ジャガー・ルクルトから 「 レベルソ・トリビュート・エナメル・伝説の秘宝 」発表~3巨匠の“隠されていた”絵画の魅力的な物語をタイムピースに

 By : KITAMURA(a-ls)


退色しにくく安価で作れることから、20世紀前半までの時計の文字盤はエナメル製が標準だった。その後、金属板が直接に文字盤の役割を果たすようになると、今度は逆に、エナメルは時計の工芸技法において特別な位置を占めるようになった。
エナメルと一口にいっても、そこにはいろいろな技法がある。クロワゾネ、シャンルベ、フランケ、パイヨン、プレカジュール、カボション、グリザイユなどなどだが、その中でもミニアチュール(細密画)と呼ばれる絵画のような技法は、エナメラーの技量によって出来にも大きな差がでるため、高名なエナメラーは、アーティストとしての評価も得ている。



エナメルの話はいつかまとめて記事にしたいとも考えているが、十年以上、できる限り実物を観ることを心掛けてきたうえでいうと、エナメルを扱う数ある時計ブランドの中でも、ミニアチュールに関してその再現性および完成度が最も高いのは、ジャガー・ルクルトではないと感じている。
失われつつあったミニアチュール技法や入手が難しくなっていた顔料の代替えなどを、最も早く社内に確立したのが90年代のジャガー・ルクルトであり、技術的に一日の長を持っていることはやはり大きい。そして、それ以降もノウハウの蓄積を重ねてきたジャガー・ルクルトの、その成果の賜物ともいえるシリーズが、「レベルソ・トリビュート・エナメル」だ。



先の葛飾北斎シリーズも話題となったが、このたび、「レベルソ・トリビュート・エナメル・伝説の秘宝」が発表となった。これは、クールベ、クリムト、ゴッホという3人の巨匠の作品のうち行方不明や紛失といったミステリアスにして不思議な物語で知られる作品をフィーチャーしたもので、エナメルというロマンのある素材とも相まって、とても魅力にあふれた時計に仕上がっている。
いつか実機を観られたらという願望も込めて、取り急ぎ、プレスリリースを引用して紹介しておこう。



 




ジャガー・ルクルト「 レベルソ・トリビュート・エナメル・伝説の秘宝 」~行方不明のちに発見される、3つの“隠されていた”絵画の魅力的な物語




ジャガー・ルクルトが発表する3本の新作、レベルソ・トリビュート・エナメル・伝説の秘宝は、近代美術の黎明期に活躍した3人の巨匠、ギュスターヴ・クールベ、フィンセント・ファン・ゴッホ、グスタフ・クリムトの作品を称えます。レベルソのケース裏面には、それぞれの画家の作品が グラン・フー・エナメルで忠実に再現されています。



3点の絵画は、クールベの写実主義からファン・ゴッホの後期印象派、クリムトやウィーン分離派の実験的精神まで、西洋美術史における大きな3つの分岐点を体現する一方で、それぞれの絵画にはもう一つの魅力的な物語があります。
いずれの絵画も、何十年間も世界から隠されており、永遠に失われたと考えられていました。その物語の一つ一つが、小説や強盗事件映画の題材になり得る、信じ難い非凡な物語です。



ギュスターヴ・クールベ – View of Lake Léman(レマン湖の眺め) (1876)
19世紀の写実主義のリーダーであり政治活動家であったギュスターヴ・クールベは、1873年に故郷のフランスを離れ、スイスのレマン湖の湖畔に位置するヴヴェイ郊外に定住しました。この地で彼は、湖面からダン・デュ・ミディ山まで移ろい続ける景色からインスピレーションを得ました。
彼が亡くなる前年に描かれたこの美しい独特の雰囲気を持つ湖の風景において、クールベは雲の動きや湖面に映る太陽の光を、シルバーブルーの煌めく色調で表現しました。



クールベの死から約15年後の1890年代始め、ノルマンディーのグランヴィルの住人が、この作品とクールベのものと考えられる他の作品2点を、現地の美術館(Musée du Vieux Granville)に寄贈しました。



