IKEPODがスイス メイドで帰還~クラーソン・コイヴィスト・ルーネデザインの「SKYPOD」を発表

 By : CC Fan
 
2019年にリスタートした「伝説」のブランド、アイクポッド(IKEPOD)。
それから早3年、今回「スイスメイド」の基準を満たしたSKYPODが限定で登場、そのデザインを手がけたスウェーデンの建築家集団 クラーソン・コイヴィスト・ルーネ(Claesson Koivisto Rune)が来日し、実機を見ながらお話を伺う機会を得ることができましたのでレポートします。



今回、「スイスメイド」のラベルが復活した背景には「初代」アイクポッドで展開していたMEGAPOD(向かって右)の未使用ムーブメント(ETA7750とラ・ジュー・ペレのGMTモジュール)が100個見つかったことが始まりとなります。
このムーブメントを2008年から2012年までアイクポッドに在籍していた時計師の手でリフィニッシュし、新たなるデザインをまとった文字盤とケースに収めたSKYPOD(向かって右)が登場しました。


【Claesson Koivisto Rune studio】
今回のSKYPODの文字盤をデザインしたスウェーデンのデザインチーム。1995年のストックホルムで建築とデザインの複合的スタジオを設立。東京のK5ホテルや京都のSfera Building等の有名な建造物のデザインをはじめイタリアを代表するブランド(Arflex、Fontana Arte等)の家具、照明デザインなどを手掛けている。


クラーソン・コイヴィスト・ルーネのお三方、建築デザインが専門で、このインタビューを行ったHOTEL K5のリノベーションも担当した!とのこと、建築の仕事で50回以上来日し、今回は10月22日~28日の間に行われた展示会「AIMAI ~ Expressions of Vagueness / あいまいさの表現~」にも参加するためだそうです。

今回のSKYPODは初めての時計のデザインの仕事だそうです。



マーク・ニューソンという工業デザインの「超ビックネーム」のデザインをリデザインする、という仕事に困難や恐れは感じなかったか?という質問に対し、もちろんとても困難な仕事だと思った、しかし困難でない仕事などないし、難しければ難しいほど挑戦のし甲斐があり結果的にとても良いものができたと考えている、と語ります。



(マークのデザインは)とてもいいとは思っているし、彼のデザインを否定するつもりはない、しかしMEGAPODのデザインはどうしても冗長に感じてしまった、と語ります。
再デザインはスタジオのデザイン哲学として最も大切にしている、「調和」を考え、もっと彼らにとって良いデザインができるはずだ、と言うところからスタートします。

冗長と感じてしまう原因を考えたとき、サブダイヤル(クロノ時分積算計・永久秒針・GMT24時間表示)と外周とクロノ秒積算計が「重なって」おり、二つのスケールが重なって印刷されていること、外周の航空用計算尺やクロノ秒積算計が細かいバースケールで単色でびっしりと印刷されているためどうしても過大になってしまっていると結論付けました。

これに対し、サブダイヤルと外周のクロノ秒積算計が重ならないようにクロノ秒積算計の方を外周に出し、針の長さも再調整しました。
各スケールのインデックスもドットにし、かつ密度を下げる(秒積算計は1秒ごと、それ以外も最小限の解像度)に変更してバランスを取りました。
バーと違ってドットだと5の倍数などの「キリ」が良い位置がぱっと見ではわかりにくくなりますが、それは印刷の色を変えることで対処し、フォントの配置も「調和」を常に念頭に全体としてのバランスが取れるような配置で細部を調整していきました。



MEGAPODでは、やや唐突な感じがあった6時位置の日付表示も7時位置に移動させ、開口部を丸形にすることでより「調和」させています。
7時位置と言うのは、左腕につけて手首を返して時刻を見たときに最も見やすい位置だから、とのこと。

これらの変更により、ドットインデックスが濃色文字盤上に散らばる様子がまるで夜空の様だ、と感じたことから「空」と言う意味を持つSKYPODと言う名前が決まりました。

ケースはオリジナルのMEGAPOD同様チタニウム合金ですが、新たなる合金を採用することでよりグレーが濃く、文字盤の色合いと調和したものになったそうです。


47mmのMEGAPODに対し…


ケース構造を工夫することで46mmにしたSKYPOD。
数字上は1mmの差ですが、文字盤の色やデザインによって「凝縮感」が生まれるためにより小さく見えます。
46mmでも大きい、と感じるかもしれませんがラグレスデザインでケースから直接ベルトが生えている構造のため、通常のラグ付きケースだと40‐42mmぐらいの感覚だと思います。
これを体験すると、ラグは意外とクセモノ、と感じるかもしれません。

マーク・ニューソンのデザインとは全く別方向ではありますが、これはこれで「全体」が調和しており、いつも通りの言い方になりますが、彼らの「俺のやり方」と感じました。
充分にオリジナルに比肩する完成度と言えるのではないでしょうか。



「初代」はデザイナーのためのデザイン(極論)、でメンテナンスが極めて困難とされていましたが、ベゼル部分に分割面が設けられてアクセスしやすくなっています。
これはこれでデザインのアクセントとして面白い、と感じました。



ベルトに関しては余った部分を内側に格納する「初代」の構造はマーク・ニューソンが特許をAppleに持ち込み、Apple Watchの「アイコン」となってしまったため、遊革で押さえる「ニューピンバックル」構造になっています。
これについては、「取り付け部分のサイズは一緒なので初代を持ってたらそれに変えても良いし、初代のラバーがダメになったら、これに変えて使って欲しい。」とのこと。



