SIHH2019 新提案のブース SIHH Lab

 By : CC Fan

パネライの新素材の記事
でも少し触れましたが、今年のSIHHではSIHH Lab(ラボ)という研究開発(R&D)に関する成果を展示するブースが作られていました。

この場所ってなんだったっけ…?と思い返すと、リシャール・ミルとオーディマ・ピゲが来年(2020年)から撤退するように、ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)が今年から撤退した"跡地"だったわけで、設置されたのは必ずしもポジティブな理由だけではないようですが、個人的には非常に興味深い展示が多かったので紹介したいと思います。

実用化されている技術から、まだまだ粗削りで研究デモの枠を出ないものまで玉石混交な雰囲気がかえってSIHHの中では際立って面白かったです。



"ラグジュアリー"なSIHHの中では異質に見える、シンプルなIT企業のようなブース構成。



個人的には本業に近いので、なじみ深い雰囲気です。



ITとタブレットを活かした方法として、画像認識で時計を認識し、スペックを取りだしたり、コレクションをもとに顧客の好みを分析する…というデモ。
特に販売員ごとに知識量の差が異なってしまうことに対するソリューションのようです。

まだ研究段階のため、デモ用のいくつかの時計にしか対応していなかったそうですが、我々は自分の時計が認識されないぞ!と10分ぐらい粘っていました…



パネライの記事に書いた、BMC Techによるバルク金属ガラスケース。
当然こちらは実用化済みの技術です。



日本企業の島精機も出展。
布を織る織機ですが…



布を作ってから裁断して縫うのではなく、直接、プログラマブルに織ることで最終形を織るという形でグローブを作っていました。
プリンターのような動きからダイレクトに手袋が出てくる様子はインパクト大。



この様な専用のコンピューターシステムで織り方を登録することで何でも作れるとのこと。
例えば体形にフィットしたドレスを直接作るとか、手のサイズぴったりの手袋を作るなどの応用があるとのこと。
上記の写真で左側に微妙に映っているのがドレスのサンプルです(撮影忘れた)。



手袋をお土産にいただきました。



ジュネーヴ造形芸術大学(Haute École d'art et de design Genève:HEAD)による科学実験カクテル製造装置。
スマートフォンのゲームの結果に対応していくつかのお酒が調合されてカクテルが作られる…と言うデモ。
イベントでエンターテイメント性のある体験を目指しているようです。



高級時計財団(Fondation de la Haute Horlogerie:FHH)による教育プログラムや遊びながら知識が得られるゲーム。





スローガン。
意味を伺うのを忘れましたが、バリューは貴重といった意味…?



ドリンクコーナーもシンプルで洒落たデザイン。



時計師が使うタイムグラファーをより一般的に使おうというカルティエの提案。
測定ユニットを小型にまとめ、ユーザーインターフェースに通常のパソコンを使うことでとっつきやすくしています。



一般的なウィッチ(Witschi)社のウォッチエキスパートはこんな感じなので、わかり易さが伝わるかと思います。



我がカンタロスを測定中…
通常は開いた状態で文字盤上にして測定するようですが、カンタロスはバックルを分解しないとできないので文字盤下の状態で測定、特に問題なく測定可能でした。
このユニットには精度測定用のマイクとアンプ、帯磁測定用の磁気センサーと磁気抜き機が入っており、修理部門まで送ることなく店頭で体調管理と磁気帯びへの対策を行うことを想定しているそうです。
現代社会では磁気帯びのリスクが高く、それを店頭で対応できるのであれば修理の負担も減るでしょう。



カンタロス君は極めて優秀…という結果に。
この結果はお客さんのメールアドレスに送ることもできるそうですが、この時はトラブルで上手く動かず…写真だけ撮らせてもらいました。
使用方法も図解入りのチュートリアルに沿っていけばよい方法になっており、使いやすそうです。



とてもユニークで、来年以降も行って新技術に触れる機会があれば…と思える展示でした。
是非、継続を!