A.ランゲ&ゾーネ、2018年度ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード発表~印象的な作品として「ヒコみづの」の学生の作品にも賛辞

 By : a-ls


将来有望な若き時計師の卵たちに時計製作の現場を体験させ、才能を発揮するチャンスを与えてきた「ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード」。自らの修業期間が2つの大戦の間にあり、技術の習得にも苦労した経験からこの仕組みを発案し(設立当初は F. A. Lange Scholarship & Watchmaking Excellence Award、もしくは F.A.Lange Watchmaking Excellence Award)だったように記憶している)、現在の賞に名を冠するウォルター・ランゲ翁が逝去された後もその遺志は継承され、2018年まで、9名の若き才能に奨学金(賞金)を授与してきた。

今年のSIHH期間中、1月15日に2018年の受賞者の発表と表彰が行われたのだが、今回記事に取り上げたのは、惜しくも最優秀賞は逃したものの、審査員から高く評価された作品として、日本の時計専門学校である「ヒコみづの」の学生の作品が紹介されたということをお知らせしたかったからである。


SIHH期間中の恒例行事“ランゲ・フレンズ・ディナー”でも、アントニー・デ・ハス開発部長から、受賞者と作品の簡単な説明が行われた。



まずは、この「ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード」の仕組みについて、簡単に紹介しておく。
(※以下、ランゲHPより一部を加筆して転載 https://www.alange-soehne.com/ja/company/walter-lange-watchmaking-excellence-award


募集方法

世界中の修業年限3年以上の時計師養成学校に、募集要項をお送りします。
各学校は、毎年3月末までに参加に適していると思う生徒を3人まで推薦できます。対象者として見込んでいるのは、最終学年の1年前の生徒です。応募者は、成績優秀で創造力に富み、自分で難しいプロジェクトも実現できる生徒であることがのぞまれます。さらに、優れた英語力を有していることが前提になります。応募することにより、その学校は参加させる生徒がプロジェクトの第1部と2部(ワークショップ週間とコンテスト)に参加し、ワークショップ週間は生徒を公欠扱いにすることを承諾するものとします。参加者数が限られていますので、参加者の最終的な決定はA.ランゲ&ゾーネが行います。


ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワードの二部構成とは下記のようになっています。

第1部:ワークショップ(4~5月)
時計師養成学校からの推薦という形で、この奨学制度に応募するよう勧められた生徒が、ランゲ・ウーレンGmbHに応募します。応募書類を審査の上、選考によって選抜された生徒は、ドイツのドレスデンとグラスヒュッテに招待されます。
(ランゲ・ウーレンGmbHは、ドレスデンおよびグラスヒュッテまでの旅費・交通費および滞在費を負担し、参加者1人につき200ユーロの資材調達費を支給します。)
生徒たちは1週間をかけて、さまざまなプレゼンテーションを聴講し、工房および美術館を見学し、ランゲ・ウーレンGmbHでの集中ワークショップと専門家との話し合いに参加します。この1週間の最終日に、コンテストの課題が発表されます。


●2018年のワークショップ期間中の学生たち。様々な体験やレクチャーを通じて時計製作技術を学ぶ

 
第2部: コンテスト(10月まで)
参加者は約6カ月をかけて、課題の回答となる作品を制作します。これにあたり、ベースキャリバーが支給されます。作品は、10月末から11月初めにランゲ・ウーレンGmbHに届くように発送され、これを審査員団が作品を審査します。この審査の基準は、アイデアの斬新さ、機能性、技術および工芸技能の水準、仕上がりの美しさなどです。
基本的には年末に華やかな雰囲気の中で、表彰式を執り行います。(A.ランゲ&ゾーネは優勝者を表彰式に招待します。)
優勝者の氏名は在籍学校名とともに一般に公表され、優勝者には1万ユーロの奨学金が贈られます。


●2018年コンテストで、8人の学生からランゲ本社に発送されてきた8個のムーブメント

参考として2015年のスカラシップとアワードの模様について触れた個人ブログ(動画もあります)もご覧ください。
https://alszanmai.exblog.jp/24809243/



では、2018年の結果について書かれたA.ランゲ&ゾーネ発行のプレスリリースを掲載する。



2018 年度ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード
栄冠はフィンランドのオットー・ペルトラさんに


A.ランゲ&ゾーネが主催するこのコンテストは、今年で9 回目を数えます。そして今回もまた、時計師の卵たちが豊かな創造力を発揮した応募作品が寄せられました。今回の課題は、音で時刻を知らせる機構を製作することでした。審査員たちは感心した様子で応募作品8 点を一つずつ手に取り、吟味しました。その結果、フィンランドのエスポー市で時計師養成学校に通う若干22 歳のオットー・ペルトラさんのリピーター搭載時計「オスティナート」が栄冠に輝きました。ペルトラさんには賞金1 万ユーロが贈呈されます。


