パテック フィリップ 6301P グランドソヌリ、プティットソヌリ、ミニット・リピーター~待ち望まれていた新しいグランド・コンプリケーション

 By : KITAMURA(a-ls)


パテック フィリップの公式プレスリリース、特に今回のように、ブランドにとってエポック・メイキングともいえるヒストリカルなピースの場合のそれは、ちょっとしたブックレット並みの圧倒的な記述から成り立っている。
概要、機能、歴史、構造、デザインなど、様々な角度から読み解けるよう、重要な点については、作品のキイポイントや芸術性などを含む複数のアプローチから念入りに論じられる。
ここでは、そのパテック フィリップの矜持にあふれた公式文章に加え、オフィシャルサイト掲載の資料をあわせて引用し、二つの重複部分を再構成する形で整理・文章化してみた。まずは、この大作の【概要】から見ていこう。


【概要】
パテック フィリップは、チャイム機構の最高峰とされるグランドソヌリと、これにプティットソヌリ、ミニット・リピーターを加えた腕時計を発表し、現行コレクションをさらに充実させ、時の音楽における比類のない巨匠としての技術力を今再び立証しました。
新しいキャリバーGS 36-750 PS IRM(部品総数703個)は、パテック フィリップ・グランドマスター・チャイムに搭載されているキャリバー300から派生しました。古典的な3ゴング、2件の技術特許に保護されたチャイム機構、および6時位置にジャンピング・セコンドを搭載しています。



2組のツインぜんまいを搭載しており、チャイム機構が24時間、ムーブメントが72時間のパワーリザーブを保証しています。
プティットソヌリ、グランドソヌリ、およびサイレントの作動モードは、6時位置のスライドピースで選択できます。



ミニット・リピーターは、リュウズに統合されたプッシュボタンで作動させることができます。
チャイム機構とムーブメントの洗練されたアーキテクチャーは、サファイヤクリスタル・バックを通して鑑賞することができます。サファイヤクリスタル・バックと通常のソリッド・ケースバックが共に付属しています。

パテック フィリップは、クラフトマンシップと希少なハンドクラフトにおける技術と経験を踏まえ、光沢仕上げの本黒七宝文字盤、植字ブレゲ数字、ホワイトゴールドの夜光付リーフ型時・分針などにこれを活用しています。



時、分、および6時位置のジャンピング・スモールセコンド表示は、3時と9時位置のムーブメントおよびチャイム機構の2つのパワーリザーブ表示と完璧に均衡しています。
エレガントな プラチナ・ケースは、凹面ベゼルと段差のついたサテン仕上げのケース側面がさらに美しさを強調しています。

パテック フィリップのすべてのプラチナ・モデルと同様、ケース側面に小さなダイヤモンドを配していますが、通常の6時位置はチャイム・モード選択のスライドピースによって占められているため、このモデルでは12時位置にこれがセッティングされています。



愛好家やコレクターが待ち望んでいたこの新しいグランド・コンプリケーションには、ラージ・スクエアのブリリアント・ブラック・ハンドステッチ・アリゲーター・バンドおよび折り畳み式バックルが装着されています

【概要まとめ】
●グランドソヌリ、プティットソヌリ、ミニット・リピーターというチャイム機構にハイライトを当てたグランド・コンプリケーション
●パテック フィリップ・グランドマスター・チャイムに搭載されているキャリバー300から派生した、キャリバーGS 36-750 PS IRM手巻ムーブメント
●チャイム機構に関する2件の特許取得の技術革新
●特許取得の6時位置のジャンピング・セコンド機構
●6時位置のケース側面にチャイム・モード選択スライドピース
●リュウズに統合されたミニット・リピーター・プッシュボタン
●本黒七宝文字盤、ホワイトゴールド植字ブレゲ数字
●9時位置にムーブメントのパワーリザーブ表示(72時間)
●3時位置にチャイム機構のパワーリザーブ表示(24時間)
●エレガントなプラチナ・ケース、凹面ベゼル、段差のついたサテン仕上げのケース側面
●ダイヤモンドを12時位置にセッティング

