ブレゲ「エクスペリメンタル1」のマグネティック脱進機を「理解」する、機械停止と磁気衝撃を組み合わせたコンスタントフォース
By : CC Fanブレゲ250周年の集大成として発表された新コレクション「エクスペリメンタル1」。

その核心となる高振動トゥールビヨンとそれに組み合わされたコンスタントフォースを実現するというマグネット脱進機、ふんわり理解の結論をXに書きましたが、改めてパワポで纏めたいと思います
固定磁石により磁場は一定、磁束密度は透磁率(ほぼエアギャップの距離)に比例する
— CCFan (Watch Media Online) (@CCFan_WMO) December 1, 2025
エアギャップが大きい所(抵抗が小さい)から侵入、ガンギが回転してエアギャップが小さくなると、磁束密度が増加する形でエネルギー蓄積、停止解除で弾き出す
エネルギー蓄積量はギャップ差で決まるので、コンスタント
この結論は少し間違っていて、磁束の強度はエアギャップではなく磁化した面の面積で決まり、磁束が弱い所から進入してガンギ回転で磁束の強さというポテンシャルとしてエネルギーを蓄積、停止解除でそのポテンシャルで弾き出す、停止は機械的、という理解はあっていました。

改めて見ていきましょう。
トゥールビヨンケージの挙動を確認するためにまずは動画を見ます。
トゥールビヨンは文字盤側から見て時計回りに回っていることが分かります。

トゥールビヨンの速度は60秒1回転のまま、20振動(10Hg)の高振動を実現するためにケージ内に加速車を設けています。
加速車が1枚入るためガンギ(相当)が逆回転になっている?と疑っていたのですが、固定4番車を内歯車にすることによって仮想的な4番車の回転方向を逆にして全体の回転の辻褄を合わせているようです。

内歯車と噛みあっている様子が分かります、またケージセンターのピニオンから駆動するのではなくケージに切った外周の歯から駆動することで重なりを減らしていることも分かります。

脱進を行うガンギ相当の脱進車を見ていきましょう、従来は機械的な接触で行っていたガンギを停止させる停止作用とアンクル経由で共振器にエネルギーを伝える衝撃作用のうち、衝撃を磁気による動作に変更、直接力を伝える代わりに一旦磁気的なエネルギーに変換することで香箱トルクの変動を受けないコンスタントフォース動作も実現しました。
構造としては停止を司る機械停止車(従来のガンギ車に相当)を上下の磁気回路プレートで挟んだものとなっており、磁気回路プレートのアンクルに向かい合う面を磁化(永久磁石にしている)しています。
機械的に停止させる機械停止車は磁気に悪影響を与えてはいけないと考えられ、おそらく磁気の影響を受けない非磁性体(色から推定すると金合金?)で作られており、これは加速車も同じ素材と予想されます。
逆に磁気回路プレート及び中心軸は磁気回路として磁束をよく通して外側に漏らさないために磁性体で作られている、と予想されます。

アンクルと磁気回路プレートの磁石は反発するように磁化されており、これによってアンクル先端は磁気回路プレートの隙間(ギャップ)から弾き出される方向に加速される、と考えられますが、逆側が浸入するときに同じだけ抵抗を受けるはずなので結局エネルギーの和はゼロになってしまうのではないか?と考えていました。

これに関しては磁気回路の形を工夫することでアンクルが進入する機械停止車の歯の中間位置では磁束が弱く反発が小さくなり、徐々に面積を増加させて機械的に停止・磁気で弾き出す衝撃面で磁束が最大になるように設計することで衝撃で伝わるエネルギーが進入に必要なエネルギーより大きいという関係が成り立ち、この不足分はガンギの回転によってより磁束が強い部分にアンクルが進入する、という形で上流の香箱から供給されます。
アンクル進入箇所では進入前はアンクル歯を押し出す方向に磁力が働き、侵入後は引き込む方向に働くので機械式脱進機のドローに相当する動作も磁気で行っていることが分かります。
脱進車の停止解除時に弾き出す力はアンクル先端の磁石と磁束の大きさだけで決まり、香箱のトルクは直接関与しません、これは(逆側)停止解除→アンクル進入→磁束が強くなる方向に脱進車が回転→再度停止のサイクルでガンギの回転エネルギーを磁束のポテンシャルエネルギーに変換し、衝撃の大きさはポテンシャルエネルギーだけで決まり、余った分は「捨てる」コンスタントフォースといえます。
香箱トルクが小さくなると磁束の反発に打ち勝って脱進車を回転させることができなくなります。
脱進機と別建てのコンスタントフォースであれば「直結」状態で動作しますが、この機構であればそのまま停止する巻き止めのような動きになりそうです。
トゥールビヨン内部で定力化しているので(トルクが充分あれば)トゥールビヨン自体のトルクロスの問題も解決していることになります。
ブレゲ・シールで日差±1秒を保証する、というのもこの機構に対する自信の表れではないでしょうか。
試みとして非常に興味深く、「答え合わせ」もしてみたいところです…
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