バーゼルワールド2019 シリル・ブリヴェ-ノド ユニークなリブレ・エキセントリック脱進機を持ったエセントリシティ
By : CC Fan2019年5月31日追記:時間表示について補足しました。
バーゼルワールド2019、独立時計師協会(Académie Horlogère Des Créateurs Indépendants - AHCI、通称アカデミー)のブースの"個人的イチオシ"、シリル・ブリヴェ-ノド(Cyril Brivet-Naudot)氏の作品を紹介します。
ライフワークとなりつつある"デテント脱進機の繋がり"です…
氏は、Manibus Factum(ラテン語で"手作り")というスローガンを掲げ、CNC(コンピュータ数値制御)を使用しないNo-CNCという体制で、伝統的な時計製造の技法を引き継いだ技法を用いた作品作りを行っています。
作品は同じものを作りたくない、むしろオーナーと活発に意見交換をして毎回新しいユニークピースに挑戦したいというスタンスで、"同じ"作品であっても部品はそれぞれの個体に合わせて調整され、基本的に互換性がない工芸的な作り方としています。
今回、クドケと同じく候補生から準メンバーに昇格とのこと、おめでとうございます。
最新作は垂直クラッチを備えたテーブルクロックサイズのモノプッシャークロノグラフ、ヴァーティカリィ モノプッシュ クロノグラフ(Verticality monopush chronograph)、一見伝統的な水平クラッチに見えるものの実は…という作品です。
9時位置のサブダイヤルが時分針、6時位置が60秒積算計、3時位置が45分積算計です。
12時位置のコラムホイールですべてのレバーが制御され、秒積算計直下にある垂直クラッチによって動力の接続・切断が行われて動作します。
クロノ機構を可視化し、逆に通常輪列はすべて隠すことでクロノグラフの動きをのみを楽しめます。
もう一つの作品はエセントリシティ(Eccentricity)という腕時計。
まずは文字盤側から。
大型のテンワと同径のサテライト表示のレギュレーターディスプレイ。
レギュレーターは大きな円が分針に相当し1時間で1周、その上に載っている小さな円が時針に相当し、分針と一緒に回転しながら小さな針は12時間で一周します…というのは言葉では説明しづらいので動画で。
なんとなくの動作イメージは伝わりますでしょうか…?
追記
大きなサークルで表示される分は連続的に動いていますが、小さいサークルで表示される時間は55分から60分の間に1目盛り進んでいます。
つまり、これは針を使ったジャンピングアワー表示ということになります。
分針ダイヤルの回転に伴って時間表示が回転するので読みやすくする工夫でしょう…
テンワは見えているのに脱進機が見えないことからもわかるように、天真が地板を貫通しており、脱進機一式はムーブメント側にあります。
何と、鍵巻き、鍵合わせというシステムに加え、エセントリシティという名前の源と考えられるリブレ・エキセントリック(libre excentrique)脱進機が可視化されています。
無理やり訳すと自由振動偏心脱進機になりますでしょうか、デテントと同じくガンギ車が直接テンワに衝撃を与えるダイレクトインパルス脱進機ですが、名前があらわすように偏心をうまく使うことでデテントよりも安全になっています。
同じくデテントの発展形であるロビン(Robin)脱進機をさらに発展させたものとのこと。
こちらが拡大模型。
デテントでは1石だったガンギ停止用の石が2石になり、アンクルのように配置されているのが特徴です。
ガンギ車と振り石、レバー先端のスプリング。
レバー先端のスプリングは天真の三日月型のプレートからタイミングだけを取り出し、アンクルを左右に振ります。
通常のスイスレバーのアンクルと違い、スプリングのためレバー側からテンワを駆動することはできず、あくまでタイミングだけを取り出すだけの機能を担います。
これによって石が交互に外れ、それによりガンギ車が回転、テンワの回転とガンギの回転が向かって同方向の時だけ振り石をガンギの歯が押すことでインパルスを与えます。
2つある石を交互に外すため、デテントと違い、石が次の停止に間に合わず幾何学的にすっぽ抜けることがなく、またレバーは三日月形のプレートがスプリングを通すタイミングでしか動くことができないため衝撃によって停止が解除されてしまうこともありません。
レバーは2つの偏心した位置をとるため、これがエキセントリック(偏心)の名前の由来だと考えられます。
アンクルとカンターウェイト。
土手ピンで規制された可動範囲の中では常にどちらかの石がガンギ車の軌道内に入るため、幾何学的にすっぽ抜けることはありません。
文章だけだとわかりづらいのでこちらも動画を…
レバーとアンクルが交互に振られ、石が交互に解除されているのがわかりますでしょうか?
スプリングを跳ね飛ばしているだけの時とガンギが振り石を叩いている時で音が違い、特徴的なチクタク音になっていることもわかります。
リブレ・エキセントリック・エスケープメントの解説パンフレットとエセントリシティのパンフレット。
ユニークな世界観を持つシリル氏、今後の活躍にも期待します!