[註]
グランドソヌリとは、毎正時と15分、30分、45 分に、時とクオーター(15分)の数を自動的に音で知らせる機能。非常に複雑な機構であるため、腕時計に搭載されるのはきわめて稀。
また、プティットソヌリとは毎正時にのみ自動的に音で知らせる(15分、30分、45 分には時は鳴らない)機構。
ミニット・リピーターとは、使用者が操作した時に、その時点の時刻を分まで音で知らせる機構である。




【表示と機能について】
時針 

分針 

ジャンピング・スモールセコンド 

ムーブメントのパワーリザーブ表示 

チャイム機構のパワーリザーブ表示

プッシュボタン(ミニット・リピーター作動)

スライドピース(チャイム・モードの選択)
 [プティットソヌリ、グランドソヌリ、サイレント]

ⓐリュウズの位置
 1. 押し込んだ位置:
ムーブメント巻き上げ(時計回り)
チャイム機構巻き上げ(反時計回り)
 2. 引き出した位置:時刻合わせ




【プレスリリース資料より】

ニューモデルに所期のグランドソヌリを実装するため、パテック フィリップはグランドマスター・チャイムのキャリバー300のスピンオフとして新たにムーブメントを開発した。
新しいキャリバーGS 36-750 PS IRMは、703個の部品数を考えると、このように複雑な機構としてはきわめてコンパクトである(直径37 mm、厚さ7.5mm)。グランドソヌリの設計者にとって従来からの最大の困難のひとつは、エネルギーのフローとパワーリザーブを最適化することである。スライドピースまたはプッシュボタンの操作によってオンデマンドで作動させるミニット・リピーターと異なり、グランドソヌリには、チャイムを均一な音響品質で必要回数、自動的に鳴らすために十分なパワーリザーブが必要である。



この課題に対処するために、パテック フィリップは、キャリバーGS 36-750 PS IRMに、ひとつはムーブメント用、もうひとつはチャイム機構用の2組のツインぜんまいを搭載した。この構成によってムーブメントは72時間、チャイム機構は24時間のパワーリザーブが実現できた。
3日間のムーブメント・パワーリザーブは、パテック フィリップの顧客中心の製品哲学に準拠し、毎日着用できる現代の時計に期待される長さである。一方、24時間のチャイム機構パワーリザーブにより、時計は1日中、正時およびクオーター(15分、30分、45分)を打ち続けることができ、均一なトルク特性のおかげで最適な音の強さが保証される。押し込まれた位置でリュウズを時計回りに回すとムーブメント用、反時計回りに回すとチャイム機構用のツインぜんまいが巻き上げられる。4個のぜんまいは、過度の張力から保護するため滑りバネを備えている。


3 ゴングを使ったチャイム機構
チャイム機構に関しては、パテック フィリップは古典的な3ゴング(低、中、高音)を採用した。この技術オプションは、2ゴングを備えたシステムよりも多くのエネルギーを必要とする。また、各々のゴングを調整する際の作業は、3つのゴングすべてが愛好家に切望される伝説的な《パテック フィリップ・サウンド》を達成しなければならないため、より複雑となる。ムーブメントに取り付けられた3つのゴングは、ごく狭いスペースにもかかわらず、互いに接触したり、ケースやムーブメントに接触したりしてはならない。3つのハンマーは同一のサイズと重量を持ち、3音階の均一な強さを保証する。ケースの素材としてプラチナを採用したことも課題を提供した。この素材は完璧な音響を実現することが難しいため、マニュファクチュールで世代から世代へと受け継がれてきたパテック フィリップの高度なノウハウが不可欠であった。



時は低音の数で知らせ、クオーター(15分、30分、45分)は高低中音からなるメロディの数で知らせる。15分、30分、45分には、先ず今が何時かを低音の数で知らせ、続いて最初のクオーター(15分)には1回、2番目のクオーター(30分)には2回、3番目のクオーター(45分)には3回、この高低中音からなるメロディが鳴る。チャイム機構のツインぜんまいに蓄えられたエネルギーのおかげで、24時間で合計1,056回、ゴングを打つことができる。
またプティットソヌリ・モードを選択することもできる。これは正時には今は何時かを低音の数で知らせるが、クオーター(15分、30分、45分)には、今が何時かを知らせる低音は省略される。サイレント・モードでは、自動チャイム機構が完全にOFFとなる。