第二次世界大戦の終わりに、それらの絵画は倉庫に移され、70年間忘れ去られていました。1995年、専門家がこの3点の絵画はすべてクールベの作品ではなく、意図的な贋作または他の作者の作品と断言しました。これらの絵画が再び脚光を浴びたのは、結局2015年になってからで、美術館のキュレーターが美術館の歴史についての文書を作成しているときでした。彼女は、作品の真贋についてセカンドオピニオンを求め、ミュゼ・ド・フランスのクールベ専門家の第一人者であった
ブルーノ・モッタンに相談しました。モッタンは広範な調査を行い、2017年にこの湖の風景は間違いなくクールベによる作品だと確定しました。





フィンセント・ファン・ゴッホ – モンマジュールの夕暮れ (1888)
ファン・ゴッホは、1888年に南仏に移住すると、自然と人工の環境を新たな手法で描くことを試み、多数の作品を制作する芸術的に成熟した時期の始まりとなりました。
1888年7月5日、ファン・ゴッホは弟のテオに手紙を出しています。「昨日の夕暮れ時、とても小ぶりのねじれたオークが何本も生えている岩だらけの荒れ地にいた。向こうの丘には廃墟があり谷は麦畑になっていた… 太陽から真黄色の光が茂みと地面に降り注いでいた… また、私はそのスケッチを持ち帰った…」 この明らかな証拠にも関わらず、ファン・ゴッホが描いた絵画『モンマジュールの夕暮れ』は、2013年まで存在することが立証されませんでした。その間、この作品は60年間完全に姿を消し、その後しばらくの間再び姿を現しましたが、また消え去りました。



1908年、ノルウェーの実業家で収集家のクリスチャン・ニコライ・ムスタッドがこの作品をパリのディーラーに持ち込みました。家族代々伝わる話によると、その後すぐに、ムスタッドの知人であり、19世紀美術の専門知識を持っていたフランスの駐スウェーデン大使がこの作品を贋作だと指摘しました。戸惑い憤怒したムスタッドは、すぐにこの作品を屋根裏に放り込み、1970年に彼が亡くなるまで忘れ去られました。再び贋作として一蹴され、姿を消したこの作品は、1991年にアムステルダムにあるファン・ゴッホ美術館によって真贋が調査されたわずかの間だけ再び姿を見せましたが、その際もまた贋作だと判定されました。



ついに2011年、美術館の専門家たちが、今や可能となった最新技術を用いてこの作品を再び調査することに同意しました。調査の中で、顔料がファン・ゴッホのアルルで使用していたパレットの顔料と一致していることが化学テストによって証明されました。 2年後の2013年9月、この作品が本物であることが公表されました。1928年以降では、ファン・ ゴッホのフルサイズの絵画において、新たに本物と判定された初めての作品でした。






グスタフ・クリムト – 婦人の肖像 (1917)
この作品は、ウィーンの画家、グスタフ・クリムトによる“2つの”肖像画として知られているだけでなく、“二度紛失した”作品です。
この絵画の2つの肖像画は、1996年になって発見されました。洞察力の優れた美術生クラウディア・マガが、クリムトが最初の肖像画の上に新たに肖像画を描いたことに気付いたのです。
最初の肖像画はクリムトが描いた直後の1912年から行方不明になったと考えられていました。 その背後にある物語は、非常にロマンティックです。最初の肖像画はクリムトが狂ったように恋に落ちた若い女性の肖像画でした。彼女は彼の女神となりましたが、あっという間に亡くなってしまいました。クリムトが亡くなる前の年、いまだ悲しみが癒えなかった彼は、肖像画を別の女性の新しい絵で覆ったのです。



この作品は、イタリアのピアチェンツァにあるリッチ・オッディ近代美術館で、館名となっている ジュゼッペ・リッチ・オッディが購入した1925年から展示されていましたが、1997年2月、特別展の準備中に盗難に遭いました。額部分は美術館の屋根に捨てられており、窃盗犯らは天窓を通じて絵画を持ち出したとみられていました。しかし、開口部は額が通るには小さすぎたため、これは見せかけでした。その後の数年間、贋作(フランス国境で押収された、前イタリア首相ベッティーノ・クラクシ宛の小包に入っていたものも含む)がいろいろ出てきましたが、オリジナルは行方不明になったと思われていました。



