IKEPOD - 時計の概念を覆したブランド

 By : NOBLE STYLING GALLERY

当店Noble Styling Galleryは、ウォッチメーカー、デザイナー、コンセプターなど「作り手の見える時計」をテーマに個性あふれる独立系ハイエンド ウォッチブランドを一堂に介した、新しいスタイルのウォッチギャラリーとして、2013年12月3日に恵比寿のウェスティンホテル東京の1Fにオープン。そして、昨日4周年を迎えました。



これもひとえにお客様方の温かいご支援とご協力があったからこそと、心より感謝致しております。まだまだ至らないことばかりで恐縮ですが、これを契機に致しましてなお一層努力し、より良いショップにしていきたいと精一杯頑張る所存でございます。どうぞ末永くご指導賜わりますようお願い申し上げます。

さて今回は、4周年ということで、当店の母体である「株式会社 ノーブルスタイリング」のルーツでもある「IKEPOD(アイクポッド)」というブランドの激動の歴史をご紹介致します。本日はその第一部です。

IKEPODは、1994年、2人の男によってスイスに設立された時計メーカーです。



ひとりは、当時高級インテリアの輸入販売を手がけていた起業家ドイツ系スイス人であるOliver Ike(オリバー・アイク - 右)、そしてもう一人が世界的インダストリアル・デザイナーであるMarc Newson(マーク・ニューソン - 左)。
この二人がフランクフルトの国際見本市にて、運命の出会いを果たし生まれたのが、このブランド。Oilver IkeのIKEと、当時マーク・ニューソンが手がけた作品に冠していた「POD」を組み合わせてIKEPODと命名されました。



1963年、オーストラリア生まれのマーク・ニューソンは、1987年から1991年までは、東京を拠点にデザイン活動を始め、1991年にパリにデザインスタジオを開設後、フロス社の照明器具や、カッペリーニ社、R&B社などの有名ブランドからのオファーを受け、デザインを担当。一躍有名デザイナーの仲間入りをしました。





1997年より拠点をロンドンに移し、自身の「マーク・ニューソン社」を設立。「腕時計はもちろん、椅子(カッペリーニ社)、自転車(バイオメガ社)、自動車(フォード社)などの工業製品、レストラン、ブティック、シドニー空港のファーストクラス・ラウンジ、ジェット機の内装にいたるまで、幅広い創作活動を展開しており、TIME誌選出の「世界でもっとも影響力のある100人」のひとりにも選出されています。また彼は、2006年のDesign Miamiで「Designer of the year」を受賞、イギリスでは「Royal Designer for Industry」、2008年のLondon Design Festivalでは「London Design Medal」など数多くのデザイン関係の賞を受賞するとともに、ロンドン、パリ、ニューヨークなどの主要な美術館や、ギャラリーで個展を開催し、作品のいくつかは、これらの美術館に恒久展示されています。



さて、「デザインの魔術師」マーク・ニューソンが手がけたアイクポッドの腕時計、90年代半ばに発表されたコレクションは、いずれも当時の腕時計の常識を覆すものでした。発表当時「こんな腕時計なんか…」という声もありましたが、それを覆す緻密な計算がそこにはあったのです。

まずケースの大きさですが、今でこそ45mm以上でもなんら違和感はありませんが、その当時の44mm, 46mmというのは並外れた大きさでした。



しかもその形状は、ガラスだけではなく、フラットで、ネジあるいは、スクリュー式で固定するのが通常であったケースバックまでもが丸みを帯びた独創的なラウンド型、しかもネジ類が一切使用されていません。




腕時計に使用される通常のラウンドケースより、はるかに多い製作工程を要するのはもちろんですが、この大型ケースに隠された秘密はもうひとつ、装着感の向上。大きな時計で裏ブタがフラットだった場合、腕に装着するとはみ出したりしてうまく腕にフィットしない場合があります。しかしこの丸みを帯びた裏ブタのおかげで、その中心部が手首の2本の骨の間に乗る、つまり手首に吸い付くようなフィット感を実現することが可能になりました。





またベルトは、マーク・ニューソンのフェイバリット・カラー、オレンジ、ライムグリーンなどのカラフルなラバー製。そして、バックルの代わりを果たすラバーベルトの12時側に取り付けられたパーツに特徴があります。

モデル名についても独特なものがあります。通常、商品名を決定するときには、機能名などをそのまま使うことが多いのですが、各商品にはちゃんとしたペットネームがあるべきとするOliver Ikeは、インターネットで絶滅寸前の動物の名前を検索し、オーストラリアに生息する幻の鳥の名前「Hemipode(ヘミポッド)」、「Megapode(メガポッド)」などを、商品名として採用しました。

これは当時のベストセラー、Wallpaper誌とのコラボモデルHemipode Wallpaper Chronograph。399本の限定モデルでした。



で、このHemipodeというのは、こんな姿をした鳥の名前



こちらは、Marc Newsonのフェイバリット・モデルMegapode(メガポッド)


それは、こんな姿をした鳥





もちろん搭載されたムーブメントもアイクポッド社独自のカスタマイズがなされたスイス製自動巻き。一見おもちゃのように見えたこの腕時計ブランドは、瞬く間に世界中の時計愛好家のハートを捕らえ、彼らに認められる一流ブランドの仲間入りを果たしたのでした。



これが当時、BaselからDelemont(ドレモン)経由でローカル線に乗り換えて少し行ったところ、Bassecourt(バスクール)という小さな町にあったIKEPODの工房です。
実はこれ、非常に由緒ある建物で、かつて初めて角型の防水ケースを作ったメーカーであるNouvelle Piqueret(ヌーベル・ピケレ)、その後はValentini(ヴァレンティーニ)となるケース工房だったところです。

業績も順調に伸びていき、このようなコンセプト什器を設置したショップも増えていきました。





日本でも、2002年秋に「IKEPOD Japan株式会社」が設立され、販売数も順調に伸びていきました。

そしてIKEPOD Japanとしての一大事業が、2002年の「時計Begin冬号」の特別付録として、新製品Hemipode Weekplanner(ウィークプランナー)プロモーションのための、Marc Newsonデザインによる「ウィークリー・カレンダー」を制作したことでした。


Hemipode Weekplanner

今となっては「幻」のウィークリー・カレンダーの中身をちらっと



しかしながら、2004年、創業者の一人であるOliver Ikeが社を離れることになります。
これを機に、この将来有望なブランドを巡って壮絶な争奪戦が始まるのです。
それは、第二部にて。