チャイム・モード(サイレント、グランドソヌリ、プティットソヌリ)の選択は、6時位置のケース側面のスライドピースにより行う。プティットソヌリ・モードは左側、グランドソヌリ・モードは中央、サイレント・モードは右側である。この特別な機能は、パテック フィリップ・グランドマスター・チャイムのためにすでに開発され、単一のスライドピースでチャイム・モードの選択とON/OFFを行う機構として特許を取得している。
従来は、これらを実行するために2つのスライドピースが必要であった。同じくグランドマスター・チャイム用に開発されたもうひとつの特許は、サイレント・モード時にグランドソヌリ機構を完全に隔離し、エネルギーの消費を防ぐものである。ミニット・リピーターは、3時位置のリュウズに統合されたプッシュボタンを押して作動させる。



ミニット・リピーターは、グランドソヌリ、プティットソヌリの場合同様、時を低音の数で知らせ、クオーター(15分、30分、45分)を高低中音からなるメロディの数で知らせるが、これに加え、端数の分の数を高音で知らせる。スライドピースがサイレント・モードになっている場合でも、ミニット・リピーターは作動させることができる。


特許取得のジャンピング・セコンド
パテック フィリップ・グランドマスター・チャイムに搭載されたキャリバー300を6301Pモデルのために作り直すに当って、マニュファクチュール パテック フィリップ技術陣は、従来のグランドソヌリには搭載されたことのないジャンピング・スモールセコンドを加えた。175周年記念モデルのひとつ、チャイミング・ジャンプアワー5275モデルの4件の特許からインスピレーションを得て、新しい6301Pモデルに革新的なジャンピング・セコンド機構を搭載した。このシステムは、従来のようなジャンパー・スプリングに依存せず、代わりに歯車とリリースレバーを使用し、毎秒輪列を瞬時に解放し、これによりエネルギー消費の調整と制御を容易にしている。



その結果、新しい6301Pモデルは、6時位置のスモールセコンドが特徴的な新しい顔を見せる。秒針は、シュマン・ド・フェール(レール)型スケールに沿って秒毎にジャンプし、昔の時計製作工房で時刻を同期するために使用されていた精密時計レギュレーターを彷彿させる。新しい6301Pモデルは、パテック フィリップ創業175周年を記念して創作されたタイムピースの設計と製作から得られた、その他の広範な経験と最新の研究成果からも恩恵を受けている。


きわめて洗練されたムーブメント・アーキテクチャー
新しいキャリバーGS 36-750 PS IRM (サファイヤクリスタル・バックを通して鑑賞することができる)は、パテック フィリップ・シールのすべての厳格な認定規準に準拠している。これは、技術的なパラメーター(計時精度、信頼性)と、各々の構成部品の仕上げ、および魅力的なアーキテクチャーを含む認定規準である。パテック フィリップでは、ムーブメントは、いくら複雑なものでも、その美しさとエレガンスを決して犠牲にしてはならず、ケースや文字盤と同様に、ティエリー・スターン社長の厳しい評価に耐えるものでなければならないのである。



ムーブメントの受け(ブリッジ)、とりわけグランドソヌリの重要な要素である香箱受けやテンプ受けのデザインには格別な配慮が注がれた。これらは、信頼性と快適な視覚的プロポーションを保証する、パテック フィリップならではの希少な独自性である。愛好家は、面取りやポリッシュ仕上げがきわめて難しい、多くの入隅(いりすみ)と呼ばれる入り込んだ角を含む、他の多くの美的ディテールを発見することができるだろう。
チャイムの速度を一定に保つ遠心ガバナーは、滑らかに磨き上げられた仕上げで装飾されており、鑑賞できるようになっている。この見事なムーブメントを体現する、Gyromax®テンプ、Silinvar®製Spiromax®髭ぜんまい、ムーブメントの周囲を取り巻く3ゴング、および各々のハンマーも同様である。ムーブメントにきわめて接近して配置された反射防止処理済みサファイヤクリスタル・バックを通して、精密機械工学の世界を心ゆくまで鑑賞することができる。サファイヤクリスタル・バックは、時計に同梱されているソリッド・プラチナ・ケースバックと交換することもできる。



