Cabestan event at BEAU-RIVAGE Geneve

 By : CC Fan
SIHHの期間中にはジュネーブ市内で数多くのブランドがイベントを行っており、その中には日本に正式に導入されておらず、実機を見る機会があまりないブランドもあります。
今回は、そんな中から拝見する機会に恵まれたカベスタン(Cabestan)のピースを紹介いたします。


イベントは高級ホテルのボー リヴァージュ ジュネーブ(BEAU-RIVAGE Geneve)にて行われました。

今回はほとんどのコレクションを拝見することができましたが、招待状に記載された新作のオールサファイアケースのトリプル・アクシス・トゥールビヨン(Trible Axis Tourbillon)だけは、別の店舗での引き合いで移動してしまっており拝見できませんでした。
こちらについても日本の愛好家に向けて持っていきたいとの意気込みを伺いましたので、まだチャンスはありそうです。

ブランド名である、Cabestanはフランス語で英語のCapstanに相当します。
これは船舶で錨の鎖やロープを巻き上げるための糸巻きのような装置のことで、似たような構造を持つカベスタンのアイデンティティでもある鎖引きの香箱からのブランド名のようです。
設立は2006年と若いブランドで、全てのピースは自社内で部品から製作したムーブメントを搭載し、ハンドメイドで年間50本程度を製造しています。
"ストラップ以外は社内で作っている!"とのことでした。

自社内で部品を作っているという自負からか、今回は時計そのものだけではなくムーブメント、地板なども同時に手に取り、複雑さを感じることができるという趣向でした。



ブランドの基幹であり、3コレクションに搭載されるバーチカル(垂直)トゥールビヨンを備えたムーブメントです。
これは球体ムーンフェイズを搭載したCAB EC 102Lで、ノーマルバージョンはCAB EC 102です。
左側が鎖引き香箱とフュゼ(円錐)のスペースで、右側が時計の輪列になります。

左下のCABESTANと書かれたチェーンが巻き付いている円筒が香箱で、ここから左上のフュゼに向かってチェーンが伸びています。
フュゼの根元にある18という数字が書かれた円筒はパワーリザーブインジケーターで、72時間のパワーリザーブ残量を表示します。
動力はフュゼの軸から右側の輪列に伝えられ、ゼンマイの巻き上げも同じ軸から行います。

右上は時分の表示で、ドラムの表示になっています。
トルクは右上のドラムから輪列を伝わって右下の垂直に回転するトゥールビヨンに至ります。
見ての通り、トゥールビヨンには同軸のドラムが取り付けられ、秒の表示を兼ねています。



ベーシックなウィンチ・トゥールビヨン・バーチカル(WINCH TOURBILLON VERTICAL)です。
ケースはユニークピースの錆びた様な風合いを持ったものでした。
"ウィンチ"というのは巻き上げ及び時刻調整の際に、リュウズではなく専用の小型のハンドルをソケットにはめて行う様が巻き上げ機(Winch)に似ていることからの命名のようです。



別のピースの写真ですが、小型のハンドルはDバックルの専用のスペースに格納されています。
ハンドルそのものの写真は撮り忘れです…



バックルを閉じた場合はこのようになります。
サファイアの窓が付いている場所がハンドルの格納スペースです。



ケースの形状を変えたトラベジウム(TRAPEZIUM)です。
トラペジウムの意味は"台形"、そのまんまです。

ウィンチによる巻き上げと、引き起こした弓状のハンドル(Bow)を使った巻き上げの2つの方法が選べます。



こちらはブランドディレクター氏の腕の場合です。
数値上は大きい(48 mm x 41 mm)ですが、ケース裏面が湾曲しており、ラグがなくケースの直下からストラップが出ている方式のため、実感としてはそこまで大きく感じません。



こちらは女性の腕の場合です。



球体ムーンフェイズを備えたルナ・ネラ(LUNA NERA)です。
ピース名はおそらく、"黒い月"という意味で、ノーマルピースでは半球が黒く塗られた球体にてムーンフェイズを表示します。
写真のものはユニークピースで月がハンドペイントにて仕上げられています。



こちらはウィンチ仕様で、巻き上げと調整はハンドルで行います。
ボウ仕様もも選択可能とのことでした。



ハンドペイントとストラップの青色が調和しています。



3軸トゥールビヨンを搭載したトリプル・アクシス・トゥールビヨンです。
今までのピースとは異なるムーブメントCAB EC17を搭載しています。
一見分かり辛いですが、文字盤の下に香箱とフュゼ、チェーンを格納しています。



トゥールビヨンが別の表情を見せた瞬間です。



ケース形状に合わせ、文字盤が傾斜しているため、時間の読み取りは行いやすいです。
3軸トゥールビヨンは12時位置の"特等席"に配置されます。



手に取ることができた地板です。
斜めに輪列を組むために加工が難しそうな複雑な形状をしています。



3軸トゥールビヨンは3つの軸が直交(90度で交差している)ではなく、地板に垂直な第1の軸、地板に対して斜めの第2の軸、第2軸に対して直交する第3の軸という組み合わせで、原理的には直交にもできそうですが、斜めの方が審美性がよさそうです。



秒針を兼ねている第1の軸は60秒で1回転ですが、第2の軸は19秒、第3の軸は17秒とかなりの高速回転です。
個人的に良いと思ったのは互いの軸の周期を割り切れない数にすることで、より誤差を分散させている設計です。
計算上はある状態から同じ状態に戻るまでの周期が19,380秒(約5.3時間)なので、姿勢差の打ち消しという点では理想的です。
またほぼランダムなため、脱進機が様々な表情を見せるのも魅力ではないでしょうか。



ムーブメントは手作業で仕上げられた一体型のサファイアの筒に収められ、ラグを兼ねたサイドの金属部品で支持・固定されます。
今回拝見したものは金属部品でしたが、新作はサイドもサファイアにしたフルサファイアと言う事のようです。



どのピースも非常に特色溢れるピースで、自分たちのポリシーに従い作りたいものを作るという独立系の良いところが出たブランドだと感じました。
また、"ここはカスタム可能だ"、"数字を漢字(漢数字)にもできる"、"ケース素材に貴石も使える"などオーナーの好きなように作るユニークピースにも寛容なようです。
個人的にはチタンのケースが充実しているのも好ポイントです。



3Dプリンタなどの新しいテクノロジーも活かしているようです。



チェーンは私の腕ではもはやまともに写りません…

説明が分かり辛いところもあったと思いますので、最後に公式の動画を掲載いたします。
特にバーチカルトゥールビヨンの動画はCGではなく、実機のマクロ撮影です!











関連 Web Site

CABESTAN Geneve
http://www.cabestan.ch/