「アワーグラス銀座」が 銀座6丁目に移転しグランドオープン~5丁目の旧店舗は年末「アワーグラス パテック フィリップ ブティック銀座」に”転生"
By : KITAMURA(a-ls)並木通りといえば、有名ブランドのブティックや高級時計販売店が軒を連ねる日本最大の"時計店通り"であるが、その礎となったのは、やはり2002年のアワーグラス銀座の開店だ。
そのアワーグラス銀座が、同じ並木通りの、番地でいうと銀座6丁目に移転し、8月7日にグランドオープンを果たした。すでに訪問された方は、これまでの高級時計店のイメージとはまったく異なる、"和"のイメージで統一された画期的な内装に驚かれたのではないだろうか。
店はビルの8階。上りエレベーターの扉が開くと、そこはほの暗く、趣のある小さな電灯の明かりを通して、まるで小洒落れた"隠れ家和食屋"のような玄関が目に入る。小窓様の障子の脇にある"呼び鈴"を押す。すると、いわゆる"ピンポ~ン"系の音ではなく、ミニッツ・リピーターのゴング音が静かに響くという仕掛け・・・。
アワーグラス銀座の和風なエントランス
でも、内装やデザインの話を続ける前に、ちょっと待って!
そもそも今からたった2年ちょい前、2021年秋に、これまでの5丁目の店舗を大規模リニューアルしたばっかりのアワーグラスが、なぜ今回の移転をしたのか。まずはそこに触れなければ、なのだ。
その理由を端的に言えば、並木通りの中心ともいえるアワーグラス旧店の立地を、世界に冠たる"あの"ブランドが欲しがったということなのだ。
それは、リニューアルから1年しかたっていない2022年の秋のこと、アワーグラス ジャパン社長の桃井氏のもとにとある提案があり、その提案に対して桃井社長が、「OK、やりましょう」と、即座に決断。その結果、銀座5丁目のアワーグラス旧店舗は、
2024年中に、「アワーグラス パテック フィリップ ブティック銀座」として生まれ変わるべく、現在、絶賛新装工事中なのである。
そうした事情のうえでのアワーグラス銀座の移転リニューアルであるということを、まずは踏まえておかなければならない。
桃井社長
これは、世界主要都市にブティックを設立し、情報発信やコミュニケーションの拠点としていこうという、パテック フィリップの次なる世界戦略の先駆けなのかもしれず、アワーグラスをパートナーとした次なる展開が、いまから楽しみで待ち遠しい、今日この頃なのである。
さて、そして話はアワーグラス銀座の移転リニューアルである。この和風コンセプトについて、桃井社長は次のように話してくれた。
「高級時計店というと、もう何十年もの間、スイスやヨーロッパを訪れたかのような家具やセンスを持ってくるのが常でしたが、それらはもう当たり前すぎて、飽きてしまったんです。アワーグラスは世界8か国に出店しており、それぞれが独自のカラーを持つように指導されていることもあって、これまでになかった"和"を基調にしてみたわけです。最近は、訪日される外国のお客様も増えてきていますので、むしろ"和"のほうが強くアピールするとも考えました」
いざ方向性が決まると、決して中途半端なものにならないよう、そこにはアワーグラス流の徹底したこだわりが貫かれた。ゲストルームのテーブルは栃の木の、それも無垢の一枚板で、エレベーターには入らないほどの大サイズであったため非常階段を使って搬入したという。
また、最初に紹介した、ほの暗いエレベーターホールには、江戸城の石垣に使われていたという巨石をくり抜いた手水があり、上からかすかな水の滴を落とすという風流な仕組みのためだけに、独立したポンプとモーターで循環させているのだそうだ。
その他にも、樹齢100年近い盆栽がさりげなく置かれていたり、値段を聞いてビックリしたけど、アワーグラスさんが扱うミニッツ・リピーターよりも高額というオーデオシステムを備えられていたり。
さらに、5丁目時代からのアワーグラス銀座の特徴でもあるバーカウンター(ここはもみの木の一枚板)のセラーには、DRCやらドンペリが並び、棚には山崎だとか響だとかコニャックだとかで埋まっていて、桃井社長とお話しているうちにペトリュスが抜栓されご相伴に預かっちゃったりと、もうすべてが"超越"なのである。
驚いたのは、時計の展示にあたって、徹底してアワーグラス製の統一感ある什器が採用されていることだ。