現代的でエレガントな色彩
新しいグランドソヌリ6301Pモデルは、グランド・コンプリケーションも快適に日常着用できなければならないという、パテック フィリップの重要な哲学に忠実であり、際立った洗練を見せている。



2015年に発表されたスプリット秒針クロノグラフ5370モデルからインスピレーションを得たプラチナ・ケースは、曲線と丸みを帯びた輪郭で繊細さと均衡を表現し、凹面ベゼルが、わずかにふくらみを帯びたサファイヤクリスタル・ガラスと、段差のついたサテン仕上げのケース側面を完璧に調和させている。



パテック フィリップのすべてのプラチナ・モデルと同様、ケース側面に小さなダイヤモンドを配しているが、通常の6時位置はチャイム・モード選択のスライドピースによって占められているため、このモデルでは12時位置にこれがセッティングされている。



パテック フィリップは、クラフトマンシップと希少なハンドクラフトにおける技術と経験を踏まえ、光沢仕上げの本黒七宝文字盤、植字ブレゲ数字、ホワイトゴールドの夜光付リーフ型時・分針などにこれを活用している。わずかに傾いたブレゲ数字は、クラシックでありながら現代的な顔にダイナミックなタッチを加える。時、分、および6時位置のスモールセコンド表示は、3時と9時位置のムーブメントおよびチャイム機構の2つのパワーリザーブ表示と完璧に均衡しており、半円形のスケールには、フランス語でMOUVEMENTとSONNERIEの文字が記載されている。タイムピースには、ラージ・スクエアのブリリアント・ブラック・ハンドステッチ・アリゲーター・バンドおよび折り畳み式バックルが装着されている。




時の音楽に加えられた新たな章
1989年のミニット・リピーター腕時計のリニューアルにより、パテック フィリップは、リピーター・タイムピースを現代に復興させるための扉を大きく開いた。
創業175周年の2014年、グランドマスター・チャイムが発表され、今回、現行コレクションのひとつとして新しい6301Pモデルが発表された(ただし、その複雑さにより、製作は年間数点に限られる)。こうしてマニュファクチュール パテック フィリップは、グランドソヌリ分野の展開において新しい章を書き加え、道を切り開いた。今回の新作は、時の音楽に情熱を注ぐすべての愛好家、コレクターにさらに大きな視覚的、聴覚的喜びを与えてくれることであろう。


新しいグランドソヌリ6301P モデルの6 つの複雑機能
•グランドソヌリ
•プティットソヌリ
•ミニット・リピーター
•ムーブメント・パワーリザーブ表示
•チャイム機構パワーリザーブ表示
•ジャンピング・セコンド

技術特許
•サイレント・モードにおけるグランドソヌリの隔離(技術特許 CH 704 950 B1)
この機構により、サイレント・モード時にグランドソヌリ機構を完全に隔離し、エネルギーの消費を防ぐ。

•チャイム・モードの選択(技術特許 CH 706 080 B1)
この機構により、単一のレバーと単一のスライドピースでチャイム・モード(プティットソヌリ、グランド
ソヌリ、サイレント)を選択できる。従来はこれらを実行するために2つのスライドピースが必要であった。

•歯車によるジャンピング・セコンド(技術特許 CH 707 181 A2)
この革新的なジャンピング・セコンド機構は、従来のようなジャンパー・スプリングに依存せず、代わりに
歯車とリリースレバーを使用し、毎秒輪列を瞬時に解放し、コイル状の戻しバネを唯一の動力源として利用
する。これによりエネルギー消費の調整と制御を容易にしている。




