デテント天文台クロノメーター(仮) 小ネタをいくつか

 By : CC Fan

ノーブルスタイリングさんに伺い、本日(10月26日)に行われるアーミン・シュトローム "レゾナンス・イン・ギンザ"イベントで、レゾナンスを体感するデモについて打ち合わせをしてきました。
私が手作りしたデモセットも無事動作、何とかお披露目できそうで、少しでもレゾナンスの魅力が伝われば…と思います。

さて、デモセットは既にギャラリーに展示しているものの、ネットでの公開はイベント当日までお預け、かわりに葛西氏がスイスから持ち帰ったデテントクロノメーター(?)と我がデテント天文台クロノメーター(仮)を撮影しましたのでいくつかの小ネタと共にお送りします。



ケースは実機に合わせていろいろ作り変えました。
外見では銘板ラベルをさらに詳細にし、下記の内容をフランス語で記してあります。
  • 天文台クロノメーター
  • ピボットデテント脱進機
  • バイメタルテンプ
  • 18,000振動/時
  • 出所不明
なんとなくアカデミック感を出したくていろいろ変更しこの形に落ち着きました。
後述する高振動天文台クロノメーターの分も作成済み。



中身のスポンジも結局スポンジだけ調達して作り直しましたが、ロット?の違いなのかスポンジのきめ細かさが違う気がします。
変更点はケース高さが面一になるように変更、取り出すときに指をかける穴の形状を変更、リュウズ周りの形状の変更、除湿剤の追加、部品ボクセル(Boxcel)の追加。

左側の金属缶はペリカンケース純正の除湿剤、ペリデシカント1500D。



中身は一般的なシリカゲル40gですが、オーブンで焼くことで吸収した水を吐き出させて機能を復活させる再生処理をすることができます。
一般的なシリカゲルも同じ方法で復活させられるのですが、袋がヤワで先にダメになるため何回もできません、対してこちらはアルミの強固な箱に格納することで"一度買えばずっと使える"という耐久性を実現しています。
巻くために毎日開けるので、正直"お守り"レベルだとは思いますが、無いよりは良いだろうという安心感を買うイメージです。



ボクセルは作り直した安全装置のオリジナルパーツを格納。
壊れてしまった吹けば飛ぶようなパーツですが、オリジナルを保存することは大切と考え一緒に格納します。

ボックスはこれぐらいにして葛西氏のものと一緒に。



ルイ針!
葛西氏曰く、”ラング&ハイネでルイ針のリクエストが多く、サンプル例として欲しかったので、この話は渡りに船だった"とのこと。
文字盤はローマンインデックスの内側にアラビア数字で13時から24時が書いてあるあまり見かけない形式。
光が写りこんでしまっていますが、スモールセコンドもルイ針です。
腕時計と同様にリュウズが3時位置にあるサボネットと呼ばれる形式のようです。



蓋式vsグラスバック。
ドイツ時計のようにプレートで覆う形式です。
テンプのブリッジにハンドエングレーブが入れられ、緩急調整はスワンネック、巻き上げ輪列はきちんと仕上げと、もともとそれなりにグレードの高いムーブメントのようです。
軸石もすべてねじ止めのゴールドシャトンで、要素だけ見れば私の天文台クロノメーター(仮)よりも良いのでは?と思います。



クロノメーター(Chronometre)と彫られていますが、公的なものなのか自称なのかは不明。
1月にJUVALで見たときはもっと悲惨な状態でしたが、関口氏のメンテナンスによりかなり状態が良くなっています。
ディスプレイ小物として使っているので精度は未測定、関口氏も"止まらなくはなったが、精度は保証できない"とのこと。



珍しい円筒形状のシリンダーヒゲゼンマイ。
デテントレバーブリッジの分割もデテント天文台クロノメーター(仮)とは異なり、それぞれの設計思想の違いを感じます。



立てた状態。
置時計として使っていたのか、それともさらに外側にケースがあったのか…

デテントの魅力である独特の脱進音はかなり異なります。
表現が難しいですが、葛西氏のものは金属の櫛の歯を弾くような音、私のものはよりダイレクトに金属がぶつかるような音で、私のものは聞き方によってはノイジーに思えてしまいますが、葛西氏のものはマイルドでより心地よいのでは?と思います。
精度関係なく音を楽しむのが今となっては正しい使い方かもしれません。

ちなみに、家に帰れずパワーリザーブを使い果たして止めてしまったことがあったので、デテント天文台クロノメーター(仮)のパワーリザーブを測定したところ、ピッタリ32時間でした。
香箱の動きを制限する巻止め機構がついているので、ある程度はキリの良い値になるだろうなと思ってはいましたが、思った以上にキッチリと止まりました。
32時間という値は毎日同じ時間に巻くことを前提とした上で、余裕として3分の1日は動き続ける(24時間+8時間)という値だと思われます。
なので、想定されているように毎日同じ時間に巻くようにします。



