KEN OKUYAMA DESIGN x ISSEY MIYAKE WATCH ニューモデル「GT」

 By : KAIROS
去る5月23日、銀座の和光にて新作時計発表会にご招待いただいたので、僭越ながら会場にお邪魔させていただきました。
 その日は用事があったため参加できるかわからなかったが、セイコーが手掛ける "ISSSEY MIYAKE WATCH"を、かの有名デザイナー KEN OKUYAMAがデザインを手がけた!と聞けば無理をしてでも実機が見たくなるのは筆者だけではないはず。

 奥山氏は、伝統的な南部鉄器から記憶に新しい最新鋭の新幹線まで幅広いデザイン活動を行っており、中でもとくに有名なのはこれだ。(Kode57, Kode9)
 

 フェラーリ エンツォを始め、多くのカーデザインで世界的に有名な氏が手掛ける時計のニューモデル「GT」。モータースポーツの「グランド・ツーリング(大いなる旅)」というコンセプトから生まれたこの時計は、“未だ知らない遥かなるところへ、大いなる旅のロマンを予感させ(リリースより)”、優雅さとスピード感が融合したカーデザインのエッセンスをうまく取り込んだデザインになっている。


 そして氏いわく、Premium Commodity vs Luxuary Brand を念頭に置きデザインしているという。 
 Premium Commodityとは市場価格が10%や20%高くても魅力的であれば欲しいもの、そしてLuxury Brandとは普遍的で価値が変わらないものであるという。それぞれを掛け合わせた考え方は、まさに今の時代にマッチしているのではないだろうか。そしてそれをMade in Japanという日本が世界に誇るべき技術で作り上げたものが「GT」なのだ。

では早速、時計を見てみよう。
まずは外装から。
ケースはステンレス スティールを基本に4種類あるが、特筆すべきはケースサイドである。

 御覧のように6時側(左)と12時側(右)のラグの長さ・角度が異なっている。これはまさに氏らしい発想で、「ハンドルを握り運転していると時計が手首外側にずれてしまい、都度手前に引き戻す事がよくある。その問題を解決するために、6時側を短くし、さらにストラップを下に落とし重心を下げた」。このことにより6時側に時計は引張られ、着用者の方に時計が向くようになり、手首上で時計のポジションを気にしなくて済むという。またケースサイドを極力削り出すことで、ケースの軽量化を実現し、立体感を得ている。
 その言葉を聞いた時、氏が今まで手掛けてきた海外時計デザインにはない自由な発想と奥深さを知った。そして筆者は多くの閉鎖的な時計デザインに、新しい大きな可能性を感じたのだ。

 さらに曲線美を出すために手作業によるザラツ研磨で質感を高めたという。ザラツとは実際はその機械の会社名であり、スイスではラッピングマシーンと呼ばれる機械での研磨である。回転する円盤に研磨シートを取り付け、対象物を押し付けて磨きを行うこの研磨方法は、基本的に平面を出すことによく使われるのだが、もちろん専用冶具を使用すればある程度の数の左右対称の曲面を作り出すことが可能であろう。筆者も長く平滑な面を主張するブランドのアフターサービスにいたため、このマシーンの特徴や奥深さを少しは知っている。そして筆者がこのGTの左右対称の美しい曲面を見た時、その光り輝く曲面に職人技を強く感じ取ったのだ。つまり左右非対称の曲面は、単調な対称の曲面よりも仕上げが難しく、時間を有するという事だ。結果、そこに商品のこだわりの1つがあることになる。

