ブレゲ2020年新作が 今ブレゲブティック銀座で販売中~急きょインプレッション・レポート

 By : KITAMURA(a-ls)

例年だと、ウォッチズ&ワンダーズ(去年まではSIHH)やバーゼルワールドで発表となった新作は、その場でサンプルが見れるので、あくまでもプロトタイプとしてではあるが、実機の印象や外装の細部や装着感など、注目作品の続報記事で追いかけて、やがて製品が入荷して、販売実機の納品レポートやOFF会で見かけたニュースなどを書くという、発表からおよそ半年から一年くらいのトレース・サイクルが肌感覚としてある。

しかし今年は、致し方ない事由によって実機を見られる機会が非常に制限されているので、各ブランドが個別に発表するプレスリリースを紹介した以降のニュースが続いていかない。

そんな中、かなり厳格なルールの中でブティックの営業を再開しているスウォッチ・グループのハイエックセンターで、およそ一か月半ぶりくらいに打ち合わせをする用事があり、なかなかサンプルが見られないというような話をしていたところ、スタッフの方から、「サンプルではないですが、販売可能なものでしたらブティックにかなりありますよ」という驚きの言葉が!

そこで、検温・手指消毒という手順を踏んで、ブティックを訪れたお客さんというスタンスで、新入荷している新作を拝見することができた。

まずは一番興味のあった「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット オートマティック 5367」。
最近、文字盤の工芸技法にものすごい注力をしているブレゲの、ガチのグランフー・エナメル部門の出来栄えを見たかったのであるが、"なるほど"と唸らされるものがあった。





非常に深みのあるブルー。
最近、各社とも青文字盤(青エナメル)の追求に力を入れているが、ブレゲのエナメル技法すなわち顔料を発色させる技法は、厳正な温度管理や段階的な重ね焼成や研磨といった、それらはすべて積み上げられた職人の経験と腕前からくるものなのだか、それによって生まれる深みと滑らかさと艶は、ただただ素晴らしいの一語であった。このエナメル部門を指揮するのは、前世紀からの技術を継承する80歳を超えた老匠とのこと。

ちなみに、「クラッシック5177」のブルー・エナメルと比較してみた。





ダイヤルのベースが新技術のセラミックであるか、中世より連綿と引き継がれてきた伝統的なホワイトゴールドかという相違点を持つ2作。どちらにも利点はあるが、吸い込まれるようなブルーの色合いという点は、歴史の重さに一票を投じたい。



また、このモデルに搭載された最薄トゥールビヨン・ムーブメント(わずか3㎜厚)のキャリバー581により、ケース厚を7.45㎜にまとめたスマートなプロポーションとも相まって、トータルな完成度はため息モノであった。


G5367PT2Y9WU Blue enamel Tourbillon extra flat
(参考→)https://watch-media-online.com/news/2956/



続いて、"大物"の「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」
複雑機構の詳細については参考記事を参照していただきたく、ここでもまずは文字盤の工芸的な出来栄えから拝見する。



ハイライトは雄大な海洋の波を思わせる手彫りギヨシェ模様を配した彫と段差の美学だろうか。
トゥールビヨンを含む各表示窓の境界部への色味や高さの配慮が、全体の凝縮感を高め、ケース径43.9mm、ケース厚11.75㎜という大ぶりな本体を、デザインとしては引き締めるが、手首に置いたときの時計としての存在感は逆に目立たせるという"大技"を決めてくれている。








G5887BRG29WV Marine Equation Marchante Tourbillon PG Grey dial
(参考→) https://watch-media-online.com/news/3041/




そして最後に、 "ディス・イズ・ブレゲ"という面持ちの「クラシック 7137」と「クラシック 7337」の最新形を見る!





7337ブルー」は残念ながら見ることができなかったが、こちらもブルーをコンセプトの重心においている。
ブレゲが拠点としたフランスにはまさに18世紀に全盛を迎えたフランス国立セーブル製陶所があり、なかでも青色のセーブル・ブルー(ナポレオンブルー)の美しさには定評がある。もちろん琺瑯と陶磁器とではニュアンスが異なるが、それでもブレゲが青にこだわるのは歴史的DNAの必然のような気がする。



先の「5887」ほど段差を多用しない分、各表示を際立たせる細やかなギョウシェは技法が、ある意味「5887」以上に尽くされている。




5分毎と毎分をあらわすドット、そのパーツとインデックスをさりげなく区切るギョウシェ、市松模様に彫られたスモールセコンド、顔からリアルへ進化したムーンフェイズの月などなど…、ギョウシェ技法で感動することはあまりないのだが、これは桁違いのものだった。




G7137BBY59VU Classique WG blue dial moonphase
G7137BR159VU Classique PG moonphase
G7337BR159VU Classique PG weekdays calendar moonphase
(参考→) https://watch-media-online.com/news/3041/



実機を見た印象として、どれもが繊細かつ重厚で、外装の価値を工芸・芸術品レベルに位置付けることに惜しみない労力と投資を注ぐというブランドの方向性が伝わってくるもので、あくまで個人的な印象ではあるが、今現在このブレゲのスタンスと同じ価値観を感じる作品は、技法の方向性は違えども、おそらくこれはパテック・フィリップと双璧をなすものではないかと思う。

ま、アーティフシャルな部分、こればかりは実際に見て、それが自分の中で響かなければ伝わらないものなので、時計外装工芸の最前線にご興味のある方は、入店前の検温、アルコールの手指消毒など、厳格なルールでコントロールされているブレゲ銀座ブティックで、なるべく実機を見る機会を持つことをお奨めする。

まどろっこしい言い方だが、いまだ"皆さん是非是非お出かけください"とは言い難い時期なので、察してほしいところだし(笑)、販売実機のため(今の在庫が売れた場合の再入荷は未定なので)、在庫の確認をしてからのお出かけも推奨である。



一か月半ぶりくらいで時計を撮ったので
ちょっと下手なのはご勘弁を。。。。



【お問い合わせ】
ブレゲ ブティック銀座
東京都中央区銀座7-9-18
ニコラス・G・ハイエックセンター 3階 /TEL 03-6254-7211