【技術仕様】
パテック フィリップ・グランドソヌリ6301Pモデル
2020年新作

[文字盤]
• 光沢仕上げの本黒七宝文字盤、光沢仕上げ、18 金ホワイトゴールドの植字ブレゲ数字
• 18金ゴールド文字盤プレート
• 18金ホワイトゴールドの夜光付リーフ型時・分針
・ホワイトゴールドの《ダガー(短剣)》型秒針(6 時位置)
・夜光付10秒マーカー入り転写シュマン・ド・フェール(レール)型秒スケール
・夜光付5分マーカー入りシュマン・ド・フェール(レール)型分スケール
・ホワイトゴールドの《シュヴー》型パワーリザーブ表示針(ムーブメント、チャイム機構)



[ケース]
• プラチナ950仕様
• 直径:44.8 mm
• 厚さ:12 mm
• 非防水(湿気・埃にのみ対処)
• サファイヤクリスタル・バックと通常のソリッド・ケースバックが共に付属バンド
• ラージ・スクエアのハンドステッチ・ブリリアント・ブラック・アリゲーター・バンド
• 折り畳み式バックル
・12 時位置のラグ間にピュア・トップウェッセルトン・ダイヤモンド
・非防水(湿気・埃にのみ対処)
・サファイヤクリスタル・バックと通常のケースバックが共に付属


[ムーブメント]
• キャリバーGS 36-750 PS IRM

• 手巻ムーブメント
• 古典的な3ゴングを備えたミニット・リピーター
• グランドソヌリ
• プティットソヌリ
• 6時位置にジャンピング・スモールセコンド
• 9時位置にムーブメントのパワーリザーブ表示(連続駆動可能時間72時間)
・3時位置にチャイム機構のパワーリザーブ表示(連続駆動可能時間24時間)
• 直径:37 mm
• 厚さ:7.5 mm
• 部品総数:703
・石 数: 95 石
• 振動数:25,200 振動(片道)/時(3.5 Hz)
• ムーブメントの連続駆動可能時間:72時間
• チャイム機構の連続駆動可能時間:24時間
・テンプ: Gyromax®
・髭ぜんまい: Spiromax®( Silinvar®製)
・チャイム・モード表示(プティットソヌリ、グランドソヌリ、サイレント)
※6 時位置のスライドピースによりチャイム・モード(プティットソヌリ、グランドソヌリ、サイレント)を選択
・セッティング機能: リュウズの2 位置
・押し込んだ位置: ムーブメント巻き上げ(時計回り)、チャイム機構巻き上げ(反時計回り)
・引き出した位置: 時刻合わせ
・刻 印: パテック フィリップ・シール
・操 作:3 時位置のリュウズに統合されたプッシュボタンを押してミニット・リピーターを作動


[バンド]
・ラージ・スクエアのハンドステッチ・アリゲーター・バンド、カラーはブリリアント・ブラック、プラチナ折り畳み式バックル付

[価格]
時価 ※受注生産モデルとなります




【資料】

パテック フィリップは、グランドソヌリを最も純粋に体現した最初の腕時計を発表し、時の音楽における比類のない巨匠としての技術力を今再び、立証する

ジュネーブのマニュファクチュール パテック フィリップは、多くの愛好家、コレクターの期待に応え、常に追い求められる高度なチャイム機構である、グランドソヌリを搭載した腕時計を現行コレクションに加える。
グランドソヌリは、正時と15分、30分、45 分に、時とクオーター(15分)の数を自動的に音で知らせる機能である。このグランド・コンプリケーション機能は、腕時計ではきわめて希である。
新作は、これに加えプティットソヌリ(15分、30分、45 分には時は鳴らない)、ミニット・リピーター(オンデマンドで現在の時刻を分まで知らせる)、および特許取得のジャンピング・セコンドも搭載している。新しいグランドソヌリ6301Pモデルは、703 個の部品から構成される新しいムーブメントをプラチナ・ケースに搭載し、本黒七宝の文字盤を備えている。
この新しいグランド・コンプリケーションは、パテック フィリップのリピーター・タイムピースのユニークなコレクションをさらに充実させ、その栄光にさらなる輝きを与えるに違いない。

