ファーブル・ルーバ「レイダー・ハープーン」(独創的な時刻表示システム搭載)レビュー by ジャック・フォスター(HODINKEE)

 From : FAVRE-LEUBA (ファーブル・ルーバ)

現在、最もアクティヴかつクールなウオッチ・ウェブ・サイトとして知られるHODINKEE。
当WATCH MEDIA ONLINEの読者でも読まれている方は多いと思うし、サイトとしてのスタンスなど、参考にするところも多い。
この度、縁あってそのHODINKEEとWATCH MEDIA ONLINEとの初めてのコラボレイションが実現した!
彼らの記事の日本語訳の掲載許可を、これも当サイトと縁のあるファーブル・ルーバの協力で獲得することが出来たのである。
以下、ファーブル・ルーバの意欲作であり、“独創的な時刻表示システム”を搭載した「レイダー・ハープーン」のハンズ・オン・レポート。
ジャック・フォスター氏の素晴らしい分析をご堪能ください。



ファーブル・ルーバ 「レイダー・ハープーン」
“過剰な設計”を新たな段階へと進める時計!!

 

ファーブル・ルーバのレイダー・ハープーンは、近年復活した時計ブランドによる新作のダイバーズウォッチである。ファーブル・ルーバは、クォーツ時計が台頭する以前のスイス時計製造界を支えてきたブランドの一つで、当時幅広い種類の時計をつくっていた。ヴィンテージ時計愛好家の中で最も知られている同ブランドのモデルは2つあり、高度計を初めて搭載した「ビバーク」と、水深計を同じく初めて搭載した「バシィ」である。クォーツ危機が訪れた直後から同社はそれらのモデルの製造を中止していたが、昨年から2つのコレクションの製造販売を再開した。「レイダー」と「チーフ」コレクションである。前者は新しいバージョンの「ビバーク」モデルを擁し、9000m(エベレスト山が8848mであることを考えると、この時計は登山と言う観点ではすべての山をカバーできる)までの高度計測を実現している。またファーブル・ルーバは、過剰な機能を搭載したダイバーズウォッチ愛好家たちのために、500m防水を誇る「レイダー・ハープーン」を用意した。

 
●ファーブル・ルーバのレイダー・ハープーンは、ユニークな時刻表示システムを採用した500m防水のダイバーズウォッチである。

レイダー・ハープーンは“過剰な設計”の更に上をいく時計である。あらゆる部分が通常より大きくて目立ち、実用的観点から必要不可欠であるわけでもない。ケースは前述の通り500m防水となっている上、ヘリウムスケープバルブも備える。そのような機能が誰に、どんな状況で必要になるかは、飽和潜水についての記事を参照してもらいたいが、ケースはガンメタルPVDコーティングのステンレススティール製で、サイズは46mm×16.5mmとなっている。今回HODINKEEで紹介しているモデルには、ラグとの接合箇所において厚さ約7mmの厚手のレザーストラップが組み合わせられているが、先端にくると約4mmと、徐々に薄くなっている。 

ストラップがここまで頑丈な作りになっていることは、実際は幸いなことである。クライズデール(馬)をビールワゴンに安全に括り付けるのに十分なほどの丈夫さを感じられるうえ、180gもの金属の塊のような時計を手首につけるには、このくらいのストラップでないとバランスが取れないだろう(比較対象として、セイコーのダイバー SKX007はブレスレットモデルでありながら142gである。)


●時計の厚さと重さは、分厚く頑丈そうなストラップとバランスが取れている。

 

●時刻は分針を見て読み取る。分針が指し示すアワーリング上の数字が現在の時で、アワーリングは分針を追うように回転する。

 
この時計のスケールに目が慣れると、最初に気付くのは時針が不在であることだろう。中央にある小さな針が時針に見えるかもしれないが、この針は3つの開口部のあるスティール製のディスクから飛び出るように配された秒針である。実際はこの針は、秒を示す針というよりは、時計が動作していることを知らせる針である(秒針としてでも他の機能としてでも、このようなインディケーターの存在は、ダイバーズウォッチ国際規格であるISO 6425認証取得のための必須条件となっている。)先端がオレンジ色の1本の長い針が、分針なのである。

