A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨン・クロニクル(1994~2018年)

 By : KITAMURA(a-ls)

1815トゥールビヨン・ホワイトエナメルの発表に合わせて、A.ランゲ&ゾーネより、『A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨン・クロニクル(1994~2018年)』という資料がリリースされたので、その全文を掲載する。



『A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨン・クロニクル(1994~2018年)』





世界最高と評価されるトゥールビヨンの中に、A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨンも名を連ねています。
当マニュファクチュールが世に送り出した、重力を克服する回転装置を搭載した時計を一堂に集めてご紹介します。

トゥールビヨンを作って25年
研究と開発に専心した4年を経て1994年10月24日、新生A.ランゲ&ゾーネはドレスデンでランゲ1、サクソニア、アーケード、トゥールビヨン“プール・ル・メリット”を発表しました。その反響は大きく、時計業界の規範と価値観をがらりと変えるほどでした。A.ランゲ&ゾーネは、ドイツ・ザクセン地方の山間の町グラスヒュッテを、再び高級時計産業の立地として返り咲かせたのです。
見た人の脳裏に残る機械式時計のコレクションの中でも、トゥールビヨン“プール・ル・メリット”は眼識を持つ人々を感嘆させました。仕上がりの完璧なワンミニッツトゥールビヨンとチェーンフュジー(鎖引き)を初めて連動させた腕時計は、複雑機構と言えばランゲとうたわれたかつての地位を奪回したことの証左として受け入れられました。
それ以来、A.ランゲ&ゾーネの時計師たちは何度もトゥールビヨンの製作に打ち込んでいます。彼らは、トゥールビヨンを他の複雑機構と組み合わせて、かつて重力のテンプへの影響を相殺するために発明された仕掛けの技術的な可能性を広げる道を模索してきました。



いかにしてトゥールビヨンを停止させるか
この伝統豊かな複雑機構を改良するために最も重要な一歩となったのは、トゥールビヨン・ストップセコンド機構を発明したことです。
回転キャリッジの発明から200年以上の年月を経た現代で、ランゲの設計技師たちは、時計を時報などに同期させるために回転するトゥールビヨンのキャリッジ内にあるテンプを正確に停止させ、再び始動させる技術を発明しました。


ランゲが特許を取得した停止装置は、直接テンプに作用し瞬時に停止させます。この構造の利点は、この停止装置がヒゲゼンマイのエネルギーを受け取り、テンプが解放されると同時に自ら再び振動し始めることです。
この機構はリュウズを引くことで作動します回転キャリッジの中にあるテンプを止めるにあたって最大の難関は、キャリッジ側面にある3本の棒が停止プロセスを妨げないようにする方法を見つけることでした。そのためには、アームのどちらかがキャリッジ側面のいずれかの棒に当たってもテンプを確実に停止させねばなりません。試行錯誤を重ねて開発されたのが、回転式V字形ハックバネです。このバネの独特の形状により、キャリッジのどの位置からテンプを押さえつけても、過不足のないほど良い力が均一にテンプにかかります。




部品数84個、重さわずか4分の1グラム
トゥールビヨンの組立てと調整は、高級時計作りの中で最も難しい工程に数えられます。ランゲの複雑機構部門で長年経験を積んだ時計師ですら、この二つの工程にまるまる1週間を要します。ムーブメントは多数の工程を経て、いよいよ繊細なトゥールビヨンをムーブメント基礎部分に取り付ける工程に至ります。
完璧なトゥールビヨンへの長い道のりは、あらかじめ製作し仕上げ装飾を施した84個の部品の一次組立てから始まります。これらの部品の総重量は、わずか4分の1グラムです。一次組立てに続く調整の後、分解して最後の仕上げ作業を行い、最終組立工程に入ります。この工程で初めて、ダイヤル側のトゥールビヨン受けとムーブメント側のハンドエングレービング入り秒針車受けまたはクロノグラフ受けの間にトゥールビヨンを固定します。かつて1Aクオリティで名声を誇ったA.ランゲ&ゾーネの懐中時計でもそうであったように、二つのダイヤモンド受け石の間に、あるいはストップセコンド搭載ムーブメントであればダイヤモンド受け石1石と人工ルビー1石の間に、トゥールビヨンが収められます。
トゥールビヨン受けの仕上げ装飾には、特に時間と労力が要求されます。それがトゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”のトゥールビヨン受けともなると、なおさらです。その表面には膨らみがあるからです。スチール製部品の表面に施されるブラックポリッシュは、表面に当たる光が特定の方向にのみ反射するように磨き上げねばなりません。すなわち、その方向角から表面を見た場合にのみ表面が光沢を放ち、それ以外の方向から見ると漆黒に見えるのです。









トゥールビヨン“プール・ル・メリット”
1994年の発表以来、ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”は、世界最高の機械式腕時計の一つに数えられています。時計史上初めてチェーンフュジー(鎖引き)機構を備えたこのトゥールビヨンは、ランゲ1に勝るとも劣らず、A.ランゲ&ゾーネの復活を鮮烈に印象づけました。コレクションに加えたい時計として収集家に人気の高いこのモデルは、たびたびオークションで最高値で取引されています。






