パーネル ESCAPE I I S TREASURE BAGUETTE ダブルジャイロにジェムセティングを行ったグランドコンプリケーション

 By : CC Fan


史上初の「オンライン開催」となったWatch and Wonder Geneva、オープン直後こそマイナートラブルはあったものの、現在は普通にアクセス可能なようです。
正直なところ、これはこれでいいんじゃないの…と言うのが率直な感想です。

WATCH MEDIA ONLINEでもニュースと言う形で速報をあげてきました、一段落したので個人的に興味深いものを見ていきたいと思います。
まずはなんと言ってもこれでしょう…と言うのが今年から参加のパーネル(PURNELL)のダブルジャイロトゥールビヨン(ダブルスフェリオン)を搭載したESCAPE I I S TREASURE BAGUETTEです。

パーネルは2006年にジョナサン・パーネルが祖父で時計師のセシル・パーネルを称えるトゥールビヨンの時計のみを生産することを目標に創業したブランドです。
ブランドロゴの下にONLY TOURBILLONと示すように、トゥールビヨン専業で13個のエクスクルーシブキャリバーを製造したのち、2016年に現代のマスターウォッチメーカーの一人であるエリック・クドレとのコラボレーションを開始、クドレの成果である「スフェリオン」と名付けた世界最速3軸トゥールビヨンを取り入れた作品に取り組みます。
スフェリオンを1つ搭載したESCAPE Iコレクションを2017年に発表、その後2年の開発期間を経てスフェリオンを2つ搭載したESCAPE I I コレクションのプロトタイプを2019年に発表、2020年にグローバル展開を行います。
(ブランド公式WebSiteのOur Storyより抄訳・意訳)

W&Wのノベルティとして用意されたのはESCAPE I I のケースサイズをコンパクトにし、スフェリオンケージにジェムセッティングを行ったレディースグランドコンプリケーションESCAPE I I S TREASURE BAGUETTEです。



どう見てもただものではないシルエットですね。

さて、エリック・クドレと言う名前をどこかで耳にしたことがないでしょうか?
そう、驚異の高速回転3軸 規制装置TriAxを手掛けた時計師です。
上記の記事で、「他のブランドでも球形多軸トゥールビヨンを開発しています」と書いたのが、このパーネルです。
見ての通り、2つの「スフェリオン」を並べて搭載し、その間をディファレンシャルで繋ぐことで誤差を平均化しています。
2つの「スフェリオン」は互いに逆方向に回転し、ユニークな表情を見せます。

9時位置のパワーリザーブインジケーターは古典にみられるウォームギアとコーンを組み合わせた方式、上から見ると2つしか見えないバレルはなんと6つの主ゼンマイを4つの香箱(2つ入りと1つ入りを重ねたものを並べて並列に搭載)と言う凄まじさ、にもかかわらずパワーリザーブは32時間と言うのは高速回転トゥールビヨンがいかにエネルギーを消費するかという事を示してると思います。

「スフェリオン」は最内周が8秒、中間が16秒、最外周が30秒のの周期で動く3軸で、振動数とポッター脱進機の特性で決まる最内周はTriAxと同じになりますが、中間と最外周は異なります。
ただ、TriAxは最外周の固定歯車を動かすことで、力の与え方を2つの回転速度の差の形にして、実際の回転速度より遅い速度にしているのに対し、こちらは最外周の固定歯車は固定なので、どちらの方が本当に速いか(加速比)?と言うのは現地点では不明です。

そして、ESCAPE I Iとの最も大きな違いは…


何とケージにダイヤモンドをセッティング!
全部で304石のブリリアントカットダイヤモンドをセッティングしています。
ポッター脱進機のキモであるガンギ車を展開した内歯の固定ガンギ車も見えます。
天真に2つ、各軸に2つ×3つの合計8個のインカブロックによって衝撃から保護する構造です。
これだけ複雑な構造を持つにもかかわらず、素材はチタンが使われ、スフェリオン単体の重量は0.831グラムに過ぎません。

