カール F・ブヘラの新時代を象徴する「マネロ・ペリフェラル」というダイナミックなキーワード~インプレッション・レポート

 By : KITAMURA(a-ls)


これまで、ランゲを着けていても、パテックを着けていても、一度も言われたことのない言葉だった。
もちろんイベント会場やオフ会だったら何度か経験もしているけれど、偶然に隣り合わせた飲食店のカウンターで、さわやかな若い紳士から日常生活では初めて、その言葉をかけられた。

「素敵な時計をお着けですね...」

ふいにかけられたこの言葉に、ちょっと誇らしげな気持ちになってお礼を言うと、そのさわやかな紳士は続けて話しかけてきた。
それもまた、これまでトゥールビヨンを着けていようが、ミニッツリピーターを着けていようが、イベントやオフ会を除く日常生活において、一度たりとも言われたことのない言葉だ。

「ちょっと拝見してもよいですか」

"もちろんです"と応じ、時計を外して渡すと、それを受け取った紳士はおそらくブランド名を読み取ろうとしているのだろう、文字盤を透かすように見つめている。ちなみに紳士が左腕につけているのは、ラバ―ストラップの「シーマスター アクアテラ150M」。好感の持てるセレクトだ。そして、文字盤を見ていた紳士が顔をあげて訊ねてきた。

「なんというブランドですか?」

そう来るだろうと思っていた自分は、すっかり相好を崩していたに違いなく、すでに"語りモード"の準備を充分に整えつつこう答えた。

「カール F・ブヘラというブランドで、これは『マネロ・ペリフェラル』と言うモデルです」




こうしてしばしの時計談議をすることになったのだが、紳士が目を惹かれた一番の点はそのデザインだったという。
しっかりとしたケーシングに映えるサーキュラーブラッシュ仕上げ文字盤の輝き。着用していたモデルはサーモンだったが、6時位置に大胆に塗られたブラックのスモセコと3時位置のデイト、そしてそこにエッジの鋭いアロー型のインデックスと針がセットされ、絶妙なデザインバランスと視認性を生んでいる。ドレス・ウォッチにかかせない品の良い高級感と、ドレス・ウォッチにはなかなか出せないデザイン的な先進性が兼ね備えられているのだ。





過去のブヘラのデザインはオーソドックスなものが多かったが、繊細なナチュラルカラー(ブランドはアースカラーと呼んでいる)をベースにブラックで要所を締めるセンスは、創業135周年を迎える今年(3月)、満を持して発表されたこの新色「マネロ ペリフェラル」の斬新さとともに、ブヘラの新たなチャレンジと時代性とを物語っているといえる。



さきほど"しっかりとしたケーシング"と書いたが、それはゴツイという意味ではない。ステンレス・スティール製のケース厚は実測値で11.2mmなので見た目よりはむしろ薄く、装着感は軽やかだ。ブレスレットもしなやかでこの価格帯のモデル(税込価格1,298,000円)としてはピカイチの出来で、さらには日本発売分に限り、インターチェンジャブルなハイブリッド ラバーストラップが付属してしまうという大盤振る舞いなのである。





些細なことかもしれないが、ブレスのバックル部分の、閉じると隠れてしまう部分や噛み合わせのパーツにまで、ペルラージュに似た連続模様の仕上げが施されていたりするのも、見つけると嬉しく思える点だ。こんなところにもブヘラの真摯さが滲み出ていて、とても好感が持てる。







こうしたデザインの話やカール F・ブヘラというブランドのヒストリーなど、ひとしきり紳士とお話したのだが、実はそれはまだこの時計についてのイントロダクションに過ぎない。
「マネロ・ペリフェラル」というネーミングどおり、このモデルの肝はケースの内側にある、ペリフェラル・ローターを組み込んだ自動巻きムーブメントにある。



ペリフェラルは、一般的な自動巻き時計に使われる扇状のローターとは異なり、リング式のローターをムーブメント外周に組み込む機構で、この考え方自体はかなり古くから発想されていたものの、技術的に非常に難しい点が多く、1955年にポール・ゴステリが開発に成功し特許を取得した後も、安定的に実用化できるまでにはさらに半世紀近い時間を必要とした高難度な機構なのである。



難しいぶん、利点も多い。ブヘラ以外にも各社がこの機構を採用しているが、ブヘラの場合、ローターが結合しているのは滑らかな回転を促すボールベアリング部分のみで、地板やブリッジとは接合していない。そのため余計な摩耗を最小限にできるうえ、躯体がリング形状のしかも両方向巻上げなので運動効率も格段に良いし、ローターを外周に配した結果、ムーブメント自体を薄く(小さく)できる。加えて、扇型のローターのような遮蔽物がないため、オートマチックなのに裏スケからムーブ全体が見渡せるという、マニアックな愉しみも増える。



こちらのペリフェラル・ローターに関しては、非常に大事なポイントなので、CCFan氏にさらなるメカニカル分析を、以下のブログでおねがいしている。どうかそちらも参照していただきたい。

(参照:カール F. ブヘラ、ペリフェラルローターを「読む」)




数分前まで見ず知らずだった方と、あっという間に親しく話せるのが時計趣味の良い処で、しかもこのカール F・ブヘラの発祥の地、ルツェルンには個人的な思い入れもあり、それに加え、お話しているうちにこのモデルに対する自分なりの新しい発見が多々あったので、久しぶりにインプレッション・レポートを書いてみた次第であるが、最近、時計の値段がどんどんと高くなっていく中、このクォリティーにラバ―ストラップまでついてこの価格というのは、逆に"大丈夫?"とちょっと心配になるくらいで、皆さんもぜひ一度、店頭で手に取って吟味していただきたいと願うところである。





最後に2023年のC F・ブヘラだが、これから発表が予定されているモデルでも、ますますデザイン性に拍車をかけると公言している。冒頭の若い紳士もブヘラはご存じなかったようだが、今後、より多くの時計ファンににアピール&アプローチしていくと思われるので、ぜひぜひ注目していただきたい。




(参照:https://watch-media-online.com/news/6815/ )


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[カール F. ブヘラ]
カール F. ブヘラは1888年の創業以来、卓越性、革新性、情熱の代名詞となってきました。創業者のパイオニア精神とホームタウンであるルツェルンで育まれたコスモポリタン精神を特徴とし、今では世界中でその存在を認められるグローバルブランドとして成長しております。また、スイスでも数少ない独立したオーナー経営による時計メーカーのひとつで、現在は3代目となるヨルグ・G・ブヘラがグループを率いています。
カール F. ブヘラが製造するコンテンポラリーな時計は、独自のデザインと最高の精度、優れた機能性を兼ね備えています。そして技術の革新に取り組んだカールF. ブヘラは、ペリフェラル技術のマーケットリーダーです。ペリフェラル式自動巻きシステムの特許だけでなく、外周で支えるトゥールビヨンキャリッジとミニッツリピーターレギュレーターで、「フローティングトゥールビヨン」の特許も取得しました。さらにCFBマスターラボと名付けられたカスタムオーダービジネスは、最高の創造力と創意工夫を表現したオンリーピースを作り出すために、お客様を第一に考えるというブランドの姿勢を最大限に発揮しています。
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