アーミン・シュトローム グラヴィティ・イコール・フォースを日本橋三越で日本初披露 ユニークな自動巻きと巻止めモーターバレルを組み合わせたメカニズム

 By : CC Fan

久しぶりに創業者サージュ・ミシェルが来日して講演した三越のアーミン・シュトローム(Armin Strom)イベント、いろいろ大変な時期ではありましたが、予定通り行われ、新作グラヴィティ・イコール・フォース(Gravity Equal Force)やミニットリピーターレゾナンスまで含めた”大物”も披露されました。



創業者のサージュ・ミシェル(左)とマーケティングディレクターのエマニュエル・ビトン(右)、サージュからはアーミンシュトロームの歴史とマニュファクチュール化、エマニュエルからは新しいシステム78シリーズの初作となるグラヴィティ・イコール・フォースが解説されました。

歴史マニュファクチュール化については、繰り返しになってしまうので過去の記事をご参照ください。

SYSTEM78シリーズは”アーミン・シュトロームらしい”作品をより競争力のある価格で実現するシリーズとされており、グラヴィティ・イコール・フォースはその第1作とされています。
気になっていた78って何?というのはサージュと共同創業者で技術担当のクロード・グライスラーが生まれた年の下2桁とのこと。



あらかわいい。
サージュとクロードは同じ学校(初等学校)を卒業した後、サージュはビジネスの教育を、クロードは時計師の教育を受け、その後、”チャンス”をものにしてアーミン・シュトロームを立ち上げます。
生まれた年=初心に返って新たに送り出す新シリーズと理解しました。




デザインは今までのアーミンシュトローム、”スケルトンの為に0から構築した”デザインをさらに推し進めたもの。
現代的なより細くなったラグにより、ダイヤル(ムーブメント)がより主張します。



個人的に一番バランスが良いと考えている、CNCによる部品製造と手作業による仕上げという方法で仕上げらた各部のパーツ。
ブリッジは当然ですが、歯車のスポークもちゃんと面取りされています(高級機でも意外と省かれる)。
表側の輪列はマイクロローター、手巻きと時合わせ輪列ですが、大きめの歯車を使い見ることを前提としたデザインになっています。
香箱は後から述べるようにモーターバレルとユニークな巻き止めシステムが統合されており、動作状況はダイヤル側から見ることができます。



巻き止めの目的は何でしょうか?
それはこのグラフに表れています。
ゼンマイ自体は3.5日(84時間)に近い回転数を持っていますが、最後の1日はパワーが急激に減少し歩度に影響が発生します、この回転数を3日(72時間)に制限し、”精度が悪化するぐらいなら止める”というのが巻き止めの基本的な考え方です。
伝統的な巻き止めは巻き上げる方向と解ける方向両方に作用し、巻き上げをブロックし、ゼンマイが締め付け過ぎて高いトルクになるのを防ぐ効果もあります、しかし自動巻きでは自動巻きローターから常に巻き上げられるため、ブロックしてしまうと自動巻き輪列がローターからのトルクで破損するリスクがあり、自動巻きと巻き止めは通常組み合わせません。
そのかわり、自動巻きではゼンマイを香箱に固定せず、スリッピングアタッチメントというゼンマイが一定トルク以上で空回りする機構を使うことで、無限に巻き上げ可能としています。

今回、自動巻き機構と組み合わせるために、解ける方向には停止させ、巻き上げ時には別の方法を取る巻き止め機構が採用されました。



巻き回転数-解け回転数を計測するゼネバ機構の歯車に着けられたレバー(パワーリザーブインジケーターの針を兼ねる)がで全巻き時にデクラッチスプリングを押すことで巻き上げ輪列の連結を切り離し、それ以上巻きあげないようにします。




香箱とゼネバ機構だけ取り出すとこのようになり、これは全解け状態でブロックされていてこれ以上回らない状態。
ゼネバ機構の逆側、全巻き状態のところは停止させるのではなくピンがそれ以上引っかからないような形状になっています。



エネルギー開放の様子を動画で。
開放しきるとゼネバ機構に引っかかってそれ以上動かなくなっている様子がわかるかと思います。

動画でわかるかもしれませんが、アメリカ懐中に見られた巻き上げと出力を反転させたモーターバレルという形式で、出力は香箱芯から取り出されています。
この方式のメリットとして、外周部で支えられる香箱と違い、上下の石で支える香箱芯の方がより効率よく出力できるということが挙げられます。

このモーターバレルとデクラッチ巻き止めを組み合わせ、アーミン・シュトロームのマイクロローター自動巻きに組み合わせることで自動巻きかつ巻き止めで精度が悪化する前に止めるという機構が完成しました。



香箱芯は上下からがっちりと石で支えられていることがわかります。



断面図。

新規開発したモーターバレルに加え、”レゾナンス譲り”の7振動(3.5Hz)というユニークなオリジナルテンワが用いられています。
計時輪列と表示輪列が別のオフセット輪列で計時輪列はムーブメント側、表示輪列は文字盤側(文字盤の裏)に配置されています。



モーターバレルの1番車(香箱芯の大きな歯車)から2番車-3番車-4番車-ガンギとレイアウトされたオフセット輪列。
テンワのブリッジも新しいデザインコードの直線的な意匠です。



ベゼルが極細なため、ムーブメント側以上に存在感がある文字盤側。
ノーブルスタイリング葛西氏は”初代ポルトギーゼを思わせる”と評していました。



こちらはエマニュエルが付けていたもの。
ムーブのガルバニックカラーが違うだけで印象がガラッと変わります。



地板とブリッジで色が違う、ツートンカラーのような趣…



デザインでだいぶ大きく見えますが、41mmケースです。
地板のカラーでツートンっぽいオリジナリティを出せるとかなり良いのでは…と思いました。



サージュは別のアポがあるため参加できなくなってしまいましたが、25日(火曜日)にもノーブルスタイリングギャラリーにてイベントを行う予定です。
グラヴィティ・イコール・フォースはもちろん、デュアルタイムレゾナンスやミニットリピーターレゾナンスもその日までは居る予定だそうなので是非。

最後は…



”常識的”な所に…

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