オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 50周年モデル搭載 キャリバー4401ムーブメントを「読む」

 By : CC Fan


オーデマ ピゲより発表されたロイヤル オーク50周年モデル、WMOではすでにロイヤル オーク "ジャンボ”エクストラ シンモデルに使われたムーブメント7121を「読む」を掲載いたしました。

同様に注目したいのはCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲと共にデビューした「現代」クロノグラフムーブメント4401がロイヤル オーク オフショアへの搭載に次いで、ついにレギュラーのロイヤル オーク クロノグラフに搭載されたことです。
WATCH MEDIA ONLINE オンライン Liveとしてロイヤル オーク オフショアの進化と4401ムーブメントの詳細を「読む」を行いましたが、その資料を用いて4401ムーブメントを探っていきましょう。



先の7121同様、現代的な設計思想により部品の重なりを減らす、部品単体は複雑になったとしても組み立てやすさと調整のしやすさを重視した構造を持ちます。




安定した基幹クロノグラフムーブとして作られた4401、現代のケース径が比較的大きなトレンドに合わせ、ムーブメント径は32mmですが、厚みは6.80mmと抑えられています。

「現代」として必要な機能も過不足なく備えており、安定した携帯精度を実現する8振動/秒の振動数、長い約70時間パワーリザーブ、日付表示といった時計としての基礎体力に加え、クロノグラフとしては針飛びが発生しにくい垂直クラッチ、定石のコラムホイール制御、最初から考慮されたフライバックリセット、調整を行いやすくする独立リセットハンマー…と盛りだくさんです。



先程の展開図にそれぞれの機能を重ねてみます。

地板と計時ブリッジの間に計時輪列が収まり、計時ブリッジがクロノグラフの地板となりその上にクロノグラフ輪列が組み上げられる構造です。
この計時輪列とクロノグラフ輪列は同時に設計された統合設計で、いわゆるモジュールクロノではありません。



計時輪列は地板とクロノグラフ地板(計時ブリッジを兼ねる)の間に挟まれる構造になっており、複雑な切削によってなるべく強度を稼ぐような構造には7121との共通点を見出すことができます。
ムーブメントを薄くするためか、計時用のガンギ車に到達する4番車と垂直クラッチを受ける4番車が別となっているインダイレクト構成を取っています。



細かい点では、衝撃に強いとされる両持ちブリッジの支持部にダブルナットのような構造の高さを微調整する機構が備えられており、ブリッジの傾きとテンワのアガキを精密かつ再現性良く調整することを狙ったと思われる構造を持ちます。
これによりテンワを最適な環境に置けるでしょう。



計時輪列からクロノ輪列への動力伝達は4番車に重ねられたバネが入力と出力の歯車を繋ぐ・切り離すことで動力を伝える垂直クラッチです。
このクラッチはコラムホイールから制御され、バネを挟んで持ち上げる「ペンチ」で接続と切り離しを行います。



コラムホイールは「現代」クロノグラフの文法(お約束)と言っても良いでしょう。
4401ではレバー先端の形状だけではなく、コラムホイール側の形も最適化することでより効率の良い動きを実現しているように読み取れます。
このコラムホイールは2状態で、プッシャーを押すたびに一定角度回転、スタート⇔ストップの状態を制御します。
それにより、クラッチペンチ・リセットレバー・ブレーキレバー・各種積算計の「位上がり」を制御する連結中間車をそれぞれ制御します。



4401の設計で一番の見どころはこの独立リセットハンマーかもしれません。
リセット専用のブリッジに時・分・秒それぞれ独立したリセットハンマーとバネのペアが取り付けられています。
それぞれを独立させることにより、調整も独立に行うことができ、あちらを立てればこちらが立たず…のようなバランス調整を行わなくてもそれぞれを最適に合わせこむことができ、リセットの精度、特にフライバックリセットの時の安定度を向上させることができると考えられます。
それぞれのハンマーは最終的に連結レバーで連結され、同じタイミングでリセットが実行されるようになっています。



動作したままリセットすることができる、フライバックリセットも後付けではなく、統合設計で最初から考慮された構造になっており、コラムホイールがスタート状態でも、レバーが状態を上書きしてリセットを実行することができます。
この上書きにより、クラッチも一瞬遮断されます。

これらの機能は通常のクロノグラフに「追加」するのではなく、初めから機能「ありき」で統合設計した結果として実装され、無理なく統合されています。
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲで登場して熟成され、ロイヤル オーク オフショア、そしてロイヤル オーク50周年記念として搭載された4401クロノグラフ ムーブメント。
ロイヤル オーク "ジャンボ"エクストラ シンを支える7121と同様、クロノグラフを支える基幹ムーブメントとして使われていくことでしょう。




本記事に続いて、この新キャリバーを搭載したモデル群、すなわち「ロイヤル オーク クロノグラフ」の最新形11モデルと、そのダイヤベゼル モデル、さらにフロステッド・ゴールド仕様の「ロイヤル オーク クロノグラフ」 、そして「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」のダイヤモンド・モデルを紹介しているので、引き続き下記のリンク記事、
https://watch-media-online.com/blogs/5600/ から、順にご覧ください。

※『オーデマ ピゲ、ロイヤルオーク50周年モデルよりキャリバー4401搭載の「ロイヤル オーク クロノグラフ 41mm」を見る』 へ続きます。