次に文字盤を見てみよう。

 クロノセンター秒針、12時インデックス、3時位置秒カウンターの一部に赤を使い、車を意識した躍動感あるデザインにしている。またダイヤルを4層にしており、一番下の3カウンターをはっきりした黒で強調し、一段上がったインナーサークルを下にずらすことで時計の中心が下に向かうが、12時のインデックスを6時より長く、そして6時位置カウンター窓だけを大きくとることによって、見た目のバランスをうまく調和させている。また視認性を上げるために全体を軽く荒らしたブラックダイヤルに、ポリッシュしたインデックスを置き、斜めになった上から2層目のアウターサークルの中にそれを埋め込みながら、さらに一番高い層にタキメータースケールを配することで立体感を演出している。(下の写真は赤ではなく黄にネイビーダイヤル)


 ムーブメントも、Made in Japanにふさわしいセイコーが誇る8R48を搭載。垂直クラッチにピラーホイール(コラムホイール)そしてゼロリセットを瞬時に行う三叉ハンマーを備えている。 モジュール式のため残念ながらその動きは、シースルーバックケースから見えないが、プッシュボタンを押す質感や性能はさすがである。欲を言えばバックケースを近年よく見るBOX型サファイヤクリスタルにして、立体感を強調させながらすっきり見せることも出来ただろうが、それは完全に筆者の好みである。



 筆者が個人的に気になったのは、メタルブレスレットだ。
 それはケースやダイヤルデザインがあまりにも優れているのに対し、メタルブレスレットが普通すぎて物足りない感じであった。これも完全に好みの問題だが、ケースは10気圧防水のため水に強く、夏場にメタルブレスレットで使用するメリットを活かせるが、スピード感やPremium Commodityを得るにはストラップバージョンとして着用したい。
 しかし夏場はメタル、その他の季節はストラップと使い分けることで時計の表情が変わるため、それはそれで楽しみが増えるかもしれないだろう。



会の終了後、個別のインタビュー形式で奥山氏が話しているのをまじかで聞かせていただいた。彼はデザイナーでありながら自身でも研磨をすることがあると言う。そして「もう少し研磨で角度を追い込みたかった」と話していたのがとても印象的である。デザイン図面を描き、それ以上に大きな車などを仕上げることが多いが、時計はその逆であると氏は言っていた。時計は車よりも小さく、必要以上に細部の仕上げが目立つ。そしてそれを手に取ってじっくり見ることが出来てしまう。
 「GT」の仕上げでも十分だと感じていた筆者が、氏は貪欲にも更に上を目指したいと発言したことに対し、次の作品があるのならば是非その作品も見てみたいと氏の職人魂に大きく共感し、短い時間だったが商品を通して多くを氏から学んだ実りある1日だった。

セイコー広報宣伝部の皆様、色々とありがとうございました。

以下はリリースからの商品情報です。
全4種類
“ISSEY MIYAKE WATCH” 「GT」 世界数量限定 各100本 6月9日(金)発売予定
  


品番 希望小売価格 ケース バンド ダイヤル
NYAG701 340,000円+税 ステンレススチール ブラック
NYAG702 360,000円+税 ステンレススチール
(ブラック硬質コーティング)
ブラック
NYAG703 310,000円+税 ステンレススチール
(ブラック硬質コーティング)
クロコダイル
(ブラック)
ブラック
NYAG704 290,000円+税 ステンレススチール カーフ
(ブルー)
ネイビー

仕様
ガラス素材:サファイヤ(内面無反射コーティング)
裏ぶた:シースルー・スクリューバック
防水性能:日常生活用強化防水(10気圧防水)
ケースサイズ:[外径]45.2㎜(りゅうず・突起部含まず) [厚さ]15.0㎜
アフターサービス:メーカー保証 保証期間2年間

ムーブメント仕様
メカニカルムーブメント:キャリバー8R48
時間制度:平均日差+25秒~-15秒
振動数:28,800振動/時(8振動/秒)
石数:34石
その他機能:ストップウオッチ機能(30分計・12時間計)、日付表示機能


【お問い合わせ先】
セイコーウオッチ(株) お客様相談室 0120-181-671

<イッセイ ミヤケ ウオッチ>の公式Webサイト
http://www.isseymiyake-watch.com/jp/