ヨルク・シャウワー、ウォッチビルダー活動30周年記念・「シャウワー」特別モデル発表~「STOWA」からはフリーガー ブロンズ ヴィンテージも登場

 By : KITAMURA(a-ls)

今日はグラスヒュッテではなくプフォルツハイムの話をしよう。

ジャーマン・ウォッチの中心地といえばまずグラスヒュッテの名が挙がるが、ドイツ西南部にシュヴァルツヴァルト(黒い森)地方とよばれるもうひとつの重要地点がある。鳩時計(実際にはカッコー時計)などの仕掛け時計が発達したこの地方にあるプフォルツハイム(フォルツハイムとも呼ばれる)は、黒い森の北玄関口にある美しい街として知られている。



南部ドイツはスイスやフランスの国境に近いため、近隣諸国から洗練された流行や生産技術が伝わりやすく交易に恵まれ、元来、宝飾品加工に優れていたこともあって、プフォルツハイムは18世紀に宝飾品の町・黄金の町として目覚ましい発展を遂げた。
またシュバルツヴァルトの北門にあたる地理的な気候条件は、降雪期の屋内手工業を推進した。そのため、歴史的に優秀な時計・宝飾クラフトマンが育つ土地柄でもあり、20世紀にはそれら技術が精密機械工業に活かされ、時計産業も発展を遂げる。知名度の高いブランドで言えば、1925年にフリーダ・ラッハー(Frieda Lacher)とルードヴィヒ・ハンメル(Ludwig Hummel)によって、この地にラコ(Laco)が創業されている(ラコという名称は「Lacher&Co.」という創業社名の頭文字からの「Laco」に由来)。
しかし同時に、兵器産業の重要地点ともなっていたことで、第二次大戦中の1945年2月23日に市街の8割以上が破壊される空爆をうけた。

戦後は復興が進み、往年の時計産業や宝飾加工業が再興された。その繁栄ぶりは、かのウォルター・ランゲが、90年のA.ランゲ&ゾーネ再興前の、7~80年代に"LANGE"復活を掲げて時計製作を手掛けた際に選んだのが、このプフォルツハイムだったことでもわかる(グラスヒュッテがまだ東独領だったための選択だったが、この試みは数年で頓挫した。ちなみに、この時代の時計は現在"プフォルツハイム・ランゲ"と呼ばれ、ちょっとしたプレミアがついていたりもするのだが、この話はまたの機会に)。
たとえばグラスヒュッテ・オリジナルが、豊かなグラデーションをもつカラー・ダイヤルモデルの「シックスティーズ」を発表し始めたのも、このプフォルツハイムの文字盤工場を傘下に収めて以降だったりするように、現在も高い技術力を持つ多くの工房や工場が集まり、今日ではグラスヒュッテと並ぶ、ドイツを代表する時計・宝飾製造の町として世界的にも知られている。



さて、このプフォルツハイムといえば、自らウォッチビルダー(スイス的なウォッチメイカーと異なることを強調)を名乗る、ヨルク・シャウアー(Jorg Schauer)の存在を忘れることはできない。



ドイツ、プフォルツハイムで金細工の専門教育を受けたが時計師になることを目指し、スペインの時計宝飾店にて金細工師およびマネージャーとして勤務。その後独立し、1990年、ドイツに戻り、プフォルツハイム近郊にオーダーメイドの時計工房を開く。自らを「ウォッチビルダー」と称し、専門である彫金技術を活かしつつ、ケースの削り出しや針の青焼き、ダイヤルの仕上げなど製造工程や細かな部品製作のほとんどを手作業で行う 、ハンドメイドにこだわる時計製作を開始。そしてそれを発展させる形で、1995年に自らの名を冠した時計ブランド「SCHAUER」(シャウアー)の製造・販売をスタートする。
また、1996年に故郷プフォルツハイムの老舗の休眠ブランド「STOWA」(ストーヴァ)の名称を創業家から買収。それと同時に数百点におよぶ「STOWA」のアーカイブ・コレクションを収集して、ブランドの歴史とデザイン哲学を学び、オーナーとして「STOWA」ブランドを継承・再興した。
2018年以降、「STOWA」のマネジメント業務が多忙を極めていることから、「シャウアー」の受注を休止していたのだが、このたび、シャウアー氏のウォッチビルダー活動30周年を記念して、『SCHAUER』(シャウアー)の特別モデルが生産されることになった。

