デテント天文台クロノメーター(仮) 合同オフ会と小改良

 By : CC Fan
11月1日にGERMAN WATCH.jpさんとの合同オフ会が開かれました、オフ会のレポートは別途掲載されると思いますが、今回の目玉であった"プロフェショナルな物撮り用セットによる時計写真撮影"のレポートです。
ただし、タイトルにも書いたように、撮影対象は腕時計ではなく木製ケースに入ったデテント天文台クロノメーター(仮)です。
腕時計としてカンタロス(Kantharos)も撮ろうと思ったのですが、ストラップの構造が特殊で、本体をあまり良い角度に固定できなかったので撮れず…いつかはリベンジしたいです。



物撮り用セット。
影を作らないように全方位から当てられるライト、光を均一に拡散させるためのデフューザーに加え、鏡面部分への風景の映り込みを防止するドーム。
ドームに開けられた穴にレンズを差し込んで撮影を行います。



早速一枚。
ちょっと暖色過ぎるでしょうか…
ホワイトバランスを調整せず、トリミングだけの撮って出しです。



そういえばあまり拡大してみたことはなかった針のディティール。
センター部には別パーツのポリッシュされたキャップが設けられ、針の取り付けが直接見えないようになっています。
更に針自体も平らではなく、わずかに凸になっており、長針の先端はインデックスに沿うよう曲げが加えられています。
製法は不明ですが、時代を考えるとプレスと手作業による研磨でしょうか。
流石に少し傷はついてはいますが、青焼きによって作られた強固な酸化被膜は100年の時を経てなお針を保護しています。

スモールセコンドのカウンターウェイトもわずかに立体的な仕上がり。



真鍮無垢のムーブメント。
自分が慣れたのか、少し表面の酸化が進んだのか、オーバーホール直後のキラキラは少し落ち着いたような印象です。
相変わらずよく振っており、脱進音も快調そのもの。

何人かに巻き上げを体験していただきましたが、ゼンマイの重さに驚かれていました。
一般的な懐中時計ではありえない重さで、特に二番車の軸が極太で石も大きくシャトン付きなのはこのトルクに耐える為ではないかという推理が。
トルクが大きい歯車ほど支える地板も厚くなるように輪列のレイアウトが組まれています。
トルクが最も大きい香箱は地板を貫通しており、厚い地板の壁全体で支える構造です。



木製ケースは前後の木の色が揃っておらず、ツートンカラーのような見た目に。



琺瑯文字盤をあまり表現できていませんね…



艶やかな表面を何とか捉えようと試行錯誤しましたが、あまり上手くいかず。

更に木製ケースを開けた状態で簡易的な真鍮ケースもご覧いただき、いくつかの問題点と改善案をいただくことができました。
オフ会の翌日に早速、改善案を適用します。

まずは木材ケースが汚れている・表面が乾燥しているという問題。
これについては東急ハンズで特に染料が入っていない蝋と油だけの木材用ワックスクリームを調達し何度か磨き上げることで、汚れが取れ、しっとりとした表面の感触を得ることができました。



塗装をしてしまうのは気が引けますが、ワックスがけであれば木材本来のコンディションを維持するために行っていると思えるので、良いかなと。
ただ、ワックスを書けてもツートンカラー感はなくなりません、観察すると前と後で木材の目の方向が90度回転している様子、そういうものなのかこの個体だけなのかは不明です。

この作業は車のワックスがけのように、定期的に行おうと思います。



もう一つの問題は真鍮の簡易ケースの防水・防湿性。
内部の一部が見えるような開口部まであり、防水性は元々期待していませんが、防湿性も結構怖い。
使ってないときは防湿剤付きのケースに入れるとはいえ、気になります。

ちなみに見えている金属の板は恐らく琺瑯文字盤のベース、かなり厚めです。
琺瑯はグラン・フー・エナメル文字盤と同様にガラスパウダーを焼成して作っていますが、これだけ厚ければ歪みが出にくく、綺麗な文字盤を作りやすかったのではないか…と予想します。



文字盤側のガラスを外したところ。
開口部に相当する部分が見えています。



対策はシンプル、"塞げばいい"ということで、時計業界では展示ピースのバックルの傷除けなどに使うカプトン(商標)テープで継ぎ目と穴を塞いでみました。
カプトンは物質名ポリイミドという強度・耐熱・電気絶縁に優れた高分子フィルムで、ポリッシュ時のマスキングにも使われるほどの強度を誇ります。

気密性にも優れているため、このように貼れば継ぎ目を塞ぐ効果は期待できます。
もっとも、リュウズやらダボ押し用のボタン部分に開口部が残っているため、どこまで効果があるかは不明で"お守り"以上の意味はないかもしれません。
しかし、意外な効果として時計から聞こえる脱進音が明らかに抑えられました、機構そのものが強力だったことに加え、ケースが薄いことと文字盤部分に開口部があったことで音が響いていたようです。
開口部が塞がれたうえに、カプトンは僅かですが弾力性があるので、それが音を吸収しているのではないかと。

ムーブメント本体は恐ろしくてとても触れませんが、周辺の改善は積極的にやっていこうかと思います。

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