ブレゲ「トラディション」コレクション~250年の歴史に連なるブランドのアイコンの物語

 From : BREGUET (ブレゲ )


「トラディション」コレクション、ブレゲのアイコンの物語

2005年、ブレゲは「トラディション」コレクションの最初のモデルを発表しました。ブランドの豊かなヘリテージを表現するべく構想されたこのタイムピースは、文字盤側にプレート上へ配置されたムーブメント構造を露わにするという、革新的なデザインでした。機構そのものを美として提示するその比類なき美学と先見性により、「トラディション」は時計史の中でも独自の位置を占め、ブランドの起源と精神を体現する象徴的コレクションとして、ブレゲのアイデンティティを力強く体現し続けています。


コレクションのアイデンティティ
ブレゲの「トラディション」コレクションは、18世紀末にアブラアン-ルイ・ブレゲが考案した懐中時計、スースクリプションウォッチとモントレ・ア・タクト(触覚時計)を現代的に再解釈したものです。創業者が築いた礎に直接着想を得ながら、モダンかつ革新的に表現したコレクションです。オリジナルの精神に忠実でありながら、現代へと開かれたコレクションです。

そのアイデンティティの中心にあるのは、機械構造を露わにするという発想です。すなわち、トラディションでは、ムーブメントと時刻表示が一つの面に共存するという、きわめて独創的な構成が採用されています。通常であれば裏返して初めて目にする機構を文字盤側に配しながらも、視認性を一切損なうことなく、時計の構造美を余すところなく眺めることができます。そこには、作業台でムーブメントの奥深くへと視線を落とすウォッチメーカーの視点が再現されています。同時に、機械式時計の仕組みを直感的に理解させる教育的側面も備えています。
このアプローチは、中央の地板を基点に構築される独自の構造に結実しています。香箱、輪列、そしてテンプは、二世紀以上前に技術とデザインの面でも先駆者であったブレゲが構想した、対称構造に基づいて配置されています。今日ではそれが腕時計用のコンテンポラリーなキャリバーとして再構築され、ムーブメント全体を余すことなく堪能できます。作動する機械の純粋な美と、同時にオートオルロジュリーの基準に則って施された高度な仕上げを際立たせます。



そして、その発展の過程で、「トラディション」コレクションは、最もシンプルなモデルから高度な複雑機構を備えたモデルまで、さまざまな解釈によってさらに充実したものとなりました。そこには歴史、ムーブメントの構造、そして現代性との対話が中心に据えられています。仕上げ、視覚的なコントラスト、構成要素の大胆な開示によって、「トラディション」コレクションは単なる過去への回顧を超え、今なお進化し続ける“生きた継承”として存在しています。ブレゲの遺産が尽きることのない革新の源であり続けることを示しているのです。




歴史的ルーツ
アブラアン-ルイ・ブレゲの作品の最も重要な章のひとつ、スースクリプションウォッチについて詳しく見ていきましょう。フランス革命後に構想されたこの意欲的かつ簡潔な時計は、変化する社会と新たな時代の要請に応えようとするブレゲの意志を反映していました。彼の作品の中でも珍しい点として、このモデルについては、自らその意図、技術的選択、そして哲学を印刷物として詳述しています。そこでは顧客の視点に立ち、時計の本質と価値を丁寧に説明しました。その結果、1798年から1805年の間を中心に約700本が販売され、メゾン・ブレゲには新たな顧客層が惹きつけられることとなりました。



この創造の物語において、「モントレ・ア・タクト」は特別な位置を占めます。スースクリプションのキャリバーを基盤とし、当初は「スースクリプション・ア・タクト」とも呼ばれたこのモデルは、簡潔さ、視認性、合理的構造という基本原則を継承しています。さらに、外装に設けられた可動式の針によって触覚で時刻を読み取るという革新的な機構を導入し、視覚とは異なる体験を提示しました。一部のモデルでは、裏面に小型のサブダイヤルが配され、一本または二本の針が備えられていました。複数の読み取り方法を統合しながら機構そのものを露わにするこの独自の構成は、のちの「トラディション」に通じる美学と思想をすでに内包しています。2005年に誕生した現代の「トラディション」コレクションは、こうした歴史の延長線上に位置し、その精神を現代的解釈によって新たに提示しているのです。




