SIHH2018 パネライ ロ シェンツィアート ルミノール1950 トゥールビヨン GMTチタニオ

 By : CC Fan
自社ムーブメントや新技術の開発にも熱心なパネライ、去年のSIHHではハイテク素材を使うことで50年間メンテフリーを謳った驚くべきLAD-ID™を発表しました。
今年も新技術の開発に余念がなく、レーザーを使った3Dプリンティング技術を使い、金属ケースながら軽量化を実現したロ シェンツィアート(LO SCIENZIATO) ルミノール1950 トゥールビヨン GMTチタニオ(LUMINOR 1950 TOURBILLON GMT TITANIO)を発表しました。

腕時計の実用性を考えた場合、”軽い”というのは重要なアドバンテージです。
そのために密度が低くて頑丈なハイテク樹脂素材をはじめとした新素材を各社開発していますが、今回のパネライのアプローチは製造方法を変えることで金属の可能性を広げました。



用いられた技術は直接金属レーザー焼結法(DMLS:Direct Metal Laser Sintering)という方法です。
これは粉末状の金属を融点より低い温度で加熱すると固まる焼結という現象を用いています。
通常の粉末冶金は型に入れて焼結させることが多いですが、DMLSはレーザーを使って局所的に焼結することを繰り返すことで直接形状を形成します。
テーブル上に均一に粉末金属を敷き詰める→レーザーで層形状を生成→テーブルを沈めて次の層へという作業をを繰り返すことで0.02mmずつ層を形成し、最終的な形状をダイレクトに生成します。

この方法のメリットはまず、3Dデータとして作成したソリッド形状からダイレクトに生産することができ、多軸加工用の切削パスデータを作らなくてもよく、まさに3Dデータそのままの形状をつくることができるということがあげられます。
また、動画中でも示されているように自由に中空形状を作ることができ、通常の切削加工で不可能な閉じた中空も自由に作ることができます。
ただ、動画はあくまでイメージで実際の場合は未硬化の金属粉が中空部分に残らないようある種の”中子”を使い、加工後に除去するとのことでした。
よく見ると、リューズガード取り付け部の根本に中空部分の抜き?と思しき形状が見えます。

この技法で作られたケースは製造方法が違うだけで素材は金属なので他の金属ケースと同様に磨いて仕上げることもでき、実際に伺ったところ、DMLSで成形しただけではなく、他の金属ケースと同様の仕上げ工程を経て完成とするそうです。





組み合わされるムーブメントも軽量を意識したP.2005/Tです。
チタン製の地板とブリッジを持ち、さらにスケルトナイズドすることで軽量に仕上げています。
トゥールビヨンは一般的なテンワの軸とトゥールビヨン軸が同じ軸ではなく、直交しているパネライ独自のトゥールビヨンです。
軸が重ならないため、通常のトゥールビヨンよりも部品レイアウトに余裕があり、特にアンクルとガンギ車は通常のスイスレバーと同じレイアウトなので信頼性も高いでしょう。
また、軸が垂直なおかげで姿勢に対する補正効果はより高められていると考えられます。
回転方向的に厚みが必要になりますが、ムーブメント自体が厚いため特に問題になりません。



実機を持たせていただくと“ケースがチタンでこのサイズならこれぐらい”というイメージよりはるかに軽く、イメージとの乖離に驚きが隠せません。
防水性と相まって、日常使いにも十分な軽快さです。

製法を変えることでチタンの新しい可能性を見せてくれたパネライ。
金属でもまだまだやるべきことは残されていると強く感じました。

次はアストロノミカルコンプリケーション、L'ASTRONOMOをご紹介します。

関連 Web Site

オフィチーネ パネライ
http://www.panerai.com/ja/home.html