シチズン 前人未踏の年差±1秒の精度を実現したCaliber 0100 (延長)第六回~【私も買いました】1ヵ月年末年始インプレッション編

 By : CC Fan

2021年の総括
、でも触れたシチズンのキャリバー0100を搭載したザ・シチズン Caliber 0100和紙文字盤モデル。
上記の記事では失念していましたが、これも「Buy the watchmaker, not the watch」であり、開発者の顔が見える、時計そのものだけではなく、その「気概」を買ったかなと…

元より、「時計」である以上「精度が良い」というのはアピールポイントではなく「当たり前」という精度偏重の考え方の私ですが、それを差し引いても「普通に良い時計」で12月13日に購入してから年末年始の帰省も含めてずっと着けていました。
一か月記念?ということで、総括でもやった無軌道に書く、というのを0100に絞ってやってみたいと思います。

まず、なぜずっと着けていたか?という事について。
新しい時計なので、というのは当然ありましたが、もう一つは他の時計と置き場を変えたためです。

私は家の中と仕事中は腕時計をつけず、外出するときに腕時計をつけるという習慣で、時計は鍵や財布などの外出貴重品置き場の脇に時計用のトレイを置いてそこに並べておいて選ぶ、という方法で運用してきました。
仕事の時は、パソコンモニタの下にクロスと空き箱で作った「時計置き場」を設置して着席したらそこにおいて置時計として使い、離席するときに時計を付けなおしています。

上記の運用で、機械式時計なら明示的に巻ける手巻きか、通勤時に巻き上げる自動巻きなので、特に問題ないのですが、ソーラー発電のQ&Qでは自宅の時計トレイが置いてある部分が暗すぎて充電されない、という状態になってしまい、使おうと思ったら止まっているという事が複数回あり、光を当ててもしばらくしないと動き出さないというのも不便です。
Q&Qは照明がついている時間が長く、常に光が当たる仕事の時計置き場に置いておくことで問題は解決しましたが、流石に0100を同様に置きっぱなしにするのはアレなので、自宅側のパソコンモニタ横に会社と同じような時計置き場を新設しました。



この脇に常に持ち歩いている「俺の配列」キーボードがあり、出社時には電源を切って専用のキャリーケースに入れてかばんに入れる、という動作があるため、「ついでに横にある0100を腕に巻く」という習慣ができ、「優先席」のような扱いになった結果、自然に装着の回数が増えました。

それを除いても「手がかからない」上に、「まず正確な時間を指している」というのは時計として当たり前とはいえ本当に素晴らしい、クオーツが未来の時計だ!という事を改めて実感しなおしました。
ただ、光の当たり方としては天井の光源から斜めに入射していることになるので、充分に充電されているかは今後の経過を見なくてはいけません。
年差±5秒のキャリバーA060は「隠しボタン」によって残量を確認する方法があるようですが、0100は結果的に充電量不測の警告が出るまでは分からないというのは少し気にはなります。

一番のアピールポイントである精度については1か月ぐらいでは全く目視できるようなズレはありません。



これは購入直後に日本標準時を作っているNICT(通信情報研究機構)が公開している日本標準時の原子時計に直結している公開NTPサーバーとミリ秒単位で同期した自宅サーバー上で1秒単位の表示を作り(アンダーバーの左の2桁が秒、右の9桁がナノ秒)、簡易的に確認したものですが、目立った差はなく、シチズン出荷時にちゃんと合わせられていることが分かります。

1秒表示スクリプトも適当に書いたので表示時点で数ミリ秒のバラつきがある、そもそも画面表示が60fpsで1フレーム16.7ミリ秒の遅延がある、サーバー(Linux)とクライアント(Windows)の通信遅延…と改善事項は結構あるのでこれも適当に取り組んでいきたいです、人間が見るんじゃなくて、まずはデテント用に作った画像認識で秒針を認識するとか?

装着感もベルトが馴染んだ後は非常に良くなりました。
個人的には上記のように脱着が多い運用方法なのでDバックルと革バンドが好きで、和紙文字盤にしたのも革ベルトの存在が大きいのですが、クロコダイルは初めてでした(公式サイトは「ワニ革」表記だが、ベルトにCROCODILEと表記あり)。



公式写真にもあるように、かなり薄手のベルトでした。
初期のツヤツヤ感がすごく、黒色と相まって「昭和」な感じすら漂わせ、ギシギシ言っていたので、これはベルトは作り直しか?とも考えていましたが、馴染むにつれて「現代」に帰ってきた感じはあります。
直球のドレスとしては黒は良いですが、もうちょっと軽い色で作り直すかもしれません。

ケース厚9.7mmは機械式ドレスウォッチの並みの薄さで、11mm以上だったザ・シチズン 年差±5秒モデルからより「ドレス」っぽい性質になったのか?と考えました。
年差±5秒モデルは「スポーツ」まではいかないまでも、ある程度の「タフさ」を求めたようなケースで、防水性も10気圧ありました、それに対し、0100はより繊細な感じで防水も5気圧になっています。