「トラディション」コレクションの象徴であるパラシュート機構
「トラディション」を象徴する意匠のひとつが「パラシュート(耐衝撃機構)」です。コレクションを通じて繰り返し採用されるこの機構は、ひと目でそれと分かるアイコニックな存在であり、コレクションのアイデンティティを構成する重要な要素となっています。唯一、「トラディショントゥールビヨンフュゼ7047」のみがこの機構を備えていません。
パラシュートは、視覚的なシグネチャーであると同時に、技術的革新を体現する発明でもあります。これは初代ブレゲによる最も巧みな発明のひとつであり、衝撃から時計を守るために考案されました。当時、とりわけ落下時に大きなダメージを受けやすかったのが、極めて繊細なテンプの軸受(ピボット)でした。
1790年頃、ブレゲはきわめて合理的かつ簡潔な解決策を提示します。ピボットを円錐形に加工し、それを対応する小さな受け皿に収め、その上から薄い板バネで保持するという構造です。この弾性装置が衝撃を吸収し、調速機構を守ることで、時計の安定した作動を可能にしました。



その有効性を示す逸話はよく知られています。ブレゲは自らの発明を証明するため、顧客でもあったタレーランの前で時計を床に投げ落としたと伝えられています。時計は損傷することなく動き続けました。やがて彼はすべての自作時計にこの装置を搭載し、1806年の国民産業博覧会で完成形として正式に発表します。
「テンプの衝撃吸収装置」とも呼ばれるこのパラシュートは、現代のあらゆる耐衝撃機構の先駆けとなった機構です。発明から二世紀以上を経た今日においても、それは時計史における重要なマイルストーンであり、「トラディション」コレクションにおいては、メゾンの独創性と大胆さへのオマージュとして視覚的に表現されています。
パラシュートは、リューズによる巻き上げ機構と並び現代時計製造においても広く受け継がれているブレゲの発明のひとつなのです。


[インタビュー]
グレゴリー・キスリング(CEO)

――ブレゲのコレクションの中で、トラディションの時計はどのような位置を占めているのでしょうか?
『ブレゲの世界観において、「トラディション」コレクションは中心的な存在を担っています。創業者アブラアン-ルイ・ブレゲ初期の作品に由来する美学とムーブメント構造を前面に打ち出すことで、メゾンのヘリテージを極めて直接的に体現するコレクションです。それは、ブランドの創成期の精神と現代における時計表現とを結ぶ、力強い架け橋でもあります。もともと「クラシック」コレクションを補完する存在として構想された「トラディション」は、ムーブメントを観察し、その構造を理解し、機械式時計の本質に触れたいと願う愛好家に向けられていました。他の主要コレクションと並びながら、より没入感に富み、建築的アプローチで機構美を提示することで、メゾンの提案を豊かに広げています。私たちは、「トラディション」こそがブレゲを象徴するアイコンであると考えています。』

――「トラディション」と「クラシック」が他コレクションと一線を画す点はなんでしょう?
『これらのコレクションは、ブレゲにおいて特別な位置を占めています。なぜなら、それらは創業者ブレゲの作品世界を最も直接的に体現するコレクションだからです。「クラシック」は、ギヨシェ彫りの文字盤、ブレゲ針、コインエッジ装飾のケース、均整の取れたプロポーション、そして高度な複雑機構の技術といった、メゾンを象徴する美的コードを継承しています。そこには創業者の精神に忠実な、様式と技術の連続性が息づいています。
一方、「トラディション」は、この遺産をより構造的かつ建築的に表現します。「モントレ・ア・タクト」などのムーブメントを表に配した歴史的モデルに着想を得て、機構そのものを前面に押し出す構成を採用しています。「クラシック」が様式によってヘリテージを語るのに対し、「トラディション」は機構のアーキテクチャーそのものによってそれを体現しているのです。これに対し、「マリーン」や「タイプXX」といった他のコレクションは、ブレゲのDNAをより自由に解釈したラインといえます。メゾンの歴史を基盤としながらも、より現代的かつダイナミックな視点で展開されています。』

