レッセンスCEO ベノワ・ミンティエンス氏、新作「Type 1 Round M」を携え来日プレゼンテーション

 By : CC Fan

ユニークな機構で唯一無二の表示方式を追求するベルギー発のブランドレッセンス(Ressence)。

創業者でCEOのベノワ・ミンティエンス氏が来日、ブランドの哲学や、独自の表示方式について説明するプレゼンテーションが行われました。
プレゼンテーションの様子と一緒に持ち込まれたType 1の新作、マルチカラーのRound Mをレポートします。



バックグラウンドとして、いわゆる「時計業界」ではなく、工業デザイナーのキャリアを持つベノワ氏。
レッセンスを作る時に考えたことは、既存の時計の考え方ではなく、現代の技術でゼロベースで読みやすい時計を作るとどうなるか?と言う事でした。
一般的な時計はムーブメントから作成されるが、我々は逆に外装から作成する、それが工業デザインの考え方、とのこと。



「読みやすさ」について考え抜いた結果、至ったのは「メカニカル・スクリーン」、すなわち機械式の画面と言う考え方で、読みにくさを生み出す凹凸をできる限り無くし、フラットな表示を機械式で実現するという一般的な機械式の表示方法とはあまりに異なる考え方でした。



「文章が書かれた紙で、文字が浮かんで動き出したら読みやすいですか?」という喩えで現在の構造に疑問を呈します。
一般的なセンターから長針・短針(+秒針)が出ていて表示する、と言う形式は歴史的な経緯や生産性で決まっていることであり、決して理想形ではないという事です。



レッセンスが採用したのは針が決して重なることが無くて視認性を妨げないレギュレーター表示に加え、全ての「針」と「ダイヤル」が同じ高さに配置できる「メカニカル・スクリーン」表示です。
もっとも読み取り精度を重視する分をメインに据え、時は分と一緒に回転するサブダイヤル上の表示に、秒・曜日も同様にサブダイヤルに配置しています。



操作性にも注意を払っており、飛び出ていて破損しやすいリュウズではなく、ケースバック全体を回転させて巻き上げや時間を合わせる構造です。

機構的に見ると、表示モジュールはベースムーブメントから分の回転を受け取って動いており、時合わせの時は筒カナのようなスリップ機構で滑らせるのではなく、ベースムーブメント自体を回転させてることでモジュールに対する基準位置をずらすことで時刻を合わせる、と言う構造のため、と言う都合もあるようです。
日付表示や曜日付きの場合、特定の方向に回した時だけ噛みあうワンウェイクラッチのような構造で調整する対象を分ける構造です。
文章で書くと難しそうですが、使ってみれば「こういう事か」と直感的に使える構造だとは思います。



個人的に好きな、「信頼性の高い汎用ムーブメント」+「面白い表示モジュール」と言う構造で、表示モジュールは抵抗を極限まで減らすためにボールベアリングを使用した輪列を高精度な多軸加工で作られた地板に納めています。
モジュールをできる限り軽量にすることでベースムーブへの負荷を減らしています。

機種によって2番車出力からすべての表示を作っているタイプ(秒は増速)と4番車から秒だけ独立に取っているタイプの二種類がある、とのこと。



現在のコレクションは6種類。
もっともシンプルで2針のType8、3針+曜日表示のType1はスクウェアとラウンド、オイルを封入することでディスクの継ぎ目を目立たなくしてより理想的な「メカニカル・スクリーン」を実現したType5、デイト表示を加えたもっとも複雑な表示のType3、そしてデジタル制御による時合わせ機能(eクラウン)を備えたType2です。

Type2はスマホ上の専用アプリからBluetoothでコントールする方式ですが、名前の通り制御しているのはクラウン(リュウズ操作)すなわち時間あわせだけをスマートに行い、通常時は単なる機械式時計として動くという役割分担です。
時合わせのみにすることで、Bluetoothモジュールを太陽電池の充電のみで賄うことができ、別途充電ケーブルやトラブル原因になりがちな充電端子を省くよい設計と感じました。



ドバイウォッチウィークで発表されたType1 DX3、アラビックな幾何学模様で飾られており個人的にはかなり好きです。



サスティナビリティにも配慮し、豪華なウッドボックスではなくエンジニアリングプラスティックを3Dプリントしたボックス。
特徴的な「手」のロゴは、ブランドがあるベルギーのアントワープの名前の由来(の一つの説)とされている巨人アンティゴーンの手を切り落として投げた、という伝説に倣っているそうです。

さて、この時は写真がNGでしたが、新作Type 1 Roundに新しいバリエーション、Mが持ち込まれていました。
今回、情報解禁となりましたのでオフィシャル写真を掲載します。


マルチカラーで機能ごとに塗り分けることでレギュレーター表示の視認性をさらに向上させています。
時は緑、分は青、秒は黄色、曜日が赤、という色分けでパッと見た時の視認性がさらに良くなるでしょう。



針ではなく、複数のディスクが自転と公転を適切に組み合わせて回転することで向きは変わらない、という基本原理のおかげで段差はほぼ見えないレベル。



赤色の曜日表示はあえて曜日のレターは省き、週末(土日)だけを反転した白抜きにすることでシンプルな表示になっています。


Type5などにカラフルなモデルはありましたが、よりポップな感じで新しい表現を模索していると感じます。



各表示はエングレーブ(彫りこみ)で凹形状にされ、スーパールミノバを埋め込んでおり暗部での視認性にも配慮されています。



ケースバックには操作を助けるハンドルと操作ガイドが設けられています。
自動巻きで、時間を合わせたら基本的には付けていれば止まらない、と考えられますが手巻きもできます。



【仕様】
Type 1 Round M

ケース素材:チタン製(グレード5)
ケースサイズ:径42.7㎜、厚さ11㎜、重さ64g
ガラス:両面ドーム状サファイアクリスタル、両面反射防止加工
ムーブメント:自動巻きROCS1.3(Ressence Orbital Convex System) モジュール(Cal.2892)
・40石
・28,800振動/時
・パワーリザーブ36時間
・ケースバックによる巻き上げおよび時刻調整
・27個の歯車
機能:時、分、秒、曜日表示
文字盤:凸面状のジャーマンシルバー製文字盤(半径125mm)
・偏心配置された3つのサテライト(時表示サテライトは3°、秒および曜日表示サテライトは4.75°の傾斜)
・エングレーブされた後にスーパールミノバ(グレードA)が充填されたインデックス
総部品数:212個
ストラップ:ライトグレーのラバーストラップ (20/20mm)
バックル:チタン製ピンバックル
防水性:防滴構造1気圧

発売時期:2023年12月
価格:2,772,000円(税込)



【お問い合わせ】
DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン(株)
cg.csc1@dksh.com


[レッセンス]
レッセンスは、たった一つのゴールを念頭に置いて2010年に創業しました。そのゴールとは、機械式時計の現状を打破することです。現代における機械式時計の妥当性を見直し、過去の栄光にしがみついているかのように見える業界全体に、新たな息吹を吹き込みたいと考えました。2013年にジュネーブ時計グランプリにてHorological Revelation賞を受賞したレッセンスは、現代の高級時計製造技術に独特のアプローチを採り入れています。それは、スイス製のキャリバーと、他にはない自社設計のイノベーションを組み合わせ、現代の機械式時計がどのように機能し、ユーザーと関わり合っていくのかをじっくりと考える取り組みです。
RESSENCE www.ressencewatches.com
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