時間は、分針の位置に応じて読み取る。分針が指し示す白い回転リング上の数字が、現在の時間と言うことになる。分針が回転するのと同時に、白いアワーリングも回転し、分針が徐々にリング上の一つの数字を通り過ぎると、次の時間を示す数字に到達する。

このシステムの背後にある論拠は、ダイバーにとって最重要な情報は経過分数だと言うことである。実際にそうなのだが、この時計の魅力はその論拠以上にシンプルだ。単純に、格好いいのだ。アワーリングの内側にある分目盛は発光するマーカーを採用していて、経過分数の直感的な読み取りを可能にしている(それだけでなく正確な時刻調整を可能にしている。この時計が搭載するセリタSW200ベースのムーブメントが備えるストップセコンド機能と、秒針周りに15分ずつに振られた4つのマーカーにより、この時計は実に正確な時刻設定が可能である)。精密時計の分野においてこのような仕組みには、幾つかの前例がある。この考え方は、本質的にはダイヤル中央かつ前面に分針を設置する従来のダイヤル概念のバリエーションの一つなのである。

 
●発光素材の採用という賢明な判断により、レイダー・ハープーンは暗闇でもフルに使用できる。

 
アワーリングおよび分針にはスーパールミノバが塗布されており、暗闇での時刻の読み取りも可能である(機能インディケーター/秒針もよく見て欲しい)。最初は、ベゼルの設置位置がケース縁に近すぎて、ベゼルを無理なく回せないのではないかと感じたが、3時位置と9時位置の突起部分のお陰で、ベゼルの回転が簡単に行えることがわかった。

 

何年も前に、公共消費のための執筆を長く中断していたが、個人的および仕事上は深く時計に関わっていた友人が、こんなレビューを書いていたことを思い出した。「この時計に論拠は必要ない。」今回レイダー・ハープーンを着用し、このフレーズが頭をよぎった。なぜなら、この時計の第一印象はかなり風変りなのである。この時計に関しては、ありのままに受け入れれば頷けることが多くあり、時刻の表示方法の基本的なコンセプトや前提とした使用環境(分針の存在が最大化されなければならない状況)を理解すれば、残りのディテールも論理的であることがわかる。例えば多重になった逆回転防止ベゼル、アワーリング、そしてミニッツチャプターリングもだ。大ぶりなケースでさえも、納得できてくる。同心円になった前述の3つのリングのために、少し大きめのスペースを割くのは悪い考えではない。

 

突き詰めていくと、この時計はハマる人にはハマるものであり、それは多くの場合実用性よりは感情的な理由からだろう。この時計に対して何の反感もない。機械式時計は実に滑稽であるとも言える。そう、絶対的な感覚では、機械式時計は不便であり、不要と言えば不要である。しかし我々は機械式時計には内面的に一貫性のあるものであって欲しいと思い、夢を壊すものであって欲しくないと願う。そう言った点で、この時計は映画やコミックで描写されてきたアイアンマンを想起させる。実質的な世界平和の観点から言えば明らかに、あのような極めてナルシストで自己中心的な男にあれだけの怪力があるということは直観に反している。しかしながら、アイアンマンは結局面白いし、スーパーヒーローのパワーアーマーさながらに必要以上に頑丈に出来すぎている点は、ファーブル・ルーバのレイダー・ハープーンにも同じことが言える。

 

ファーブル・ルーバ「レイダー・ハープーン」:(掲載モデル)ガンメタルPVD加工ステンレススティール ケース、長さ46mm×幅16.5mm、500m防水、ヘリウムスケープバルブ搭載。陽極酸化アルミニウム製逆回転防止ベゼル、両面反射防止加工済みサファイアクリスタル。自動巻きキャリバーFL301 (セリタ SW200ベース)搭載、特許取得の分針と連動する回転アワーチャプターリング。ブルーに発光する針、アワーリング、ミニッツチャプターリング。
日本価格:495,000円(税抜)




引用元オリジナル記事:2017年8月22日掲載
https://www.hodinkee.com/articles/the-favre-leuba-raider-harpoon-with-an-ingenious-time-display-system

 

レイダー・ハープーンについてより詳しく知りたい場合はこちらへ:
https://favre-leuba.com/jp/.