おそらく、「和」の世界観の中で機械式高級時計を堪能できる、世界唯一の時計サロンと言えるのではないだろうか。
そんなスペシャルな空間に、販売ストックと修理品を含むお客様からの預かり品など、数十億円に近い時計を5丁目店から運搬した際のエピソードが面白かった。最近、何かと事件絡みで物騒な時計界隈なので、桃井社長はダメ元で築地署へ出向き、「引っ越しの日に、たとえばパトカーで先導いただくとか…」なんらかのご協力をお願いできるのか尋ねたところ、
「一企業のためにパトカー先導は難しい…」としつつも、「当日、移動ルートのパトロール強化は心掛けましょう」との言質を受けたとのこと。ところが、実際の引っ越しが車で7往復にも及んだこともあり、陽の落ちる頃にはサイレンこそ鳴らさなかったものの、一瞬、パトカー先導もしてくれたらしい。
最後に、このリニューアルに合わせてシンガポールから来日していたアワーグラス御本体の代表者、マイケル・テイ氏にもコメントをいただいた。
そういえば、シンガポールのアワーグラスも実にユニークな内装で、ある売り場は古美術店もしくは博物館のようであり、またある売り場は植物園のようでもありと、訪れた人を驚かせ楽しませる内装デザインは、マイケル氏の哲学でもあるようだ。
「わたしは、ひとつひとつのショップごとにユニークでなければならないという考えなので、この銀座のスペースは素晴らしいと思います。10年前にやりたかったことが、今ようやくできる時代になったことを嬉しく思います。」
アワーグラスにとって、日本のマーケットはどのような存在であるかを尋ねたところ、
「すべての時計ブランドが日本で成功したがっています。コレクターの熱心さやその経験値などがとてもセンシティヴで、時計に関してのディティールを好む点でも非常に際立っています。ですから日本での成功は他の国でのそれ以上にスペシャルなことなのです。そのことはわたしたちアワーグラスにおいても同様で、どんな形であっても日本のマーケットでの成功は大事です。」とのお答えを頂きました。
マイケル・テイ氏
また、最近のリシュモングループなど、ブランドが小売店から直営ブティックを重視する流れについて聞いたところ、
「その傾向は2008年頃から、もう15年以上ずっと続いている流れですが、その間にあっても私たちのビジネス規模は3倍になっています。これはパートナーとしてのブランドを、わたしたちもセグメントしてきた結果だと思いますし、ブランドのセレクションには自信を持っています。その意味で、今年年末にアワーグラスとパテック フィリップのパートナーシップで作られる銀座ブティックには、とてもエキサイトしています。桃井もわたしも、10年以上夢見て話し合ってきたことが、いよいよ実現するのですから。」
12月にはこの「アワーグラス銀座」に、「アワーグラス パテック フィリップ ブティック銀座」が加わる。しかし桃井社長はさらに新たな路面店の出店場所を並木通り沿いに探しているという。その"路面店新店"がオープンした暁には、今のこの「アワーグラス銀座」はよりサロン的なスタンスを強めつつ、もう一段高い新たなステージへと進む計画を描いているという。
最近の時計界は、何となく愉快でない方向に向いていっているような、寂寥感にも似た胸苦しさを感じていたのだけれど、アワーグラスのこうした動きなどを見て、久しぶりにワクワク感を覚えている。
10月にはアワーグラス シンガポールの超強力イベント、ほぼすべての独立系を網羅するような「IAMWATCH」がシンガポールで開催予定であるなど、時計におけるワクワクを増幅してくれる世界のアワーグラスと、12月にベールを脱ぐ日本での「アワーグラス パテック フィリップ ブティック銀座」に、超ぉ~期待している。
2024年は(今現在も酷く暑いけど)年末までまだまだ熱いのだ!!
【サロン概要】
アワーグラス銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座6-6-5
HULIC &New GINZA NAMIKI6. 8階
営業時間:12:00〜19:00
TEL:03-5537-7888
※完全来店御予約制となっておりますので、電話もしくはメールにてご連絡の上、来店のご予約をお願いいたします。
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