ローラン・フェリエ「クラシックムーン」のアニュアルカレンダー機構を「見る」~オフ会での質問から
By : CC Fanカミネさんとのコラボレーションで開催したWATCH MEDIA ONLINE「Watches& Wonders2024」報告会兼オフ会~WMO ✖ カミネ ✖ Delugs トランクショー。
エスパス・ド・カミネで開催させていただいたWATCH MEDIA ONLINE神戸OFF会。新しい出会い、懐かしい再会、ストラップの学びなどなど、素敵な時間を共有させていただきました。参加してくださった皆様、カミネのスタッフの皆さま、本当に感謝です。ありがとうございました。レポート記事は後ほど! pic.twitter.com/zaaVXggFDH
— KITAMURA@Watch Media Online 編集人(a-ls) (@als_uhruhr) July 14, 2024
私も個人的に注目の手巻きキャリバー群、という切り口でいくつかの新作ムーブメントを紹介させていただきました。その中で、ローラン・フェリエのクラシックムーンのムーブメントLF126.02についてお話した際、「日付合わせはリュウズ一段引きで行え、戻すこともできるので使いやすくて便利です、時差変更とかも」と説明しました。
そこで「日付が戻せるのは便利ですが、月末を跨いで戻ったらどうなるのですか?」という質問があり、理解がふんわりだったので、その場で展開図を見ながら考えた結果、「おそらく月末処理はリュウズ引きの時には働かない、1ヵ月が31日のシンプルカレンダーのような動きをするはず」という「推測」をお伝えしました。
その後、実機を見て改めて動作を確認したので、改めて見ていきましょう。
動画で見た方が分かりやすいと思うので、まずこちらをご覧ください。
リュウズ一段引きで4月(April・APR)30日から5月(MAY)1日へ日付を変更しています。
4月は30日までしかない小の月ですが、ポインターデイトが31日を指してから1日に動き、それと同時に月表示が切り替わっているのが分かります。
リュウズを逆回転させると日付が戻り、1日から31日に戻ると月もそれに伴って逆回転しますが、やはり31日をスキップするのではなく31→30とリュウズの回転に合わせて動いていることが分かります。
次にリュウズ二段引きで時間を動かした時の挙動を見てみましょう。
時間進めていくと22時から23時の間に30日から31日に進み、23時から真夜中にかけて31日から1日に進み月が切り替わると同時に曜日とムーンフェイズも進みます。
これは前者がアニュアルカレンダーの月末処理によって小の月を処理する動き、後者が通常の日送りで日付を送る処理になります。
これからわかるように、リュウズから日付を合わせる時はアニュアルカレンダーが作用せず、時刻から「位上がり」するときだけ動きます。
なぜこうなるのでしょうか?

文字盤側にあるアニュアルカレンダー機構に部品の名前を入れました。
12時間を表すツツ車から2分の1に減速された24時間車が9時位置にあり、これが1日に1回カレンダーを送ることで日付が進みます。
24時間車からは日付のほか、7歯の曜日車・減速輪列を経たムーンフェイズディスクの3カ所が1日ごとに送られますが、これらはそれぞれ独立しており日付はリュウズ一段引き、曜日とムーンフェイズはケースサイドのプッシャーで調整します。
これは日付は月末処理があるのに対し、曜日とムーンフェイズは常に1日送るだけであり、連動させない方がシンプルだから、と読み取りました。
先程の動画でも日付を動かしても曜日とムーンは動いていません。
日付はツツ車と同軸の31歯日付歯車によって31日(大の月の1か月分)がカウントされ、日付歯車に噛みあった12時位置にある1:1の伝え車が同じスピードて回転します。
この伝え車の歯は頭を落としたような形状ですが、1つだけ通常の歯車のように背の高い月送り歯があり、この歯が月末に12歯の月歯車にを噛みあう事で月を一月分送ります。
月歯車には月の大小をカムの深さで表現した月の大小カムがついていて、これを月末処理レバーが読み取ります。
月末処理レバーは24時間車から送られますが、月末以外は「空振り」することで何も起きません。
小の月で30日の時に月末処理用の突起とレバーが噛みあい、本来の日送りの前に1日分追加で送り、更に本来の日送りが行われることで31日をスキップするというアニュアルカレンダーの機能が実現されます。
日付が戻せるのは月歯車と日付(伝え)車が歯車としてかみ合っているからですが、アニュアルカレンダーの動作はレバーのため一方向で戻りません、そのため「推測」したように日付合わせは31日を経由する動きになります。
また、意地悪く小の月で31日に合わせたとしても1日分の追加送りが空振りするだけで問題はない、と考えられます。
改めて確認すると、私は「戻せる」という点に注目して海外に行ったとき(日付変更を伴うタイムゾーン調整)に便利、と理解していましたが、主眼は「止めてしまったときの再設定が便利」と理解した方が良さそう、ということが分かりました。
日付が両方向なのも、長期間止めて場合、進めるより戻した方が動かす量が少なく最大6か月分の調整で「今日」に到達することができます。
日付に比べれば曜日は最大6日、ムーンは最大29日送れば良いため、相対的にプッシャーでも充分、という事でしょう。
リュウズでかなり高速で日付を送ることができるため、月を独立で送らない、という設計により、月の大小カム周りの破損リスクも減らしており、バランスの良い設計だと思います。
「理解していないものは見えない」という事でふんわり理解だったコンプリケーションについてより知見が深まったのは良かったです!

こちらはWatches & Wondersで撮影…
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ご質問を契機に、ふんわり理解だったものを改めて見ることで、良い機能分割だと改めて知ることができました。
「止まった時にどうやって合わせやすくするか」みたいな…
今後ともよろしくお願いいたします。
今回の記事を通して、改めてクラシックムーンのアニュアルカレンダー機構とその日付修正の仕組みについて、より詳しく理解することができました。ありがとうございます。