JUVALの値札が付いていますな…
スイスの国旗のようなマークがついていますが、詳細は不明。

さて、スイス紀行で少し触れましたが、もう一つの天文台クロノメーターもお願いしてきました。
こちらは、高振動天文台クロノメーターと呼んでいます。



30秒のところが黒く塗られ、秒針の通過を読み取りやすくしているのが天文台クロノメーターの証。
文字盤と針は海洋クロノメーターを思わせるデザイン。



同様の構造でグラスバックなので、裏蓋を開けなければいけない懐中と比べ、低リスクでムーブメントを堪能できるのも魅力です。



拡大。
控えめに入れられているレターはクロノメーター(Chronometre)、ほとんど主張しません。



拡大した様子。
NIVAROX…そう、ニヴァロックス合金を発明し、切りテンワを過去のものとしたニヴァロックス社名義なのです。
何もかもが不明なデテント天文台クロノメーター(仮)と比べるとこちらは製造者がわかっている分遥かにわかり易く、インターネットで検索するとズバリのものがヒットします。

Pocket watch: rare Observatory Chronometer Nivarox No. 408, caliber Longines 260, 1966, 4 times, tested in Neuchâtel and Geneva, from 1966-1969

Noだけは異なりますが、これはシリアル番号のようなもの、ほぼ同じ機種でしょう。
説明を見るとロンジン(Longines)の260というキャリバーをベースにしたニヴァロックス制作の天文台クロノメーターということがわかります。
これも検索すると見つかります。

Longines Cal 260 Rattrapante | Omega Forums

通常時分針付きのスプリット・セコンドクロノグラフです。
これをベースにクロノグラフ関係を全除去、単純な三針時計にしたうえで、テンワのブリッジと脱進機回りも作り変えています。
この変更により10振動/秒、36,000振動/時という高振動を実現し、優れた精度を実現しています。
なので"高振動"天文台クロノメーターと呼ぶことにしました。

ニヴァロックスはテンワだけではなく、設計済みのトータルソリューションとしてのガンギ車やアンクルを含む脱進機一式も売っていたので、そのデモンストレーションも兼ねていたのでは?と予想しています。

今年の1月の時点では穴が開きすぎててちょっと…と思ったのですが、デテントとの好対照で並べたいという欲が出たのでこちらも手に入れることに。



ケースはデテントのものよりもしっかりしたスチール?製。
そのまま懐中時計としても使えそうながっちりとしたケースです。
木製ケースは左右からピン止めするタイプ。
ちなみに奥に見えるのはロンジン名義のクロノメーター、こちらも興味深いのですが分針しかない更に尖ったマシンなので流石に…と思っていたら引き合いがあったとのことで、お店に伺った時には出かけていました。



高振動天文台クロノメーターはスイスレバーなので、通常のWitschiが使えます。

ほとんどメンテしていない状態で日差3秒、ビートエラーなしという状態をキープしています。
拘束角が正しいのか分からないので、振り角は不明です。

振動数も36,000と認識しています。
デテントと同じく関口氏によるオーバーホールが行われれば…

SIHHは参加予定ですが、何とか再び冬のラ・ショー=ド=フォン(La Chaux-de-Fonds)に行き、高振動天文台クロノメーターを受け取らなくては!



さて話は戻って、デテント天文台クロノメーター(仮)もケースから出してみました。
こうやって見るとムーブメントは同サイズのようです。



リュウズ位置によって巻き上げ輪列が反転するが6時位置のスモールセコンドとテンワの位置は変わらない…という教科書的な図。
歯車の高さの順序は異なるでしょうが、輪列のレイアウトはかなり似ています。



木製ケース。
テスト用の仮ケースとはいえ、作りはかなり丁寧。
面の精度もよく、卓上クロックとして使うのにはむしろ向いています。
ピンを差し込んで固定するという原始的な方法ですが、下手に凝った機構よりも信頼性は高いと思われます。
ケースに入れた状態では時合わせ用のボタンが押せなくなるので、誤動作防止にもなります。



デテントクロノメーターのほか、今回のスイス紀行で関口氏にご協力いただいた各種時計工具がギャラリーに彩を添えています。



そして…



葛西氏が持ち帰ったクレヨン エブリウェアのプロッターによる設計図!
ちゃんと額に入れて目立つ位置に掲載されていました。



プロッターと同じペン(製図用万年筆)で書かれた創業者レミ・マイヤ(Rémi Maillat)氏の署名。

これらは全て常時展示中。
恵比寿にお越しの際は是非見てみてください。
(どうもいまいちギャラリーの知名度が無いようなので宣伝です)


そして、繰り返しになりますが、わたくしCCFanもプレゼンを行う
WATCH MEDIA ONLIN 読者、もれなくご招待の
アーミン・シュトローム"レゾナンス in GINZA"初日イベント
いよいよ本日(26日・Fri)開催です!!
ぜひ、お出かけください!!!!

※17時より内覧可能、プレゼン開始は19時からになります。宜しくお願いします。




関連 Web Site

JUVAL HORLOGERIE
http://www.juval.ch

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https://www.facebook.com/JUVAL-Horlogerie-Manuel-377440962427630/

Noble Styling
http://noblestyling.com/