時刻を音で知らせる機構は、機械式時計の原点から直接導き出されたものである。14世紀には、ヨーロッパの諸都市を飾る時計塔には文字盤も指針もなかった。その代わりチャイム機構により自動的に正時を知らせたのである。15世紀、最初のぜんまい駆動による携帯時計が現れ、それには自動チャイム機構も搭載されていた。これは、16世紀の最初の懐中時計にも当てはまる。17世紀後半になると、オンデマンドで時刻を知らせる時計が出現し、最初はクオーター・リピーター、次の世紀の初めにはミニット・リピーターが続いた。18世紀のジュネーブでは、時計職人ギルドの規則により、マスター・ウォッチメーカーになりたいすべての職人は、クオーター・リピーターを製作できる能力を立証する必要があった。これは、チャイム機構をマスターすることが、高度な時計製作技術を有する証拠と見なされたことを示している。


パテック フィリップの中核技術のひとつ、チャイム機構
パテック フィリップは、ジュネーブ時計製作の伝統に完璧に準拠し、創業当初からチャイム・ウォッチの製作を開始した。
創業から4か月後の1839年9月、マニュファクチュールは、この種の最初のタイムピースを販売台帳に記載した。それはリピーターを搭載した懐中時計であった。1850年には、グランドソヌリを搭載した懐中時計が販売台帳に記載された。ロンドンで開催された1851年の最初の万国博覧会のカタログには、パテック フィリップの特産品として《リピーター》と《自動ストライク機構を搭載した時計》が記載されている。これに続いて1860年、パテック フィリップ最初のミニット・リピーター搭載懐中時計が製作され、さらに19世紀を通じてクオーター・リピーター、5分リピーター、ミニット・リピーターを搭載した時計の製作が記録されている。
20世紀初頭、パテック フィリップは、チャイム・ウォッチ、とりわけ最も精密で、熱望の対象となったグランドソヌリにおいて、時計製作芸術のフロントランナーとしての地位を確立した。著名な《レグラ公》懐中時計は、1910年にメキシコの貴族レグラ公に販売された。今日、これはパテック フィリップ・ミュージアムで鑑賞することができる。グランドソヌリ、プティットソヌリに加え、ウェストミンスターのメロディーを奏するミニット・リピーターが搭載されており、5ゴングにより時計台ビッグ・ベンのメロディーをほぼ実物通りに再現する。

1910年から1927年の間にアメリカの自動車王ジェームズ・ウォード・パッカードのために製作された13点の複雑時計には、ミニット・リピーターと天文表示を搭載した最初のパテック フィリップ懐中時計(1927年に納入)、およびグランドソヌリを搭載した数点の時計が含まれる。そのうちのひとつ(1920年)は、4ゴングによりウェストミンスターのメロディーを奏するものであった。1933年に裕福なニューヨークの銀行家で収集家のヘンリー・グレーブス・ジュニアに納入された著名な懐中時計《グレーブス・ウォッチ》は、1989年まで世界で最も複雑な携帯時計の地位を保持した。その24の複雑機能には、5ゴングによるチャイム機構とアラームが含まれる。
これと並行してマニュファクチュールは、腕時計に搭載する目的でリピーター機構の小型化を追求し、1916年、リピーター機構を搭載した最初の腕時計(プラチナ・ケースとブレスレットを備えた婦人用5分リピーター)を発表した。


