モンブランの特許を取得したユニークな永久カレンダーを読み解く リュウズで双方向に調整可能!

 By : CC Fan

2021年9月20日追記:予価を正式な価格に差し替えました。

モンブランの実機拝見で特に興味深かった「エグゾ」トゥールビヨンの構造をレポートしました、今回は同じく興味深い構造を持つモンブラン独自の永久カレンダーを備えた、モンブラン ヘリテイジ マニュファクチュール パーペチュアルカレンダーの永久カレンダーを探っていきたいと思います。



このカレンダーはモンブランが社内で開発したカム・歯車式カレンダーで、レバーを使う古典的な永久カレンダーのように「片方向」の動作がないため、リュウズによってカレンダーを両方向に動かすことができ、さらに24時を境に時針を戻すことで逆方向に戻すことも可能なシステムです。

この仕組みについて、モンブラン公式の資料には割とふんわりしたスケッチが記載されており、周りのフランス語を読むと何となく機能が読み取れます。



説明によると日付をジャンプさせる3つのカムと歯車が連動してシステムを駆動する…という事は読み取れますがより詳細を知りたい!という「いつもの」で特許を調べたらモンブラン名義で取得されていたスイス特許CH715119A1という特許が見つかり、発明者もモンブラン(ミネルヴァ)の技術者という事が分かりました。

この特許図面をもとにこのパーペチュアルカレンダーの仕組みを見ていきたいと思います。



まずは特許のメインビジュアルから。

ツツ車(7)から変速しつつ伝えられた回転で31歯の日付車が1日1歯送られる下半分の通常カレンダー部分と、月末補正の時のみ働く3つのサブシステムをドーナッツ状の同期車で連結した構造になっています。
同期車は追加送りを行うためと、向かって左側にある月・閏年表示とサブシステムに供給する月情報を作る輪列も駆動しています。


日付歯車及び各サブシステムは同期車で連結されていて、同じ歯数なのですべての歯車は1ヵ月(31日)で1周します。
通常送りの時は下側の通常送り輪列のみが動作し、各サブシステムは「空回り」し、通常の1日ごとの日送りが行われます。

月末にのみ各サブシステムと追加送りアクチュエータが必要に応じて噛み合う事で追加の日送りを行い、月末処理を行う仕組みになります。
ではサブシステムはなぜ3つもあるのでしょうか?



それは「各サブシステムは1日のみの早送りを担当する」という機能分担によって歯車の噛みあいのみで最大3日(28→29→30→31)の日付送りを実現するためです。

黄色でマークした追加送りアクチュエータ―(21)が時間差で各サブシステムを駆動し、順次月末処理を行います。
第3サブシステムは閏年以外の2月末に28日から29日を送るために動作します。
第2サブシステムは閏年関係なく2月末に29日から30日に送るために動作します。
第1サブシステムは閏年関係なく2月末及び小の月末に30日から21日に送るために動作します。
この3つのサブシステムの組み合わせにより、閏年以外の2月末は全てのサブシステムが動作することで28日から31日まで送られた後に通常の日送りで次の月になり、閏年の2月末は第2と第1の動作で29日から31日まで送られた後に通常の日送りで次の月に、小の月は第1のみの動作で30日から31日まで送られた後に通常の日送りで次の月になります。
大の月の時はどのサブシステムも動作しないので、単なる通常の日送りで31日から次の月になります。

サブシステムは時間差で動作する上にすべての動作が歯車の噛み合いで両方向に動くことが可能なので、リュウズによって逆戻しすることができるというわけです。

各サブシステムを見てみましょう。


まずは第1サブシステムから、上側の歯車は月・閏年表示から駆動されて1年で1周する歯車で、そこに小の月(2・4・6・9・11月)だけ追加送り用の歯を突き出させるためのカムが取り付けられています。
このカムが小の月で、1月で1周する歯車が30日になった時に追加送り用の歯が飛び出し、追加送りアクチュエータに噛み合う事で1日分追加で歯車が回転、それが同期車経由で日付車に伝わることで30日から31日への追加送りが行われます。


第2サブシステムも基本的な構造は同じで、1年で1周するカムに2月だけ突き出すカムが取り付けられています。
このカムで1月で1周する歯車が29日になった時に追加送り用の歯を突き出させることで29日から30日への追加送りを行います。

上面図からわかるように、1ヵ月で1周する歯車及び1年で1周するカムは第1サブシステムに直結されています、入力歯車の構造上、各サブシステムは同時に駆動力が伝わらず、順次動作になるため直結で問題はありませんが、回転方向が逆になるため、追加送りアクチュエータ―は回転方向を逆にするための歯車が追加されています。



第3サブシステムだけは1年周期ではなく4年周期で動きます。
4年で1周するカムが閏年以外の平年3年の2月だけ追加送り用の歯を突き出させ、28日から29日の追加送りを担当します。

上面図からわかるように、このサブシステムだけは月・閏年表示から月情報を取っていません。



サブシステム内で48:1の減速を行い、下側の1月で1周する歯車が48回転した時に上側の歯車が1周します。


「1日だけ追加送りをする」を3つ重ねることで3日分の送りを実現し、カム・歯車構成で逆戻しも可能なユニークなシステムを実現しています。



実機と比べると内部の構造が見えてくる?!



構造を理解してから見るとなるほど感のあるスケッチ。

総合ブランドとして層の厚いモンブランらしく、永久カレンダーとしてもリーズナブルな3,265,900円(税込)という価格も魅力ではないでしょうか。



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