「実用性」として頑なに外さなかった日付表示も無くしたり、ドレスっぽくしたり、良い意味で今までのシチズンっぽくない、と言え、そこが琴線に触れたのかもしれませんん。

バックルは片開きで、同じく薄型ドレスのエコドライブ・ワンの革ベルトモデルと基本は同じものに見えます。
両開きに比べると片側に長くなるため、ベルトの長さ・腕の形状に敏感そうではありますが、幸いにも私のサイズでは装着感が良好でした。



装着感が良ければ、片側だけ開ければ良いので操作性は両開きより良いです。
固定部分も打ち込まれた頑丈そうなピンを厚手の爪で挟む方式で、そもそもが頑丈そうなうえに、ボタンを押しながら開閉すればピンと爪が擦れない、というのも気に入っています。
削り出しを多用するスイスのバックルと違い、滑らかに厚みが変わっているのでプレスと曲げで作っているようですが、見れば見るほど、どうやって作っているんだろう?と思う不思議な形です。

また、バックル対応なのかベルトの端を押さえるリングが両方ともベルトに固定されず自由に動く遊革になっています、もしかしたらベルトを薄くするためなのかもしれませんが、バックルを止める時に無理に定革に通さなくていいのは楽ですし、革を無理に曲げなくてよいので寿命にもプラスでしょう。



「影蒔絵」文字盤の印象はファーストインプレッションの時からさらに進み、やはりこれが「ちょうど良い」と思いました。

インデックス長さのバランスは個人的にはこれが一番良いですし、蒔絵も個体差はあるかもしれませんが、時間を読みたい時に何か影響があるという事はほとんどありません。
面白いのは直射日光下のような明るすぎる環境でも、夜のような暗すぎる環境でもほとんど見えなくなり、室内蛍光灯下ぐらいの中間の明るさが最も蒔絵が主張してくることです。

ダイヤルで気になるのは、細かい点ですが少し視差が大きいかな?という事で、真正面から見ないとあれ?秒針がズレてる?と思ってしまうことがあったことです。



記念モデルの18金ケースモデルと比較するとより分かりやすく、記念モデルの水晶デザインの針からドーフィン針にしたためか、針の間隔が広がっていて、ケース自体も厚くなっています。

文字盤からサファイアクリスタルまでの見返しも和紙文字盤の方が長いようです。
18金ケースはグラスバックにもかかわらず厚み9.0mm、和紙文字盤は9.7mmで、同じく記念モデルのチタンケースは9.0mm、レギュラーモデルのステンレスケースモデルも9.7mmなので和紙の厚みではなくケース(と針?)の構造の違いだという事が分かります。

特に18金ケースは見ての通り、秒針先端が曲げられていますが、それに加えて文字盤自体がすり鉢状になっていて視差を極力減らすようにしています。
これと比べると、和紙の方は間隔が開いてる…と感じてしまいます。

本当にズレているわけではなく、あくまで「ズレて見えている」だけなので、正面から見れば良い、という事ではありますし、針の間隔を詰めるとその分衝撃に弱くなるなどのリスクもあるため、記念モデルだった、キャリバー0100をザ・シチズンとしてレギュラー化するにあたってこのような決定をした、という事と理解しました。

もう一つ気になったのは完全に因縁レベルですが、分と秒の間に位相差があったことです。

前述の通り、日本標準時(とミリ秒単位で同期しているサーバー)と比較しても秒単位で正確ではあったのですが、秒針が60秒を指した時に分針がインデックスにぴったりと重ならず、わずかに進んでいました。
何度か測定したところ、52秒の時に分針がインデックスとぴたりと重なっているので分針の方が 8秒進んでいることになります。

時計の時合わせのシステム上、時と分は常に位相が一致しますが、秒から分は意図して合わせないとズレます。
これは歯車のバックラッシなども考慮して合わせこまないといけないので、厳密にやろうとすると結構めんどくさいです。
通常は分針が±30秒以上ズレなければ、分針からは分の情報だけ読み取って切り捨てれば問題ないので、そこまで気にする必要はありません。

カンタロスでふと気になってコンスタントフォースのヒゲ持ちを秒針に見立て、ルーペを使って分針と位相合わせ、その後はリュウズを回さずストップセコンドで1週間ごとに進んだ分をキャンセルする、という運用をずっとやっていました。
そのせいで余計に気になったのかもしれません、誤解しないでいただきたいのは、繰り返しになりますが、これは完全に因縁のレベルで、8秒の位相差で合わせてあるならちゃんとしています。

そんなに気になるならさっさと合わせ直せば?とは自分でも思うんですが、UTCを決めてるフランスの国際度量衡局(BIPM)まで行ってUTCを持ち帰るとかやりたい…とか、まずは小金井のNICTでは?とか…
合わせこみスクリプト君をもう少しちゃんと作ってまずはそれかな?

というわけで、色々書きましたが、「普通に良い時計」というのが1か月使っての結論かなと思います。
和紙文字盤とレギュラーモデルは、記念モデルの「すごい」感を出そうとしていた部分がこなれて、「普通」になったけど、ムーブメントは最高性能という「羊の皮をかぶった狼」としてうまく落ち着いたのが琴線に触れたのかなと。
見た目ですごさをアピールしなくても、高性能なことは自分が分かっていれば良い、という事でしょうか。