ミニット・リピーターの復興
1989年、パテック フィリップは創業150周年を記念し、その後四半世紀以上にわたって世界で最も複雑な機械式携帯時計の地位を保持することになる、キャリバー89を発表した。この時計製作におけるマスターピースが搭載する33の複雑機能には、4ゴングによるグランドソヌリ、プティットソヌリとミニット・リピーターが含まれている。機械式タイムピースの復興を告げたこの年は、パテック フィリップによるリピーター腕時計へのトリビュートの年でもあった。チャイム機構を備えた2つの記念腕時計(3979と3974モデル)は、完全自社開発・製造によるパテック フィリップ最初のミニット・リピーター・ムーブメント、キャリバーR 27を搭載していた。
当時のパテック フィリップ社長フィリップ・スターンは、雑音を出す速度調整用アンクルを廃止し、これに代えて19世紀末に発明された遠心ガバナーを採用してチャイム機構を最適化することを決定した。パテック フィリップの遠心ガバナーはこうして1989年、キャリバー89、およびキャリバーR 27を備えた2つの記念タイムピースによってデビューした。

動きは加速した。数年の間に、ミニット・リピーターはパテック フィリップの現行コレクションの中で優先的な地位を享受するようになった。今日パテック フィリップは、リピーターのみのモデル、他の複雑機能(トゥールビヨン、永久カレンダー、クロノグラフ、ワールドタイムなど)と組み合わされたモデルを合わせて12点ほどのモデルを製作しており、これは世界で最も広範なレギュラー生産されるミニット・リピーター腕時計のコレクションとなっている。

パテック フィリップにおけるチャイム・ウォッチ復興を告げた1989年以来、さらに2点の例外的なタイムピースにおいて、音響分野での重要なチャレンジが行われた。ダブルフェース懐中時計スターキャリバー2000(21の複雑機能)は、新しいミレニアムの到来を告げるために創作された。このサイズの時計として初めて、ウェストミンスター(ロンドンの国会議事堂時計塔)のオリジナル・メロディーを完全かつ正確に再生する、5ゴングを備えたチャイム機構を搭載していた。そのミニット・リピーターとグランドソヌリは、まさに音響による祝宴であった。同様に、2001年に発表されたスカイムーン・トゥールビヨンは、パテック フィリップによる最初のダブルフェース腕時計であった。搭載された12の複雑機能には、回転する星座表と、カセドラル・ゴングを備えたミニット・リピーターが含まれる。


チャイム機構におけるグランドマスター
2014年、創業175周年と時を同じくして、パテック フィリップは音響コンプリケーションの領域でさらに飛躍的な進歩を遂げた。それはダブルフェース腕時計グランドマスター・チャイム5175モデルの発表であった。7点のみが製作され、20の複雑機能を搭載していた。グランドソヌリ、プティットソヌリ、ミニット・リピーター、4桁の年表示、瞬時日送り式永久カレンダーなどに加え、あらかじめ設定された時刻に音を鳴らすチャイムによるアラーム、現在の日付を音で知らせるデイトリピーターという、世界初の特許取得の2つの機能を含んでいる。このパテック フィリップ最初のグランドソヌリ搭載腕時計は、同時にマニュファクチュールにおける最も複雑な腕時計でもあり、2016年には、6300モデルとして現行コレクションの一部となった。創業175周年の2014年には、パテック フィリップのチャイム機構における技術力を立証する、他の限定製作の記念タイムピースも発表された。チャイミング・ジャンプアワー5275モデルは、時、分、秒の3つのジャンピング表示機構と正時を
告げるチャイム機構を搭載していた。


新しいグランドソヌリ6301P モデル
パテック フィリップは、さらにこの動きを進め、現行コレクションを豊かにする、小型化と完璧な音響の傑作を発表する。グランドソヌリ6301Pモデルである。このグランド・コンプリケーションは、グランドソヌリを最も純粋に体現したマニュファクチュール最初の腕時計であり、プティットソヌリとミニット・リピーターも搭載している。これこそは愛好家、コレクターが長い間待ち望んでいた出来事といえよう。




【パテック フィリップのチャイム・ウォッチの歴史における重要な日付】

■1839 年9月4日
マニュファクチュール最初のチャイム付タイムピース(No。81)。アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックの最初の共同経営者、フランソワ・チャペックによって最終組立てと最終調整が行われたリピーター搭載懐中時計。