その後の2019年12月、庭師たちが美術館の外壁表面を覆うツタを取り除いていたところ、金属製の扉を見つけました。そして扉の中から、行方不明になっていた作品が入っている黒いごみ袋が見つかりました。専門家らは、すぐにそれが本物であることを確定しました。



この物語はその後さらに奇妙な展開を迎えます。刑事免責を受ける代わりに証言した窃盗犯によると、オリジナルの場所に掛けられていた1997年に盗まれた絵画は実は贋作であり、オリジナルは慎重に計画された内部者の犯行によって、数ヶ月前にすでに盗まれていました。展覧会に訪れる専門家らに指摘される恐れがあったので、贋作であるという事実を隠すために、美術館内部の共犯者がその コピーを盗んだのです。しかしオリジナルがどのように壁の中に隠されたのかという疑問が残ります。作品が比較的良好な状態であることから、盗まれてからそこにあったとは考えられません。ではいったい誰が戻したのでしょうか? いつ? どんな理由で? 謎は残るばかりです。





【仕様~TECHNICAL SPECIFICATIONS】
REVERSO TRIBUTE ENAMEL HIDDEN TREASURES – COURBET

Case material: White gold
Case dimensions: 45.6 x 27.4 mm
Case thickness: 9.73 mm
Movement: Manually wound – Jaeger-LeCoultre Calibre 822/2
Functions: Hours, minutes
Power Reserve: 42 hours
Water resistance: 30 metres
Dial: Herringbone guilloche, with Grand Feu enamel
Case back: Closed – Grand Feu enamel
Strap: Black alligator
Reference: Q39334C2
Limited Edition: 10 pieces





REVERSO TRIBUTE ENAMEL HIDDEN TREASURES – VAN GOGH

Case material: White gold
Case dimensions: 45.6 x 27.4 mm
Case thickness: 9.73 mm
Movement: Manually wound – Jaeger-LeCoultre Calibre 822/2
Functions: Hours, minutes
Power Reserve: 42 hours
Water resistance: 30 metres
Dial: Sunray guilloche, with Grand Feu enamel
Case back: Closed – Grand Feu enamel
Strap: Black alligator
Reference: Q39334V1
Limited Edition: 10 pieces



REVERSO TRIBUTE ENAMEL HIDDEN TREASURES – KLIMT

Case material: White gold
Case dimensions: 45.6 x 27.4 mm
Case thickness: 9.73 mm
Movement: Manually wound – Jaeger-LeCoultre Calibre 822/2
Functions: Hours, minutes
Power Reserve: 42 hours
Water resistance: 30 metres
Dial: Barleycorn guilloche, with Grand Feu enamel
Case back: Closed – Grand Feu enamel
Strap: Black alligator
Reference: Q39334K1
Limited Edition: 10 pieces









【お問い合せ】
ジャガー・ルクルト コンタクトセンター
TEL:0120-79-1833
営業時間:平日の月曜から金曜 11:00~19:00



[レベルソ]
1931年、ジャガー・ルクルトは、20世紀のデザインのクラシックとなるタイムピース、レベルソを発表しました。ポロの激しい試合にも耐えられるように作られており、すっきりとしたアールデコ調のラインと独自のリバーシブルケースを備えたこの時計は、瞬時に識別することができます。誕生から90年間、レベルソはアイデンティティに妥協することなく自らの存在を常に変化させてきました。50種類以上のキャリバーが搭載され、何も描かれていないメタルの裏面はクリエイティブな表現のためのキャンバスとなり、エナメル、エングレービング、ジェムストーンなどで装飾が施されました。2021年に90周年を迎えるレベルソは、変わることなく、その誕生にインスピレーションを与えた現代の精神を象徴し続けています。
jaeger-lecoultre.com