FABERGÉ(ファベルジェ)、その珠玉のタイムピース

 By : KITAMURA(a-ls)

以前、個人ブログで紹介したことのあるFABERGÉ(ファベルジェ)。
http://alszanmai.exblog.jp/24357992/


今回、その実機作品を見る機会に恵まれた!

ファベルジェといえば、卵型のオブジェに様々な精巧な仕掛けと宝飾を極めたインペリアル・イースターエッグの製作で名高い。
イースターエッグというのは本来、復活祭(イースター)を祝うため、特別に飾り付けられたゆで卵だが、帝政ロシアのロマノフ王朝家からロシア皇室特別御用達に指名されていたファベルジェ工房は、1885年、時の皇帝アレクサンドル3世から、妻へのプレゼントとして貴金属で作った特別な宝飾品のイースターエッグ作製を依頼される。
奇抜で緻密な機械仕掛けと宝飾とを合わせたそのイースターエッグの出来栄えは皇帝を大いに満足させ、ファベルジェのイースターエッグは特にインペリアル・イースターエッグと呼ばれ、世に知られることとなる。
以後このプレゼントは皇帝一家の習慣となり、それは十月革命によって帝政が崩壊するまで、途切れることなく続いた。
製作総数は44個とも55個とも言われるが、約30個が現存し、もし市場に出たら一個数十億円の値が付くといわれている(実際ガレージセールで偶然見つかった1個が、オークションで35億円で落札された)。


そんな歴史あるファベルジェだが、まずは一番興味があったレディース・コンプリケーション「 Lady Compliquée Peacock 」から見せてもらった。
これは1908年に作られたインペリアル・イースター・エッグ、"Peacock-egg"から着想を得たオマージュ作品とされている。





38mm径の瀟洒なケースに収められた時計には時分針がなく、時間は3時のリューズ位置で、そして分は孔雀の羽の位置で読む。
この孔雀の羽はレトログラード機構なので、1時間に一回、正時に戻る際に大きく優雅にはためく姿を見ることができるという仕組みだ。羽の先に嵌め込まれた宝石の種類によって、ブラックサファイア、エメラルド、ルビーの3色のヴァリエーションがある。







現在のファベルジェは宝石・高級宝飾品のブランドとしてニューヨーク、ロンドンに直営店を持ち、世界38店舗で展開しているだけあって、その宝飾部分は実に見事だ。




時計部門の開設は3年前からということで、時計に関しては新進のブランドなのだが、名人は名人を知るというか、機械に関しては信頼のおける時計師とのコラボレーションによって作られている。この「Peacock」のムーメントは、レトログラードの魔術師といわれる天才時計師で、オーパス9などの製作で知られるジャン=マル ク・ヴィダレッシュの手によるものだ。

で、このモデルは昨年、時計愛好家に最も重視される年間のベスト時計賞ともいえるFGHG(=Fondation du Grand Prix d'Horlogerie de Genève)2015で、「ハイテック・レディース部門 」のグランプリを受賞している!

(参照)
http://alszanmai.exblog.jp/25042821/
http://www.hautetime.com/hands-on-with-the-faberge-lady-compliquee-peacock-watch/



また、ジャン=マル ク・ヴィダレッシュ氏といえば、2013年にわれらがウォルター・ランゲお爺ちゃんと一緒にFHH文化賞も受賞している、何気に"わが陣営”とも縁のある御方なのだ。

http://alszanmai.exblog.jp/21472321/




ということで、このファベルジェが単なる新進ブランドではなく、外の宝飾工芸も、中の機械技術も超一流のタイムピースということが、少しでも理解していただけると嬉しいところである。


続いて、全面MOPのこの美しい時計が「Lady Levity 」。



三日月が分、太陽が時を示すのだが、センターのドーム状の飾りというか盛り上がりに注目!
目を凝らすと、何か見えてこないだろうが?



これではどうだ!



そう、よくムーンフェイズに見られる、あの”お月さまの顔”が!!!

これはサファイアクリスタルの内側にプラチナと白銀箔で刷った"隠し印刷”で、オーナはこの部分に好きな紋様や文字を刷込む注文も可能ということだ!




この機械も、ジャン=マル ク・ヴィダレッシュが設立した複雑式ムーブメント開発会社Agenhor(アジェノー)社製。
36mm径。18 k・RGケース。価格は$21,000。




そして、発表当時に大変な話題となった30本限定のフライング・トゥールビヨン(プラチナ15個、ブルーチタン15個)も拝見できた。







このムーブメントは、APRP(AP・ルノ・エ・パピ)製という、これまた名工の作!



44mm径。分割された文字盤の加工のシャープさもタダモノではない!!




さて実はここからが本番で、今年の新作の紹介だ。

まずはヴィダレッシュ氏のAgenhor(アジェノー)社が新たに開発したムーブメントを搭載したGMTウォッチ、「Visionnaire DTZ 」。


反射を避けるために傾けて撮影したためセンターのドームがよく見えていないが、正面から見るとこうなる。




さきほどの「Lady Levity 」の技術に似たセンターのクリスタルドームの中に、ローカルタイム時間が24時表記で浮かぶので、あとは時分針をホームタイムに合わせておくだけという、今まで思いつかなかったようなシンプルなGMT。

しかもがドーム裾にある円形リングが、そのまま自動巻きのローターになっているという面白い設計が、いかにもヴィダレッシュらしい。



少しボケちゃってるけど、実機ではこんな感じ(もちろん数字ははっきり視認できる)。
また、細部の作り込みもウルトラ精密&丁寧。



ヴィダレッシュ氏の描きあげた華麗なムーブ”裏”がこちら。


価格はドル建てで$29,500。かなりリーズナボーでないか?
 


最後はシンプルな自動巻き3針時計「Altruist」を見る。




この時計の魅力の第一は、シャンルベ技法(ハンド・エングレーブのギョウシェ彫りにエナメル加工)が非常に美しい文字盤にある。





41mm径というメンズ、レディースともに使いやすいサイズで、爪に優しいリューズガードもこの時計の特徴のひとつだ。




折りたたまれているガードを起こすと、リューズ操作が非常に簡単。






透明エナメルが$15,000、ブルー・エナメルが$21,000とのこと。



今年のFGHG 2016にもノミネートされているファベルジェ。



まもなく(11月10日)に、GPHG最終受賞作品の発表があるが、結果の如何に関わらず、今後大いに注目に値するブランドではないだろうか。

残念ながら、まだ日本に取扱店はないそうで、
詳細に関してはこちらを参照して欲しい。
http://www.faberge.com/





またご興味ある方には、コメント欄に非公開メッセージを残していただければ、コレスポンデンスをお教えできますので、ぜひご連絡ください。








え、これまた蛇足だが、ファベルジェの創業者であるロシア人のピーター・カール・ファベルジェ(1846-1920)が、宝飾の技巧を学んだのはドレスデンの工芸大学と言われているので、なんと、アドルフ・ランゲの後輩でもあるのだ!!
以上、わが陣営一口メモでした・・・・(笑)。