グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・クロノメーター・トゥールビヨンのゼロリセット機能について正解編(オフィシャル動画より)
By : CC Fan詳細動画と共に特徴的なゼロリセットメカニズムの”全容”が公開されたグラスヒュッテ・オリジナルのセネタ・クロノメーター・トゥールビヨン、上記のニュース記事にも掲載されていますが、実機拝見後に”推測”記事を掲載しております。
推測通り、以下の仕組みで動いていたので改めて振り返ってみたいと思います。
結論から言うと、通常のトゥールビヨンでは固定されている固定4番車が稼働できるようになっており、開放するとトゥールビヨンに3番車からのトルクが直接かかって回転しているのだと思われます。
ガバナーはトゥールビヨンが高速回転した時に速度が上がりすぎないようにするためについているのでしょう。
まずは、ニュースにもあった日本語オフィシャル動画を再掲。
結構目まぐるしく動くので、全容の把握は大変。

ムーブメントの下半分がストップセコンドとゼロリセットを備えたトゥールビヨンの制御システムになっている大掛かりなシステムです。
リュウズを引くことで回転する制御カムが複数の制御レバーを動かし、トゥールビヨンとその周辺に適切な指令を送ることでストップセコンドとゼロリセットを実現します。

固定4番車(可動するのでこの名前は微妙ですが)は通常時は最上部のブレーキ部分を固定4番車開放レバーが押さえており、停止しているのと同じです。
その下にフライホイールに繋がるギアがあり、加速輪列を経てフライホイールに繋がっています。
さらに下には、ストップセコンドの板バネを駆動するためのレバーとそれに噛み合うギアがあります、ストップセコンドが後述するようにケージと共に回転しなければいけないため、ストップセコンド用のギアもレバーにいつでも噛み合えるように回転しています。
中央にはフライングトゥールビヨンのピニオンがあり、ここには輪列からのトルクが常にかかっています。

まずはリュウズ一段引きで動くストップセコンドです。
レバーがストップセコンド用ギアを押し上げることにより、ストップセコンド用板バネが持ち上がり、テンワを下から押して止めます。

停止しました。
この板バネはトゥールビヨンケージと共に回転しているうえに、さらに後述するゼロリセット機構が回転しているときも押さえ続けないといけないため、ゼロリセットレバーとゼロリセット用の歯車という組み合わせで常に噛み合う必要があり、更にストップセコンド用板バネはケージに乗っていないといけないことになります。

いよいよ、ゼロリセットです。
これはリュウズを1段引いた状態からさらに引く(ロックはされない)と、制御カムがレバーを動かし、固定4番車開放レバーとミニッツデテント(爪)レバーを動かします。
見てわかるように、固定4番車開放レバーはバネ状に成型されており、押さえるときの衝撃吸収と振動などで不意に解放されないようにしていると考えられます。

固定4番車開放レバーが解放されて固定4番車がフリーになる同時に、ミニッツデテント(爪)レバーがトゥールビヨンケージに接近し、ケージに設けられたデテント(爪)に引っかかる準備をします。
開放されたことによりトゥールビヨンは自由に回転できるようになるため、輪列のトルクがかかるオレンジ色の方向に回転を始めます。

回転開始のスピードをコントロールするために繋がっているのが緩衝用フライホイールと加速輪列です。
これはガバナーかと思いましたが、より単純で重さで速度変化を抑え込む(慣性は変化しない)フライホイールだと考えられます。
このフライホイール慣性×加速輪列のギア比がトゥールビヨン 4番車ユニットの慣性に加わり、速度が上がりすぎないように制御します。
リピーターなどに比べ、可動量が少ない(最大60秒分=数秒)なので、この制御で充分速度がコントローラブルだと考えられます。

先程ケージに近づいたミニッツデテント(爪)レバーがトゥールビヨンケージの30秒の位置に成形されたミニッツデテント(爪)に引っかかることでケージは60秒兆度の位置で止まります。
ケージが止まった後、加速輪列は停止しますが、フライホイールだけはワンウェイクラッチで切り離され余剰エネルギーを放出しきるまで回転を続けます。
クラッチで切り離すことにより、停止時にはフライホイールの慣性が加わらなくなり、弱い力で止めることができます。

ゼロリセットポジションからリュウズを戻してもストップセコンドが引き続き有効になっているため、トゥールビヨンは停止したままです。
この状態で、非トゥールビヨンのセネタ・クロノメーター及びセネタ・クロノメーター・レギュレーターから引き継いだインデックス分合わせシステムにより、1分ごとにクリック感のあるステップ状の時合わせシステムによって正確に分単位の時合わせを行うことができます。

時間を合わせて竜頭を押し込むとストップセコンドが解除され時計が再始動。
時分はインデックス分合わせシステムで分単位にあっており、トゥールビヨンはゼロリセットにより60秒に合っているので、常に位相があった状態からスタートすることになり正確な時間を表します。

主要な機構は適度に可視化され、時合わせのたびに複雑なプロセスを経て実行されるリセットメカニズムを堪能することができます。
個人的には、精度(性能)を最優先する”クロノメーター”にこのような機構をつけるのはどうなのか?という事を考えた結果、自動車の世界でハイパーカー(スーパーカーのさらに上位の存在)は、レーシングカー顔負けの目もくらむような動力性能を備えるとともに、贅を凝らした豪華な内装や日常的な便利さも備えているのと同じなのかな…と理解しました。
驚くべきメカニズムにもかかわらず、機構まで含めて理解されているとはあまり思えないセネタ・クロノメーター・トゥールビヨン、この記事でスゴ味の片りんでも伝われば幸いです。
【お問い合わせ先】
スウォッチグループジャパン株式会社
グラスヒュッテ・オリジナル ブティック東京
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