MEGAPODと同じく、一部だけ開口したケースバック、1mmサイズを削るためにローター側にも工夫がされ、全体のクリアランスを最適化しているそうです。
この凸になっているケースはぱっと見では装着感が?と思われるかもしれませんが、ベルトの構造と相まって手首の関節の凹みに上手く嵌ってフラットな裏蓋よりも装着感が良い、と言うのはマーク・ニューソンの先見性を表す構造かも知れません(Apple Watchで同じ構造を採用)。

1仕様25本のうちの1本であることを表す「1OF25」の刻印があり、その横には特殊なネジ頭を持つ弄り防止ネジが設けられています。
これは、「初代」アイクポッドの課題だった、「巻き芯を抜くのがとにかく大変」という問題を解決するための構造で、ここを開けるだけでオシドリにアクセスして巻き芯を抜くことができます(初代は針と文字盤を外して文字盤側からアプローチ)。
新生アイクポッドの通常デザインでは通常のグラスバックになっており、そこまで凸を活かした構造ではなかったので、よりオリジナルに近い、と言えるかもしれません。

スイスメイドの復活、という事で新生アイクポッドのレギュラーピースより高価ではありますが、この価格は今回発見されたオールドストックムーブメントありきで、現在ムーブメントを作ったらさらに高くなる、という事で「サービス価格」でもあるとのこと。

個人的には先にも述べたように、「俺のやり方」を確立していて好みでした。

最後に公式の仕様を掲載いたします。






SWISS MADE is BACK~SKYPOD




【仕様】
SKYPOD

IPSK01RPLB


IPSK02RPLB

SKU数 :2 SKU
限定数 :各25本
価格 :1,350,000円+税(予価)

ケースサイズ :直径46mm
ストラップ幅 :24mm
防水性 :5気圧防水
発売時期 :2022年12月

ケース :チタニウム
風防 :ドームサファイアガラス
ストラップ :ラバー(ニューピンバックル)
ムーヴメント :8103LPJ(ETA7750+La Joux-Perret GMT)
自動巻きクロノグラフ+GMT機構
組立て :スイス製



関連WebSite
IKEPOD
https://ikepod.com/

大沢商会 アイクポッド
http://www.josawa-watch.com/ikepod.html



[クラーソン・コイヴィスト・ルーネ スタジオ(CKRスタジオ)]
SKIPODの文字盤デザインを担当したのは、ストックホルムにある98のデザインアワードを受賞しているCKRスタジオ(クラーソン・コイヴィスト・ルーネ スタジオ)です。彼らが第1世代と第2世代のIkepodを所有していたことは、この時計デザインするうえで非常に役に立ちました。つまりこのユニークな時計の事を十分に理解していたからです。しかしながら、彼らは独自のビジョンを持ち、あまり妥協をしません….自分たちのアイデアを貫くのです。
象徴的なデザインを持つIkepod の時計に取り組むことは容易ではありませんでしたが、ポイントを押さえ、全くモダンな、男性らしいデザインを提案してくれました。彼らは語ります、「自分たちのデザインを理解し、時計に情熱を注いでいます」。
Mårten Claesson、Eero Koivisto、Ola Rune は、1995 年にストックホルムで建築とデザインの複合的な事務所を始めました。プンタ・デル・エステの山頂のヴィラから、東京のホテル K5 (AHED Awardsによるアジアのベスト ホテル コンバージョン 2021)、テキサス州マーファの Inde /Jacobs アートギャラリービル、京都のすでに伝説的なカルチャーハウスであるスフェラビル文化会館など …文字通り数多くのプロジェクトを経て、現在に至っています。建築以外ではイタリアを代表するデザインブランド(Arflex、Boffi、C appellini、Fontana Arte、Paola Lenti)の家具や照明。その他電気製品、ジュエリーなど、さまざまな分野で活躍する彼らは、今回初めて時計のデザインを手掛けたのでした。
「何年にもわたって、私たちは時計のデザインについて継続的な議論を行ってきました。自分たちがウォッチコレクターであるため、Ikepodのコレクションに別のアイテムが追加されるたびに、そのあらゆる側面と細部を検証します。そのため、新しいIkepod Skypod を手掛ける際には、デザインへの努力を惜しみませんでした。初めての時計デザインかもしれませんが、実は30年近く研究と準備を重ねてきたのです。」
新しいSkypodは、Marc NewsonがIkepodのために最初にデザインしたものを引き継いでいます。フェイスは、主に航空関連のコンプリケーションを維持しながら、抽象化された星空のアイデアを取り入れています。「文字盤デザインの課題は、読みやすさと全体的なグラフィックの印象を同時に高めることです。それは、デザインコンセプトか科学的手段かの選択ではありません。その両方を実現する必要があるのです。形と機能を両立させることは家を設計するのと大差ありません。建築では通常 1:20 で作業しており、時計の場合は 20:1 で作業しなければなりませんでした。このスケールでは、マイクロメートル単位のシフトがすべての違いを生み出してしますのです。」
Claesson Koivisto Rune は、ブルーノ・マトソン賞、10 のアメリカン・グッド・デザイン賞、Designpreis Deutschland (金と銀) など、一連の国際的な賞を受賞しており、名誉あるレッド・ドット・デザイン賞を 5個の異なる分野で保持している唯一の企業です。
2020年、スウェーデン国王カール16世グスタフは、彼らの建築における傑出した芸術的功績に対して、プリンス エウシェン メダル(Prince Eugen Medal)を授与しました。

彼らの代表的な受賞例:
インテリア デザイナー オブ ザ イヤー2021 – Elle Decor Japan
デザイナー オブ ザ イヤー 2014 – Elle Decor Italia
デザイナー オブ ザ イヤー 2011 – Elle Decor Italia
デザイナー オブ ザ イヤー 2011 – Elle Decor Sweden
https://www.claessonkoivistorune.se/
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