルが割れてしまい、穴を後から開けることはできないため、ベースの時点で穴をあけた状態で"パイプ"のようなものを挿し込み、穴が塞がれないようにしてエナメルパウダーを振りかけては焼成を行っている"らしい"ですが、もちろん詳細な方法は秘中の秘だそうです。
手間が相当にかかるため、年間の生産枚数は一桁レベルだそうです。



エナメルの艶とゴールドの色気が素晴らしいマッチング。
ケース同色の立体的なインデックスがここまで良い組み合わせだとは…

コンプリケーションレベルのナチュラルエスケープメントムーブメントとはいえ、"余白"を活かすことのできる、シンプルな三針フェイスに組み合わせてこその意匠ではないでしょうか。
今更気が付きましたが、VOUTILAINENのレターを短針ブレゲ針のサークル部分が通過するんですね。



もちろんエナメル愛好家の編集長も撮影。



アプライド・インデックスの立体感、伝わりますでしょうか。
そして表面の滑らかさはエナメルということが信じられないレベルですが、柔らかな光の反射は間違いなくエナメルです。



もちろん、ムーブメントも一部の隙も無い仕上がり。
独自のナチュラルエスケープメントタイプの脱進機を徹底的に磨き上げています。
このムーブメント自体のポテンシャルが高いのもありますが、一つの基礎設計を熟成していくというのは本当に素晴らしい。



編集長撮影。
文字盤・ケースのイメージに合わせてムーブメントの仕上げ(メッキ・表面加工)を変えているほか、大きめのケースに対しては地板そのものを拡大する方法で対処、不格好なスペーサーなどは入っていません。



コート・ド・ジュネーブ仕上げ。



古典を思わせる、サンド・ブラスト仕上げ。

どのピースも素晴らしく、またオーナーの"ワガママ"をかなえるユニークピースも作成しています。



カリ・ヴティライネン氏(右)と時計学校WOSTEPでの氏の"教え子"で日本のディストリビューションを行っている林 雅仁氏(左)。

ありがとうございました！

関連 Web Site

ヴティライネン 日本語サイト
http://www.voutilainen.jp/index.html

ヴティライネン 本国サイト
http://www.voutilainen.ch/