グラスヒュッテ・オリジナルの象徴的機構「パノラマデイト」誕生25周年~視認性に優れた伝統的日付表示窓

 By : KITAMURA(a-ls)


グラスヒュッテ・オリジナルとA.ランゲ&ゾーネは、互いにドイツ時計を代表するグラスヒュッテ・ブランドであり、歴史をさかのぼれば、同じルーツに基づいている。
すでにご存じとは思うが、第二次大戦後、ソビエト占領下のグラスヒュッテにあったA.ランゲ&ゾーネを含む多くの時計メーカーは、共産主義下の東独で一本化されGUB(正式にはグラスヒュッテ・ウーレンベトリーブ)という国営企業に再編される。以後、半世紀近い鉄のカーテンの向こう側の時代を共産国の国営企業として生きることになるのだが、ベルリンの壁の崩壊後にGUBは、A.ランゲ&ゾーネとグラスヒュッテ・オリジナルとに分かれ、互いは別の道を歩む。
前者はGUBからA.ランゲ&ゾーネの商標権を買取ったブリュムライン氏を中心とする組織が、1990年に西側の企業哲学によってスタートさせた。そのA.ランゲ&ゾーネ発足の一か月半ほど前、国営信託公社がGUBを民営グラスヒュッテ・ウーレンベトリーブ有限会社として東側的体質のまま民営化させたのが、グラスヒュッテ・オリジナルの前身会社となった。

1994年にA.ランゲ&ゾーネが「ランゲ1」を含む4モデルの新作を発表した同じ年に、ミュンヘンの投資家集団に買収されたグラスヒュッテ・ウーレンベトリーブ有限会社は、ブランド名を「グラスヒュッテ・オリジナル」と決め、時計造りを本格的に開始する。
ここから2000年のスウォッチ・グループによる再買収までの期間の製品について、今となってはあまり確かな資料が残っていないが、共産圏の国営会社の方向性のひとつに、西側製品の模倣品を安価で共産圏に供給するという体質があり、そんなGUBを母体としたグラスヒュッテ・オリジナルの初期作品にもそうした傾向があったことは事実で、その後の企業イメージに影響する原因ともなった。

そのグラスヒュッテ・オリジナルが、スウォッチ・グループの傘下でそうした体質を改善し、高品質・高精度の時計製作に取り組む姿勢の表れのひとつが「パノラマデイト機構」の発明だったのではないかと思う。先行したランゲ1の大きな特徴であったアウトサイズ・デイトに触発された部分はあったのだろうが、ランゲ1の円形と十字の2枚のディスクに対し、それまでの東側的な安易・安直な模倣ではなく、同心円状の2枚のディスクを使用するというより理にかなう"発明"として提示したのである。

そしてその後の4半世紀、グラスヒュッテ・オリジナルを象徴する機構として数多くのモデルに採用されてきた「パノラマデイト」について、ブランド発行のプレスリリースを以下に引用する。



パノラマデイト 誕生から 25 年~視認性に優れた伝統的な日付表示窓

ブランドを象徴するビッグデイトほどグラスヒュッテ・オリジナルと関連の深い複雑機構は他にありません。1997 年に初めて発表されたパノラマデイトは、機能性と完璧な美しさを兼ね備えた表示として知られています。高級時計の分野では比較的目立たない複雑機構に分類されるパノラマデイトは、グラスヒュッテ・オリジナルの 5つのコレクションすべてに採用され、技術的に高度であると同時に視覚的な魅力をもたらしています。



大型の日付表示

25 年ほど前、グラスヒュッテ・オリジナルのエンジニアとデザイナーは、最適な視認性と非の打ちどころのない美しさを併せ持つ新しい日付表示を考案しました。これを実現するために、日付の数字を表示する 2 枚のディスクが同じ平面に同心円状に配置されました。このパノラマデイトには、他社のビッグデイト表示とは異なり、2 枚のディスク間の段差を隠すための中央の間仕切りがないため、2 桁の日付も一目ですぐに読み取ることができます。新しくデザインされた表示を採用した初代モデル「セネタ・パノラマデイト」が登場したのは、1997年のことでした。



絶対的な正確さ
パノラマデイトの 2 枚の表示ディスクは、カミソリのように薄い真鍮を用いて自社で製造されています。表面には目的の色合いを出すためのガルバニック加工またはラッカー仕上げを施し、その後に数字をパッド印刷でプリント加工します。塗装層が時計の機能に支障をきたしてはならないため、この工程には高度な技術と絶対的な正確さが求められます。また塗装層が厚過ぎると、日付ディスクが互いに擦れ合って動作が妨げられる可能性があります。2 枚のディスク間の理想的な隙間は 0.06 mm です。隙間がこれよりも広くはっきり目視できるようであれば見た目の美しさが損なわれ、少しでも狭ければディスク同士の摩擦や機能上の問題が生じます。




スタイリッシュなデザイン
パノラマデイトのために、くっきりと鮮明な書体、文字盤のカラーにマッチした背景色、段差のある額縁のような開口部がデザインされました。SeaQ クロノグラフのように文字盤の色に合わせて日付ディスクをディープブルーにしたトーンイントーン配色や、セブンティーズ・クロノグラフ・パノラマデイトのようにグリーンの文字盤にブラックの日付ディスクを取り合わせたコントラスト配色により、パノラマデイトは常に美しさという喜びをもたらします。



高度な技術
パノラマデイトには、デザインのほかにも大きな魅力があります。非常に精度が高く、ちょうど真夜中に日付が変わるのです。たとえば、グラスヒュッテ・オリジナルのセネタ・クロノメーターには「ジャンピングデイト」と呼ばれる機構が組み込まれており、パノラマデイトの日付が深夜 12 時ちょうどに切り替わります。
現在採用されている 35 のすべてのタイムゾーンを表示できる理想的な旅のパートナー「セネタ・コスモポリト」は、パノラマデイトに極めて革新的な機能を備え、センターの時針と分針が旅行先の現地時間を示すだけでなく、正確な日付も表示されます。移動中に日をまたぐときでも、パノラマデイトは目的地に応じて適切に日付を前後に調整します。



フェミニンなアレンジ
パノマティック・ルナでは、グラスヒュッテ・オリジナル独自のビッグデイトが、ひと際エレガントでフェミニンなデザインで登場しています。技術的にはメンズウォッチと同じでありながら、日付窓がマザーオブパールの文字盤の美しい輝きにふさわしいオーバルシェイプとなっています。
レクタンギュラーやオーバル、前後への日付調整、トーンイントーン配色やコントラストの効いた配色など、多彩な特長を備えたグラスヒュッテ・オリジナルのパノラマデイトは、25 年の間、真のオリジナルとして存在感を放ち続けています。




Proud to be the Original. #PTBTO



不勉強で申し訳ないが、実はわたしはこの「パノラマデイト機構」を2002年のパノリザーブで世に出たものと思い込んでいたのだが、しかし先日、「パノラマデイト25周年」というプレスリリースが配信され、1997年がパノラマデイト・デヴュ―年であると知った次第。もし25年前の「パノラマデイト機構」初搭載機について画像などお持ちの方がいらっしゃったら、是非ともご教示いただきたい。