【連載】WATCH MEDIA ONLINE スイス時計製造現場視察ツアー レポート①~ローラン・フェリエ ファクトリー訪問+α
By : CC Fan【はじめに by Kitamura(WATCH MEDIA ONLINE編集人)】
2019年のドレスデン&グラスヒュッテ・ツアーで(ランゲ、GO、グロスマン等を視察して)以降、コロナ禍で延期を余儀なくされていたWATCH MEDIA ONLINE主催の海外工房を巡るツアーが、この10月、ようやく再開できました。
今回は、スイス独立系の工房、ローラン・フェリエ、ローマン・ゴティエ、ヴティライネンの工房を訪ねることを柱に、エナメルの第一人者アニタ・ポルシェさんの工房(ご自宅のため写真は掲載できませんが...)、そしてツアー参加者さまからのコンタクトによりアクリビアを訪ねました。
なにより、工房見学の後のランチやでディナーにも工房スタッフが参加してくれたので、いろいろな角度からの質問や、フレンドリーな交友を持つことができましたことに感謝します。
天候にも恵まれ、本当に素晴らしい旅となったこのツアーの模様を、以下、CCFan氏の短期集中の連載レポートでお届けします。
まず第一回目、ツアー初日のローラン・フェリエ工房からのレポートをご覧ください。
◆
10月初頭、Watch Media Onlineのイベントツアー、「スイス⾼級時計製造現場⾒学ツアー」が行われました。
コロナ禍でなかなか海外に行けない…という状況も改善しつつあり、活気が戻ってきていた製造現場を体感することができました。
私も同行させていただけたのでレポートをお送りします。
長いので連載形式で、1回目はジュネーブ郊外、ローラン・フェリエの工房を訪問します。

ジュネーブ市外からバスで数十分、郊外にローラン・フェリエの工房はあります。
外に看板などは出ておらず、一見すると民家?と間違う様な見た目です。

玄関脇に掲げられた控えめな「LAURENT FERRIER GENEVE」だけがここがローラン・フェリエの工房であることを知らせています。

今回、案内をしてくださったHead of SalesのRobert Bailey氏。
早速中に入ります。

1階は事務とロジスティクスを行っており、水平分業のサプライヤーから届けられたパーツ・各段階の在庫パーツ・設計資料などが整然とまとめられています。

階段を上がって2階へ。
応接・会議スペースにはほとんどすべてのコレクションが!

ここでローラン・フェリエ氏の息子でムーブメント設計を行っているクリスチャン・フェリエ氏が合流。
クリスチャン氏とRobert氏の真ん中はローラン・フェリエ代理店のスイスプライムブランズ株式会社代表のルカ氏。
クリスチャン氏は主にムーブメント設計を行っており、現在はルイ・ヴィトンに買収されたラ・ファブリク・デュ・タンにてローラン・フェリエ専用のダブルヘアトゥールビヨンやナチュラル脱進機を搭載したムーブメント設計を行いました。
ラ・ファブリク・デュ・タンがルイ・ヴィトンに買収され、中立ではなくなったのでエボーシュ供給はどうなる?とささやかれていた噂については、ローラン・フェリエ用ムーブメントの設計と権利自体はクリスチャン氏が保有、現在は独立してローラン・フェリエに戻ってきており、別のサプライヤーでパーツも製造することができるため生産に問題はないとのこと。
そして…

ローラン・フェリエ氏本人が登場!

パテック フィリップに長年勤めたのち、2010年に「今しかない」と独立、ローラン・フェリエブランドをスタートさせます。
ブランドとしては意外と若いです。

ローラン氏の話を伺いながらコレクションを拝見、写真はマイクロローター自動巻き、ナチュラル脱進機の(※追記:マイクロローターですが、ナチュラル脱進機ではありませんでした)スポーツオート。

参加者の皆さんも興味津々。

コレクションを堪能した後は実際の作業風景を見学。
まずは部品の仕上げを行うセクション。
伝統的なツールと手作業によってパーツを仕上げていきます。

スイスの手仕上げの象徴とも感じられる「ジャンシャン」とダイヤモンドペーストによる仕上げを行っています。
ジャンシャンの常に綺麗でフレッシュな面を出すために頻繁にカッターで削るため、足元には破片が散乱…

どのように仕上げるか、は厳密に規定されていることが分かります。

こちらはペルラージュを入れるマシン、押し付ける圧力やピッチは完全手作業で高いスキルを要求します。
「体験」することができ、作ったプレートはお土産にいただけました。

続いて組み立て部門に。
「キャビノチェ」の語源となった屋根裏部屋(キャビネ)に設けられています。
分業の流れ作業ではなく、時計師ひとりひとりがムーブメントを最初から最後まで組み立てる方式で組み立てが行われます。
また、組み立てた時計師とムーブメント番号は紐付けて管理されており、将来のオーバーホールなども原則的に組み立てた時計師本人が行う体制とのこと。

こちらはナチュラル脱進機搭載ムーブメントの「キット」。
4つのムーブメント分のパーツが入っており、これが組み立ての単位、すなわちロットになります。
トゥールビヨンは2個、シンプルな手巻きは6個がロットだそうです。

ブリッジに穴石を入れています。

検査に使うツール群。

時計師自体が仕上げを行っていた伝統を引き継ぎ、一部の機能パーツの仕上げは時計師自身が行うようにしているそうです。

工房のスペースの関係で見学は2班に分かれており、私が参加したのは午前の部、ここで午後の部と合流してランチへ。

工房近くのレストラン、Café de la placeにてローラン・フェリエ氏、クリスチャン・フェリエ氏とランチを。

ブランドの歴史について、ご本人から伺います。
ローラン氏は外装、クリスチャン氏はムーブメントで、親子協業で時計を作っています。

チキンのコースでした。
午後の部と交代し、ジュネーブに戻ります。
午後はフリータイムのため、ジュネーブを散策。

話題のブランパン×スウォッチシステム51のコラボがジュネーブのスウォッチブティックにタイミングよく全バリエーション入荷!
皆さん購入されていました、私も買えばよかったかな…

MB&F M.A.D.ギャラリーやチャペック(写真失念)も訪ねました。

ローレゾのカメラの画像を機械的に反転するピクセルで表示する作品(説明が難しい)。
などなど、色々ありましたが、トピックは、レジェップ・レジェピ氏との"遭遇"。

工房の窓越しに手を振ったら目が合い、レジェップ・レジェピ氏が外に出てきてくれました。
正式なアポは金曜日だったのですが、
「木曜日に旅立ってアメリカに行くよ」という話を聞き、
急きょ予定を再調整してもらうことになりました。。。
今思うと、ルイ・ヴィトンとのコラボの発表会の直前の忙しい時期にスミマセン…
"正式"訪問のレポートはこの連載の別の回で。

ディナーは海鮮レストランBRASSERIE LIPPにて。
クリスチャン・フェリエ氏も参加いただけました。

オイスター(牡蠣)!

料理の後も話は尽きません…

ローラン・フェリエの特徴的なスクウェアケース!
スイスの伝統的なスタイル(エボーシュ・分業)で時計作りを行うローラン・フェリエ。
これからも色々動きがあるようで目が離せません!
(2日目に続きます)
※【2023年11月9日追記】:スポーツオートをナチュラル脱進機とした点を修正しました。
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