ランゲ1・トゥールビヨン
新世紀を目前に控えた2000年、A.ランゲ&ゾーネは名機の仲間入りをしたランゲ1をベースにして開発したトゥールビヨン搭載モデルを発表しました。このモデルは、世界で初めてトゥールビヨン、アウトサイズデイト、ツインバレル、3日間のパワーリザーブ、累進式パワーリザーブ表示を同時に搭載した腕時計です。当時はまだ、回転するトゥールビヨン・キャリッジの中にあるテンプを一瞬の狂いもなく停止させることは不可能でした。この数年後、ランゲの設計技師たちが見事にその技術を開発することになります。特許を取得したストップセコンドは、ランゲ1・トゥールビヨンのその後のバリエーションモデル2点に搭載されました。








トゥールボグラフ “プール・ル・メリット”
ランゲ工房が内製する高度に複雑なキャリバーL903.0は、ラトラパント・クロノグラフ、ワンミニッツトゥールビヨン、そしてチェーンフュジー機構が連動する初めてのムーブメントです。歩度を安定させ、精度を高めるための二つの機構が、高度な製作技術が求められる工程を経て、1本の時計に融合しました。トゥールボグラフは、ランゲの工房で製作される最も高度な技法が駆使された時計にのみ与えられる“プール・ル・メリット”の称号を授けられた2本目のモデルです。








カバレット・トゥールビヨン
トゥールビヨン・キャリバーに初めてストップセコンド機能を搭載したカバレット・トゥールビヨンを発表し、A.ランゲ&ゾーネは「旋風(=トゥールビヨン)」の歴史に新たな1ページを開きました。ダイヤル側にあるトゥールビヨンは英知の結晶であるとともにメカニズムとして美しいばかりでなく、新開発技術としての実用性も兼ね備えているという点が、まさしくA.ランゲ&ゾーネらしいところです。この特許技術トゥールビヨン・ストップセコンド機構の発明によってついに、トゥールビヨンが時計の精度がどれほど向上させているかをきちんと確認することが可能になったのです。カバレット・トゥールビヨンは、二つの香箱により最大で5日間動き続けます。





リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”
リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリットの個性的なレギュレーター・ダイヤルに組み込まれた巧妙な回転メカニズムは、歴史上の名作に倣ったものです。ムーブメントには、ランゲ独自のチェーンフュジー機構と特許技術ストップセコンド付きワンミニッツトゥールビヨンが搭載されています。これらの複雑機構の連動により歩度を安定させ、ひいては精度も向上させています。





ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー
ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーは、二大複雑機構をランゲ1の個性的なデザインで包み込んだ時計です。カレンダー表示を時刻表示のまわりに巧妙に配置したことで、多くの情報を一目で読み取ることができます。ランゲ1のオフセンターに配置されたダイヤルにカレンダーを統合するために、ダイヤル外周に月表示として機能する回転リングを取り付けました。










1815トゥールビヨン
1815トゥールビヨンは、最高精度を追求した時計です。A.ランゲ&ゾーネはこのモデルで初めて、トゥールビヨン・ストップセコンド機構と秒針位置合わせメカニズム「ゼロリセット機構」を組み合わせました。二つの特許取得メカニズムが連動することで、トゥールビヨンを1秒違わず停止し、より簡単に時刻合わせができるようになりました。リューズを引くと、トゥールビヨンケージの中でテンプが瞬間的に停止し、秒針が素早くゼロ位置に戻ります。こうして、基準とする時計あるいは時報に正確に合わせて、簡単に時刻合わせができます。






ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン
ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨンは、三つの複雑機構、すなわちプレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンター付きコラムホイールクロノグラフ、永久カレンダー、ストップセコンド付きトゥールビヨンだけでなく、五つの付加機能を統合した傑作です。このモデルを開発する上での最大の難関は、複数の高度に複雑な機構をスムーズに連動させ、整然としたデザインの中にまとめることでした。その難題に挑んだ結果、完成度の高い機構を、表示器の多さにも関わらずすっきりとしたデザインに収めた時計が生まれました。











トゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”
独自の工夫で五つの複雑機構を組み合わせたトゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”は、世代から世代に受け継がれてきた精密時計技法の集大成ともいえる時計です。デザインに始まり、構造、工芸技術を駆使した仕上げ装飾にいたるまで、随所に伝統技法が脈々と息づいています。自社製キャリバーL133.1はドイツ・ザクセン時計技法として伝わるすべての基準を満たし、チェーンフュジー機構とトゥールビヨン、クロノグラフ、ラトラパント機能、永久カレンダーの巧みな連動を約束します。






個々のモデルに個人的なコメントを挟むつもりであったが、長くなりそうなのでそれは別記事に。
なかなかに圧巻のテーマなので、近日中に補足記事UPします。



しかし、クソ暑い・・・・・、ぞ。