――ブレゲのいくつかのコレクションは刷新され現代化されていますが、「トラディション」コレクションも同様の予定がありますか?
『「トラディション」コレクションは、その本来のアイデンティティを尊重しながら、慎重かつ一貫性をもってして進化しています。ブレゲは、抜本的な変革よりも、技術的な改良、現代的な素材、そして洗練された美的調整といった、繊細で統制の取れた進化を重視しています。それは、このコレクションの独自性を形づくる歴史的DNAを守りながら、時代に即した表現へと昇華させるためのアプローチです。』




[インタビュー]
エマニュエル・ブレゲ(副社長・パトリモニー部門責任者)

――トラディションは、非常に独創的な外観を特徴としています。その起源について、さらに詳しく教えてください。
『その起源は、アブラアン-ルイ・ブレゲが手がけたスースクリプション・キャリバーです。彼はこのムーブメントを進化させ、ときに小型化させ触覚によって時刻を読み取ることができ、さらには確認用ダイヤルを備えるモデル「モントレ・ア・タクト」を生み出しました。歴史的な作品を開き、防塵蓋(キュヴェット)を開くと、そこにはきわめて独創的な構造が現れます。ムーブメントと確認用ダイヤルが同一面に集約され、機構と表示が一体となって配置された、当時としては予想外の構造です。機械と時刻表示がひとつの面に共存するこの構成は、いわばブレゲから受け継がれた“秘められた遺産”でしたが、長らく歴史の中に眠っていました。
そして2005年、故ニコラスG. ハイエックの主導のもと、その現代性があらためて見出されます。腕時計として再解釈するという選択がなされ、コンテンポラリーなキャリバーへと昇華されたことで、「トラディション」コレクションは誕生しました。また、時計愛好家が常にムーブメントを観察したいと願ってきたことも重要な点です。トラディションでは、機構が単に可視化されているだけでなく、視線が自然に向かう文字盤側に配置されています。過去においても、そして現代においても、この発想は驚くほどモダンであり続けているのです。』

――「トラディション」コレクションは、どのように伝統と革新を融合させているのでしょうか?
『2005年の発表当初、「トラディション」コレクションは、目を引く革新を追求することを目的としていたわけではありません。目指したのは、ブレゲを最も本質的なかたちで表現することでした。その狙いは明確でした。極めて現代的な腕時計でありながら、あたかも歴史的なムーブメントを眺めているかのような印象を生み出すこと。こうして耐震装置は、伝統的なパラシュートの意匠を再び纏うこととなったのです。メゾンの近代史において、歴史的キャリバーの美学をここまで直接的に踏襲したムーブメントは初めてのことでした。当時、時計市場にこれほど特異な構造を持つ時計は存在せず、比肩するものはありませんでした。当初は、時計史に深い関心を寄せる愛好家層を主な対象としていましたが、「トラディション」はやがて想定を超える幅広い支持を獲得します。文字盤側に展開された機構の演出、そしてひと目で全体を見渡せる構成は、純粋な時計愛好家のみならず多くの人々を魅了しました。』

――「トラディショントゥールビヨンフュゼ7047」は、他のモデルとは一線を画すものですか?
『実際、このモデルは、コレクションのアイデンティティを形づくってきた中央香箱構造から一部離れた設計を採用しています。しかしそれは、明確な意図のもとに選ばれたものです。年月を経るなかで、「トラディション」はブレゲの機構美を最も没入的に表現するラインとして確立されました。だからこそ、メゾンを象徴するコンプリケーションであるトゥールビヨンを組み込むことは自然な流れでした。愛好家がその精緻な動きを余すところなく観察できるようにするためです。中央香箱という従来の構成を離れたのは、トゥールビヨンの技術的、そして美的側面を最大限に引き立てるためにほかなりません。この進化もまた、トラディションの精神に忠実です。すなわち、機構を可視側に開示し、発明以来ブレゲを象徴してきた主要なシグネチャーを際立たせるという理念の延長線上にあるのです。』



「トラディション」コレクション
前衛的な美学がシグネチャーとなった「トラディション」コレクションは、その時代を超越した魅力で、今なお人々を驚かせ、魅了し続けています。ブレゲの最も純粋なルーツを糧とし、大胆さと高級時計製造の進歩を融合させ、伝統、革新、現代的なビジョンが融合したユニークな調和を体現しています。真のアイコンとして、「トラディション」はメゾンを象徴する最も代表的な表現のひとつとして揺るぎない存在感を放っています。






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