関連Web Site
Cyril Brivet-Naudot Manibus Factum
http://brivet-naudot.com/index.php/en/home/
バーゼルワールド2019、独立時計師協会(Académie Horlogère Des Créateurs Indépendants - AHCI、通称アカデミー)のブースの"個人的イチオシ"、シリル・ブリヴェ-ノド(Cyril Brivet-Naudot)氏の作品を紹介します。
ライフワークとなりつつある"デテント脱進機の繋がり"です…
氏は、Manibus Factum(ラテン語で"手作り")というスローガンを掲げ、CNC(コンピュータ数値制御)を使用しないNo-CNCという体制で、伝統的な時計製造の技法を引き継いだ技法を用いた作品作りを行っています。
作品は同じものを作りたくない、むしろオーナーと活発に意見交換をして毎回新しいユニークピースに挑戦したいというスタンスで、"同じ"作品であっても部品はそれぞれの個体に合わせて調整され、基本的に互換性がない工芸的な作り方としています。
今回、クドケと同じく候補生から準メンバーに昇格とのこと、おめでとうございます。
最新作は垂直クラッチを備えたテーブルクロックサイズのモノプッシャークロノグラフ、ヴァーティカリィ モノプッシュ クロノグラフ(Verticality monopush chronograph)、一見伝統的な水平クラッチに見えるものの実は…という作品です。
9時位置のサブダイヤルが時分針、6時位置が60秒積算計、3時位置が45分積算計です。
12時位置のコラムホイールですべてのレバーが制御され、秒積算計直下にある垂直クラッチによって動力の接続・切断が行われて動作します。
クロノ機構を可視化し、逆に通常輪列はすべて隠すことでクロノグラフの動きをのみを楽しめます。
もう一つの作品はエセントリシティ(Eccentricity)という腕時計。
まずは文字盤側から。
大型のテンワと同径のサテライト表示のレギュレーターディスプレイ。
レギュレーターは大きな円が分針に相当し1時間で1周、その上に載っている小さな円が時針に相当し、分針と一緒に回転しながら小さな針は12時間で一周します…というのは言葉では説明しづらいので動画で。
なんとなくの動作イメージは伝わりますでしょうか…?
追記
大きなサークルで表示される分は連続的に動いていますが、小さいサークルで表示される時間は55分から60分の間に1目盛り進んでいます。
つまり、これは針を使ったジャンピングアワー表示ということになります。
分針ダイヤルの回転に伴って時間表示が回転するので読みやすくする工夫でしょう…
テンワは見えているのに脱進機が見えないことからもわかるように、天真が地板を貫通しており、脱進機一式はムーブメント側にあります。
何と、鍵巻き、鍵合わせというシステムに加え、エセントリシティという名前の源と考えられるリブレ・エキセントリック(libre excentrique)脱進機が可視化されています。
無理やり訳すと自由振動偏心脱進機になりますでしょうか、デテントと同じくガンギ車が直接テンワに衝撃を与えるダイレクトインパルス脱進機ですが、名前があらわすように偏心をうまく使うことでデテントよりも安全になっています。
同じくデテントの発展形であるロビン(Robin)脱進機をさらに発展させたものとのこと。
こちらが拡大模型。
デテントでは1石だったガンギ停止用の石が2石になり、アンクルのように配置されているのが特徴です。
ガンギ車と振り石、レバー先端のスプリング。
レバー先端のスプリングは天真の三日月型のプレートからタイミングだけを取り出し、アンクルを左右に振ります。
通常のスイスレバーのアンクルと違い、スプリングのためレバー側からテンワを駆動することはできず、あくまでタイミングだけを取り出すだけの機能を担います。
これによって石が交互に外れ、それによりガンギ車が回転、テンワの回転とガンギの回転が向かって同方向の時だけ振り石をガンギの歯が押すことでインパルスを与えます。
2つある石を交互に外すため、デテントと違い、石が次の停止に間に合わず幾何学的にすっぽ抜けることがなく、またレバーは三日月形のプレートがスプリングを通すタイミングでしか動くことができないため衝撃によって停止が解除されてしまうこともありません。
レバーは2つの偏心した位置をとるため、これがエキセントリック(偏心)の名前の由来だと考えられます。
アンクルとカンターウェイト。
土手ピンで規制された可動範囲の中では常にどちらかの石がガンギ車の軌道内に入るため、幾何学的にすっぽ抜けることはありません。
文章だけだとわかりづらいのでこちらも動画を…
レバーとアンクルが交互に振られ、石が交互に解除されているのがわかりますでしょうか?
スプリングを跳ね飛ばしているだけの時とガンギが振り石を叩いている時で音が違い、特徴的なチクタク音になっていることもわかります。
リブレ・エキセントリック・エスケープメントの解説パンフレットとエセントリシティのパンフレット。
ユニークな世界観を持つシリル氏、今後の活躍にも期待します!
関連Web Site
Cyril Brivet-Naudot Manibus Factum
http://brivet-naudot.com/index.php/en/home/
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