ブルガリ オクト フィニッシモ オートマティック 世界最薄自動巻きムーブメント2.23mmの時計を発表

 By : KAIROS
今回はブルガリがBasel World2017で発表した何本かを連載として紹介したい。

 1本目はオクト フィニッシモ オートマチック。
バーゼル開幕と同時に各国メディアが報じたことで既にご存知の方が多いと思うが、世界で最も薄い自動巻きムーブメントを搭載した時計である。

 ブルガリは2014年にフィニッシモ トゥールビヨン(手巻き)、そして2016年にフィニッシモ ミニッツリピーター(手巻き)とそれぞれ世界最薄を記録し、今回で3つ目の世界最薄記録保持となる。
 それまで現行品で世界最薄自動巻きムーブメントは、2.35mm 44時間パワーリザーブ マイクロローターを搭載したジュネーブの老舗時計ブランドが2010年より保持していたことは有名である。ケース厚も5.25㎜と薄さではダブルレコードを保持していた。因みにマイクロローターとは、自動巻き特有の腕の動きによって回転する半円状の錘(ローター)が通常はムーブメントを覆いかぶさるように配置されているのだが、そのローターを時計内部に埋め込み、そこで巻上げを行う小型のローターをいう。

 今回、ブルガリが発表したこのオクト フィニッシモ オートマチックは、ムーブメント厚2.23㎜、マイクロローターにプラチナを採用しているキャリバーフィニッシモBVL138である。そしてケースはチタン素材で厚さは5.15㎜。つまりダブルレコードを保持する事になるのではないか。

では1つ1つ見ていきたい。まずはムーブメント(以下、BVL138)である。
 
 これは2014年に発売されたオクト フィニッシモ BVL127(手巻き)の派生したものであることは、ムーブメントを見て直ぐに判断が出来る。しかし、そこへマイクロローターを設置しただけでは時計は動かない。マイクロローターを搭載するという事は、作り手にとって非常に厄介であり難しく、また大きなチャレンジでもある。
それを成しえたのはル・サンティエにあるブルガリの複雑時計工房(旧ダニエル・ロート&ジェラルド・ジェンタ社)だ。BVL127も勿論ここで開発設計されたもので、細かいパーツの設計や仕上げをみても、多くの複雑時計を作り上げてきた同工房だからこそなしえる美しい仕上げやムーブメントに剛性を持たせるため、極力ブリッジを分割せず、テンプ受けに至ってはブリッジ式にしている点も忘れてはならない。40㎜のケースに直径36.6㎜のムーブメントは十分な見ごたえで、振動数も4Hz (BVL127)から3Hz (BVL138)に変更する事で、60時間のパワーリザーブを確保するという努力も見て取れる。
 また秒針が付く4番車を6時位置に持ちながら、8時位置に空いた大きなペースへ秒針を移動させている。個人的な意見だが、あえてそこへ秒針を置くことによりブルガリの個性を演出しているのだろう。この設計を見ると、将来的に何か別の機構を追加することが出来るのではないかと筆者は期待に胸を躍らせてしまう。


 そして同社が選択したプラチナ製マイクロローターを見て欲しい。通常マイクロローターを使用する場合、回転効率を上げるため比重がある金やタングステンを使用するブランドが多い。そして限定品や少量生産品などでは、より高価で比重の重いプラチナを採用し、特別感を出すことが多い。
 筆者が知っているブランドでは、22Kマイクロローターの割り金にパラジウムを入れてより重い22Kにしているブランドがある。しかしブルガリは大胆にも初めからプラチナを採用している。勿論比重が重くなれば、小さなマイクロローターの回転効率向上につながるのだが、その一方でムーブメントの価格上昇→時計本体の値段が高くなる、という事になる。
 
 ケースに目を向けてみると、裏ぶたのネジからベゼルを留める2ピース構造になっている30m防水である。これはフィニッシモシリーズの共通点である。しかし今回注目したいのはその加工である。

 オクトはもともと110面を持つ円と八角形を組合わせた幾何学的ケース構造を持っていた。そのためこのフィニッシモにも同じように面が多く、薄型ながらもその造形美はまさにローマの彫刻や高級イタリアンスポーツカーに近い立体感を演出している。さすがブルガリである。しかしデザインも素晴らしいのだが、それを作り出す加工に驚愕する。なぜなら筆者は 今までここまで多面を持つチタンのケースを見たことがない。技術的には可能だったのだろうが誰も実践してこなかった。いくら切削技術が発達しているとはいえ、それは恐ろしく手間がかかるからだ。
 仕上げはサンドブラスト加工で、チタンのグレーをマットな仕上がりに見せ、落ち着いたイメージを与える。一方、同じグレーでも文字盤は仕上げを変えている。それにより文字盤を強調し、より上品な顔つきに見せているのはさすがである。
 
 高級ムーブメント設計+プラチナ製マイクロローターを採用し、チタンケースにアリゲーターストラップまたはチタンブレスレットを取付けてもなお150万円台(予価)とは目を疑いたくなる。

 まだまだ特筆すべき点はあるが、キリがないのでこの辺で終わりにしたい。

 オクト フィニッシモ オートマチック。世界最薄のこの時計はまさにブルガリを体現しているのではないだろうか。ブルガリが本気を出して時計製造を始めてまだ数年。薄型を極限まで追い求めるウォッチメイキングのチャレンジ精神と技術力。それはかつてローマ帝国が地中海沿岸を幾多の困難とチャレンジにより支配していったように、ブルガリもまたジュエリーのみならず時計業界の記録を一歩ずつ制覇していく。「ローマは一日にして成らず」とはまさにこの事である。

スイスの高級時計製造技術により時計を薄くすることで美しくエレガントに見せる手法と古代ローマから続く伝統を取り入れたデザイン。
ブルガリはジュエラーである。だからこそ作れる美しい時計、それがオクト フィニッシモ だ。


オクト フィニッシモ オートマティーク
 
ムーブメント プラチナ製マイクロローターによる自動巻き、機械式マニュファクチュールムーブメント、
キャリバーフィニッシモBVL 138、コート・ド・ジュネーブ装飾、面取り仕上げのブリッジ、
ペルラージュを施したメインプレート。厚さ2.23 mm、直径36.6 mm、毎時21,600振動、
60時間パワーリザーブ
ケース サンドブラスト仕上げの40 mmチタン製ケース、シースルーケースバック。厚さ5.15 mm。
セラミックをあしらったチタン製リューズ。30 m防水
ブレスレット チタン製ブレスレットにフォールディング・バックルまたは
ブラックのアリゲーターストラップにチタン製ピンバックル


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