優勝したオットー・ペルトラさんとその作品リピーター搭載時計「オスティナート」



2018年4月に、ランゲ本社の工房で開催されたワークショップで発表されたウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワードの課題は、「ハンマー打ち機構の設計と製作」でした。
それから半年間、ドイツ、フィンランド、フランス、日本、オランダおよびスイスの時計師養成学校から推薦された8名の才能豊かな時計師の卵たちが、その課題に取り組みました。
応募作品が出揃った2018年11月末、審査員4人が集まり作品を分析し評価しました。審査員団には、ランゲ商品開発責任者のアントニー・デ・ハスのほか、時計専門ジャーナリストのギスベルト・ブルーナー氏とペーター・ブラウン氏、そしてドレスデン数学・物理学サロン所長のペーター・プラースマイヤー氏が名を連ねます。


作品を評価する審査員たち(左から):ギスベルト・ブルーナー、ペーター・ブラウン、アントニー・デ・ハス、ペーター・プラースマイヤー


活発に意見が交わされた後、審査員団は満場一致で、15分ごとにメロディーを変えて打鐘するリピーター搭載時計「オスティナート」を優勝作品に決定しました。製作したのはフィンランド・エスポー市で時計師養成学校に在学中のオットー・ペルトラさんで、コンテスト応募作品が満たすべき4つの要件すべてにおいて秀でた技能を示しています。



ムーブメントは独創性、機能性、手仕事の質の高さ、美観のどの点においても傑出しています。特に素晴らしかったのは、6つのゴングを組み込み、音量豊かに非常に心地よい音の組み合わせで時刻を知らせる打鐘の完璧さです。このように革新的な構造のリピーターを思いついたのは、ペルトラさんが音楽一家という環境に育ったことと無縁ではないでしょう。作品名にもそれを窺うことができます。
「オスティナート」は、曲の中であるリズムまたはメロディーを繰り返し演奏することを意味する音楽用語なのです。

審査員団は、応募作品を審査しながら着想を得ることも多々あり、とりわけ応募作品8 点すべての創造性の豊かさについては、総じてこれまで以上のレベルであったと賞賛しています。提出された作品は、堅実なだけではなく、課題が難しかっただけに予想もしなかった意表を突くような興味深い斬新なアイデアで作られたものばかりでした。


今年は、優勝作品以外にも平均以上に優れた2作品に、特別に賛辞が贈られました。この2人の応募者が作ったムーブメントは、それぞれに意外なアイデアを巧みに具体化した完成度の高さで審査員をうならせました。

その一つは、ドイツのプフォルツハイム金細工師養成学校の時計技能士課程に通うリンダ・ホルツヴァルトさんの作品です。音でパワーリザーブ残量を知らせるというアイデアで傑出しているだけでなく、この機構に組み込まれた遊星歯車も自分で設計したという力作です。彼女の作品では特に、アイデアが一つ残らずきちんと時計に反映されている点が高く評価されました。自分で設計したラックと手作業でギョーシェ模様を施したダイヤルなどの装飾要素が、時計を最後まで丁寧に作り上げた完成度の高さを物語ります。

同様に審査員を感心させたのは、東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジに在籍する飯塚雄太郎さんの、任意に設定した温度を音で知らせるというアイデアです。飯塚さんは、かつて存在したある懐中時計からこの着想を得て、バイメタル構造の機構を設計しました。ベースムーブメントの構造には通常のものと大きな違いが見られます。これは日本文化を色濃く反映した結果です。音を出すためにハンマーが叩く外周リングを、かつて日本でドイツ人地質学者によって発見された石材(サヌカイト)で作ったのです。


リンダ・ホルツヴァルトさんの作品


●飯塚雄太郎さんの作品(5-7時にある表示が温度を示す)と、ワークショップ受講中の飯塚さん



SIHH ジュネーブサロン開催中の2019 年1 月15 日夜、国際記者会見の席上でランゲCEO のヴィルヘルム・シュミットがコンテストの結果を発表しました。シュミットCEO は受賞者への祝辞の中で、ウォルター・ランゲの遺志を継いでこのコンテストを継続するために長年にわたって審査員を務めてくださる方々に謝意を表するとともに、応募者と応募者を推薦してくださる時計師養成学校の協力にもお礼の言葉を述べました。 




最近、独立時計師として活動する菊野昌宏氏の番組が地上波で立て続けに製作されるなど、時計師という職業が少なからず注目を集めている。こうした状況は、時計師を夢見て日本で学んでいる若い人たちにも、大きな励みや具体的目標となるに違いない。

作り手の進化も間違いなく日本の時計シーンの向上につながっていくので、WATCH MEDIA ONLINEとしても、こうした試みが成功していく状況を、ぜひとも応援したいと思っている。






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