グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・クロノメーター・トゥールビヨンのゼロリセット機能についての推測

 By : CC Fan

グラスヒュッテ・オリジナルのステップ時合わせと”ゼロリセットできる”トゥールビヨン、セネタ・クロノメーター・トゥールビヨン



どうやっているのだろう?と思って実機を拝見、なんとなく理解できたので2か月ほど前にTwitterに載せました。

仕組みについて私が見た中では、どこか間違っているなと思った推測の話しか出ておらず、公式情報でも特許の関係かまだ秘密のようなので、理解を一度まとめておきたいと思います。

基本的な動作はリュウズ二段引きで、一段目で”時合わせモード”になり、トゥールビヨンが停止すると同時にセネタクロノメーター特有の分針がインデックス上をステップ移動するモードになり、分単位で正確な時合わせを行います、そしてもう一段引くと、”リセットモード”になり、トゥールビヨンケージが高速に回転、60秒の位置まで進んで停止します(先ほどのTwitterに動画を載せました)。



帰零の様子。

で、この動作の時に注目したことは以下の点です。
  1. 3番車と駆動ピニオンは強固に噛み合っていて外れるように見えない 
  2. 帰零の時にも3番車は動く 
  3. トゥールビヨンが上下しているようにも見えない 
  4. ガバナーは速度制御はしているけどエネルギーを蓄えているようには見えない
結論から言うと、通常のトゥールビヨンでは固定されている固定4番車が稼働できるようになっており、開放するとトゥールビヨンに3番車からのトルクが直接かかって回転しているのだと思われます。
ガバナーはトゥールビヨンが高速回転した時に速度が上がりすぎないようにするためについているのでしょう。

先ほどの点を順にみていきましょう。

自由度の考え方から、トゥールビヨンを早送りするためにはガンギ車のかみ合いを外して回す方法が考えられ、1の観察を行いました。
しかし、クラッチのようなものも、アンクル脱進機を外すような機構も見当たらず、外れているのはここではないと理解しました。

次に、帰零のエネルギーをどこから得ているか?ということを観察するために2を観察しました。
別のエネルギー源で動いているのであれば、3番車は動かないか動いても少しだと考えられますが、実際にはトゥールビヨンケージが動いた分に相当する量が動いているように見えました。
このことから、主ゼンマイのトルクで動かしているのだろうという推測が成り立ちます。
これにより2番車がわずかに動き、ずれてしまうことが考えられますが、動く量は1分分以下であり、その量であれば、インデックス分合わせによって筒カナが規制されているため動くことはないと考えられます。

トゥールビヨンを何らかの方法で無理やり回せばいいのか?と思って3を確認しましたが、ここも動いている様子はなく、さらにフライングトゥールビヨンで片方にしか支点がないため、動かすのは無理ではないかと思いました。

で、何度か動かしていると、ガバナーは帰零の時にしか動かず、輪列を追ってもトゥールビヨン以外にはつながっておらず、エネルギーを蓄えるような動作はなかったので4がわかりました。

脱進機の動作的にテンワを止めれば停止させるこのはできますが、逆に早回しするばあいは脱進機以外で開放しなくてはならないので、どこかが外れるだろうと思いましたが、ガンギ・トゥールビヨンケージそのもの・3番車と駆動用ピニオン、いずれも外れている様子はなく、あとは…と考えて固定4番車があるじゃないかという結論に達しました。

固定4番車をフリーにすれば、3番車からのトルクがもろにかかるため、自由に回転させることができます。
あとはガバナーで速度が上がりすぎないようにすればトゥールビヨンを早送りすることができ、さらにケージに設けられた爪(”ミニッツデテント”)をひっかけることで、60秒位置で止めることができます。



公式画像でも30分の位置に”ミニッツデテント”が確認できます。
トゥールビヨンケージに設けられた爪に、本体側のレバーの爪がかみ合って停止させています。


画像をコマ送りで見たところ、4番車の歯が回転によってなくなっているように見える…と言うのが先ほど掲載した写真です。
スーパースローで撮ればよかった…と言うのが後悔ではありますが、特許がクリアになれば公式情報も出るかなと…

出来れば開発した技術者とお話してみたいところです。



あと面白かったのはポリッシュされた外周部に鏡文字を写してクロノメータートゥールビヨンの文字を出すというディティール。
リセットトゥールビヨン機構が割と厚みがあり、文字盤もそれに合わせた高さになっているため、結構スペースに余裕があり、このような表現を行ったようです。



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