ARTIME ART01 トゥールビヨン 地板レススケルトンとチタン・サファイアケースの作品

 By : CC Fan

そろそろジュネーブ…という時期ではありますが、2023年に拝見して感銘を受け、W&W報告会などでは触れたものの、「タイミングを逃して」サイト上では紹介できなかったアータイム(ARTIME)の初作ART01。

だいぶ遅くなって申し訳ありませんが「過去に向き合う」ために紹介し、今年も取材したいと思います。

元々グルーベルフォルセイに所属していたエマニュエル・ジュティエ氏(在籍中にはディナー工場見学でお世話になっています)から独立した、という案内をもらって訪れました。
グルーベルフォルセイでシグニチャ―・ワンを手掛けたDidier Bretin氏も一緒に独立、そのほかルノー・エ・パピなどのバックグラウンドを持つ6人のメンバーと共にARTIMEをスタートさせました。



エマニュエルとDidier、五つ星ホテルのボーリバージュの一室でアポイントベースの展示を行っていました。



ART01トゥールビヨン。
一見すると普通のスケルトンウォッチ、に見えるかもしれませんがさまざまなイノベーションが盛り込まれています。
姿勢差を打ち消すためのトゥールビヨンに加え、ひげゼンマイを2重にし、偏心の打ち消しを狙ったダブルヘアスプリングとし、更に姿勢差の影響を抑えることを目指しています。
ケースはチタンですが、上記の写真からユニークさが伝わるでしょうか?



なんと、ケースの半分を風防と一体化したサファイアクリスタルの塊から作っています。
ビジョンボックスと呼んでいるこの構造がART01の大きな特徴でしょう。

この構造により、ムーブメント構造を正面からだけではなく、横からも余すところなく眺めることができる、と言うコンセプトです。
この構造と製法については特許を取得しており、サファイアと金属のよいところ取りでバンドはチタン側に取り付けられています。
非常に軽く、装着感は良かったです。



一般的なムーブメントのように「地板」に相当する部品はありません。
あえていうのであれば外周部のリング状の構造物がそれに相当し、外周から伸ばされたブリッジが軸を支えることでムーブメントを構成します。
高級時計の現代的な構造とは何か?を考え、現在でないと作れないものを追い求め、このような構造にたどり着いたそうです。
立体的な構造を持つブリッジは高度な部品製造技術、それを美しく仕上げる仕上げの技術があってこそでしょう。



トゥールビヨンケージもよくある平面的な部品+柱が立体的に組み合わさる、と言う構造ではなく、立体的な単一部品が直接ケージを構成しています。
太さが必要な柱の代わりにブリッジがそのまま回りこんでいるため柱に比べて空間が有効に使えるとのこと。



香箱(1番車)から分針を駆動する2番車、加速する3番車を経てトゥールビヨン(4番車)のピニオンに到達するお手本のような輪列。
軸を支える立体的なブリッジが外周のリングにネジで固定されている様子が分かります。



針やインデックスのデザインも視認性とユニークさの両立を目指してデザインされました。
インデックスには実用的なスーパールミノバも備えていますが、サファイアとチタンを組み合わせたビジョンボックスケースの構造を活かした方法を取っています。



それがこちら、サファイアクリスタル自体を彫りこんでスーパールミノバを象嵌することで1分単位のインデックスを作っています。
この構造により、従来は細かすぎて塗布が難しかった1分単位のインデックスも光らせることができるようになり、更に象嵌のおかげで体積も稼げるため持続時間も伸ばせます。



最後の特徴は、ファンクションセレクターです。

これは、爪をひっかけてリュウズを引くという使いにくい方法を、リュウズ同軸のプッシャーを押すことで「モード」を切り替えて操作する使いやすい方法に作り変えました。
内部への接続が完全に切断されるニュートラル(N)、香箱を巻き上げる巻き上げ(R)、時間を合わせる時合わせ(H)の3つのモードをコラムホイール制御で切り替えます。



リュウズから各機能への接続と切断は垂直クラッチで行っているそうで、歯車の歯同士が切り替えでぶつかる従来の方式よりも良いでしょう。



制御しているコラムホイールのようなものが4時位置に見えますでしょうか?



Didier Bretin氏、グルーベル・フォルセイ時代にお会いしたことはなかったので、この時が初めてでした。



革新的な構造だけではなく、もちろん手仕上げによる最高の仕上げも隅々まで施されています。

これはスゴイ!と間違いなく思ったのですが、紹介が遅れてすみませんでした…


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