『SCHAUER』の腕時計はヨルク・シャウアーの一代限りのモデルとしているので、この記念モデルは、シャウワーを手に入れる最後のチャンスとなるかもしれない。


以下、プレスリリースから。


シャウアー氏はオーナーとして取り組むドイツ時計ブランド『STOWA』(ストーヴァ)のマネジメントが多忙を極めていることから、近年『SCHAUER』(シャウアー)についてはほとんど製造していませんでしたが、独立より30周年を迎えて彼のブランド『SCHAUER』(シャウアー)にもっと時間を費やしたいと考え、特別なモデルを生産することにしました




■『SCHAUER』 Edition 10 date limited
『シャウアー』30th記念限定モデル エディション10デイト
¥550,000 税(税込¥605,000)130点限定生産

左右非対称のインダイヤルが特徴、『SCHAUER』を代表する「エディション10」の30周年記念限定モデル。既存モデルよりスリムなベゼルでデイト表示付き。ダイヤルと裏蓋に「1990-2020 JUBILÄUM(記念)」の表記が入っています。
<仕様>機械式自動巻クロノグラフ(Valjoux 7753) /5気圧防水/ケース径42mm/ステンレススティールケース/クロコダイルレザーストラップ(ディプロインバックル)
https://www.neuve-a.net/TiCTAC/shop/g/g2700002065813/




■『SCHAUER』 Onehand 42 limited.
シャウアー』30th記念限定モデル ワンハンド42mm
¥260,000 税(税込¥286,000) 100点限定生産

12時間で1周する針を1本だけ搭載、ゆっくりと流れる時間を楽しむ「ワンハンド」ウォッチ。古典的なタイポグラフィーを用いて緻密に描いた目盛りアイコニックなベゼルと完璧に調和しています。ダイヤルと裏蓋に「1990-2020 JUBILÄUM(記念)」の表記が入っています。
<仕様>機械式自動巻(ETA 2824-2)・シリアルNo.入りハンドメイドローター/5気圧防水/ケース径42mm/ステンレススティールケース/ラバーストラップ(三折れプッシュ式)
https://www.neuve-a.net/TiCTAC/shop/g/g2700002065820/







また、ついでというわけではないが、シャウワーがオーナーを務める「STOWA」からも新モデルが発表されているので、そちらもプレスリリースを引用しておこう。



『STOWA』(ストーヴァ)から、
ブランドを代表する「フリーガー」シリーズの新作、ブロンズケース・モデル登場



今回発売するのは、ブランドを代表するパイロットウオッチシリーズ「Flieger」(フリーガー)のヴィンテージ感溢れるブロンズケースを採用したモデル。
針と文字盤の夜光塗料にはスーパールミノバのヴィンテージカラー「Old Radium」を採用。手縫いのステッチを施したカーフレザーストラップがブロンズケースの味わいを一層引き立てています。


視認性の高いダイヤル、操作しやすいリューズはパイロットウオッチならでは。ドイツ時計の魅力である質実剛健な機能美に、エイジングを感じさせるブロンズケースが深い味わいを加えています。



ヴィンテージ感溢れる佇まいが手元にしっくりとなじみます。



▲『STOWA』Flieger Bronze Vintage ストーヴァ フリーガー ブロンズ  ヴィンテージ

¥190,000 税(税込み¥209,000)
<仕様>機械式自動巻(Cal.ETA 2824-2)/5気圧防水/外径40.0mm. /ブロンズ(CuSn8)ケース/カーフレザーバンド(ハンドステッチ) https://www.neuve-a.net/TiCTAC/shop/g/g2700002040476/

視認性の高いダイヤル、操作しやすいリューズはパイロットウオッチならでは。ドイツ時計の魅力である質実剛健な機能美に、エイジングを感じさせるブロンズケースが深い味わいを加えています。

独STOWA社
ドイツ南西部プフォルツハイムの郊外、エンゲルスブランドに現在のSTOWA本社はあります。
シャウアー氏が建てた社屋はバウハウス的なモダニズム建築、この社屋で製品の組み立てや出荷などを行っています。本社に併設するミュージアムには、シャウアー氏が長年にわたり収集した数百点に及ぶ「STOWA」の歴代製品やパーツ、資料などが収蔵・展示されています。

現在の「STOWA」製品はこれらのアーカイブを背景に、シャウアー氏がデザイン・設計しています。シャウアー氏の美意識が行き届いた「STOWA」の腕時計は、ドイツ製品ならではの普遍的で美しいデザインと高い機能性を兼ね備えています。https://www.stowa.de/en/Philosophy/#schoen