ムーブメント自体もスフェリオン部分が大きく抜けていることにより、直径37.5mm×厚さ13.3mmにもかかわらず、重量は15.7gに過ぎません。
石数67石、部品数386という数も複雑さの割には少ないと感じます。

そしてスペックシートではさらっと流されていますが、なんと12姿勢調整!
ジャイロだから打ち消すんじゃないの?とは思わなくもないですが、それだけ精度もこだわっている姿勢と認識しました。


解像度が荒いですが斜めから。
スフェリオンの動きを堪能するために6時側のケースに切り欠きが入っており、風防が連続的につながるような形状になっています。
このような特殊形状の風防をサファイアクリスタルのブロックから削り出すのも非常に困難です。

ケースはホワイトゴールドで、326個のバケットダイヤモンドがセットされ合計20.26カラット、文字盤もホワイトゴールドで46個のバケットダイヤモンドと11個のブルーサファイアインデックスが合計で1.04カラットだそうです。

ケースサイズは直径44mm×厚み18mmとさすがの大きさではありますが、スフェリオンがほぼ球形なので厚みは減らせないとはいえ、ESCAPE I Iの直径48mmからは小型化しています。
これはESCAPE I Iではケースサイドに設けられていたスフェリオンやコーンパワーリザーブ計測装置を観察するためのサファイアクリスタルの窓を省いたことが大きいようです。

比較的モノトーンでまとまったダイヤモンドの他に…


ド派手なレインボー!
ケースは宝石なしのローズゴールド、ダイヤルは118石のサファイア・ルビー・エメラルドをレインボーになるようにセット、スフェリオンのケージにも304石のサファイア・ルビーエメラルドがレインボーにセットされています。



こちらはスペックシートしかなかったDLCチタンケース。
スフェリオンがローズゴールドコートのチタンになり、304個のブリリアントカットダイヤモンドがセットされています。

このほか、カーボンケース、スフェリオンにジェムセットがない、ESCAPE I Iのカーボンケースも。



カーボンと赤のコントラストでスポーティーな印象です。
赤が好きなので、個人的には一番好印象のモデルです。



黄色もあります。

このようにいくつかのレギュラー仕様のほか、顧客の「ワガママ」を叶えるビスポークも可能なようです。

最後に公式のムーブメントとスフェリオンのスペックを。

ESCAPE I I S 

M O V E M E N T
Mechanical Hand Winding Caliber CP13
Double Spherion with Diamond Set Cages – the World’sFastest Triple Axis Tourbillon

Functions: Hour, Minute and Power Reserve Indication via an Ingenious Suspended Mobile Cone Mainspring Sensor
Number of Components: 386
Number of Jewels: 67
Power Reserve: 32 hours
6 Mainsprings Assembled in 4 barrels Aligned in Parallel (Four are Superimposed within Two Barrels). 2 Visible Barrel Covers Engraved with Purnell Watchmaking Philosophy*
Balance Frequency: 3Hz / 21,600 bph
Movement Dimensions: 37.5 mm x 13.3 mm
Movement Weight: 15.7 grams
Adjusted: 12 Positions

High-Velocity Spherion Cages Performance Both Cages are Revolving in the Opposite Direction Thanks to its Differential System
Fastest Triple-Axis Tourbillon with Rotation in:
 ⇒ 8 Seconds Inner Cage
 ⇒ 16 Seconds Secondary Cage
 ⇒ 30 Seconds Outer Cage
Spherion Weight: 0.831 grams
Material: Rose Gold plated Titanium
Setting: 304 brilliant-cut Diamonds in total
Shock Protection: 8 Incabloc

現在、W&Wの資料に加え、より詳細な資料がもらえないか問い合わせ中です。
進展がありましたらまたフォローします。

https://purnellwatches.com/