■1850 年
グランドソヌリを搭載した最初の懐中時計を販売台帳に記載。

■1860 年
ミニット・リピーターを搭載した最初の懐中時計を販売台帳に記載。

■1910 年
《レグラ公》懐中時計。
5 ゴングによるグランドソヌリ、プティットソヌリ、ミニット・リピーター、ウェストミンスター・チャイムを搭載。


■1916 年
チャイム機構を備えたパテック フィリップの最初の腕時計。婦人用5 分リピーター・モデル。

■1920 年
自動車王ジェームズ・ウォード・パッカードのために製作された、4 ゴングによるグランドソヌリ、ウェストミンスター・チャイム、永久カレンダー搭載の懐中時計

■1924 年
クルーズ・コントロールの発明者である盲目の自動車技師ラルフ・ティーターに販売された、ミニット・リピーターを搭載した最初のパテック フィリップ腕時計。

■1927 年
自動車王ジェームズ・ウォード・パッカードのために製作された、ミニット・リピーターと星座表を搭載した最初のパテック フィリップ懐中時計。


■1933 年
超複雑タイムピース《グレーブス・ウォッチ》。5 ゴングによるグランドソヌリ、プティットソヌリ、ミニット・リピーター、ウェストミンスター・チャイム、アラームなど24 の複雑機能を搭載した懐中時計。


■1939 年
ミニット・リピーターと永久カレンダーを搭載した最初のパテック フィリップ腕時計。ユニークピース。541モデル。

■1982 年
ミニット・リピーター、永久カレンダー、シングルプッシュボタン・クロノグラフを搭載した最初のパテックフィリップ腕時計。ユニークピース。3615 モデル。

■1983 年
グランドソヌリ、ミニット・リピーター、スプリット秒針クロノグラフ、永久カレンダー(キャリバー20'''GC)を搭載した懐中時計。920/1 モデル。


■1989 年
パテック フィリップ創業150 周年記念とリピーター・タイムピースの復興
• キャリバー89。4 ゴングによるグランドソヌリ、プティットソヌリ、ミニット・リピーター、5 番目のゴングによるアラームを含む33 の複雑機能を搭載した世界で最も複雑な携帯時計。

• ミニット・リピーターを搭載した完全自社開発・製造キャリバーR 27、および3979 モデル(キャリバーR27 PS を搭載)、永久カレンダー搭載3974 モデル(キャリバーR 27 Q を搭載)の発表。

■2000 年
スターキャリバー2000。天文表示、グランドソヌリ、ミニット・リピーター、5 ゴングによるウェストミンスター・チャイムを含む21 の複雑機能を搭載した懐中時計。


■2001 年
スカイムーン・トゥールビヨン5002 モデル。天文表示、カセドラル・ゴングによるミニット・リピーターを含む12 の複雑機能を搭載したパテック フィリップ最初のダブルフェース腕時計。

■2011 年
ミニット・リピーターを搭載した、現代のコレクションとしては最初の婦人用腕時計7000 モデル。

■2014 年
パテック フィリップ創業175 周年
• グランドマスター・チャイム5175 モデルの発表。リバーシブル・ケースと、グランドソヌリ、プティットソヌリ、ミニット・リピーターなどに加え、あらかじめ設定された時刻に音を鳴らすチャイムによるアラーム、現在の日付を音で知らせるデイトリピーターという、世界初の特許取得の2 つの機能を含む20 の複雑機能を備えたパテック フィリップ初のダブルフェース時計。
• 記念タイムピース、チャイミング・ジャンプアワー5275 モデル。時、分、秒の3 つのジャンピング表示機構と正時を告げるチャイム機構を搭載。


■2016 年
グランドマスター・チャイム、6300 モデルとして現行コレクションの一部となる。


■2018 年
最初のパテック フィリップ・ワールドタイム・ミニット・リピーター5531 モデルを発表。

■2019 年
シンガポールにおけるパテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エグジビションの機会に、目に見える文字盤側にチャイム機構を搭載した最初のパテック フィリップ・ミニット・リピーター、ミニット・リピーター・トゥールビヨン5303R モデルを発表。

■2020 年
グランドソヌリ6301P モデルを発表。




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パテック フィリップ ホームページ:http://www.patek.com