【修正・追記】シチズン アテッサ 「HAKUTO-R」コラボモデル GPS衛星電波時計F950キャリバーの操作感を見る

 By : CC Fan

2022年7月9日修正&追記:リュウズ周りの構造について修正、モータの構造について追記

先日、特徴的な「結晶チタニウム」の表情をレポートした、『シチズン アテッサ』ブランド誕生 35周年記念限定モデル第2弾、結晶チタニウムを使用した⺠間月面探査プログラム「HAKUTO-R」とのコラボモデル

既報の通り、宇宙っぽい?七夕の7月7日発売だったわけですが…



どこかで見た流れで…(写真はちゃんと新規)



【私も買いました】のパターンです。
コラボの「HAKUTO-R」も応援したい、というのももちろんですが、アテッサのデザインがモノトーンになり、「結晶チタニウム」と組み合わさることで「全体」としてより好みになったのが決め手でしょうか。
レポートした針止めされたサンプルの「見た目」で惹かれ、同様のGPS機能を持つ各社の機能・操作方法を比較しシミュレートしたところ、シチズンF950キャリバーの操作が自分の「考え方」に適っている、と考えためフラグシップストア東京で予約して購入しました。

購入して一通り操作し、予想通り使いやすい、という事を伝えたいのでレポートします。
文章で書くより動画か?、という事で動画で見ていきましょう。

「モード」の概念



まず、使いやすさの根幹を支えている、と私が理解したのが、「モード」という概念です。
GPS電波腕時計はいくつもの設定とその確認を少ないボタンとリュウズに割り当てて操作しなくてはならず、押して離す、長押し、同時押し…などの押し方を覚えなくてはいけないのが難しい所ではないでしょうか。
各社、それぞれの「俺のやり方」を追求していますが、シチズンF950キャリバーは最上位に6つの「モード」を設定することで操作を階層化し、分かりやすくしました。
「モード」は3時位置の専用サブダイヤルに常時表示される、という事からも重要な概念であることが分かります。

上の動画のように、リュウズを1段引きするとモード切替になり、リュウズを戻すことでそのモードに移行します。
モード切替中は秒針が30秒位置で停止することでモード切替中であることを知らせ、戻すと再びモードに合わせた動作に移行します。

モードの針がまるでデュアルタイムの1時間ごとの時合わせのように「ラチェット感」のある少し溜めてから弾かれるように動いてますが、これは単に見た目だけではなく、リュウズにもラチェットバネが仕込んであるのか、見た目と同期するように指にもラチェットの感覚が伝わります。
リュウズは内部とは機械的に繋がっていない、所謂「電子」リュウズなので、これは「演出」ではあるのですが、まるで機械を操作しているかのような感触が得られ、モード切替だけではなく、後述する時差の切り替えでも操作のメリハリが分かりやすくなっています。

2022年7月9日修正:初稿を掲載後、リュウズは全てが電気的に繋がる単なる「電子」リュウズではなく、「機械」と「電子」を組み合わせた機構である、という情報を頂きました。
1段引きのモード切替にてリュウズを回して3時位置のモード指示針を切り替える動作は、リュウズとモード針が機械的に直接輪列で繋がり、針の動きと「ラチェット感」は、機構とパネで作り出します。
これにより触感で操作に対する反応(フィードバック)を与えて操作している感覚を作り出し、モード指示針は人の力で直接動かせるのでモーターも不要で針位置を検出するだけのシンプルな構成にできる、と正に一石二鳥の構造になります。
2段引きでは、回転センサでリュウズの回転を検出し電気的に信号を送る「電子」リュウズとして動作し、モードに応じて、時計の各部に機械的な制約に縛られず自由に指令を来ることができます。
この機構は感触の「機械」と自由度の「電子」の良いとこどりの機構と理解しました。
修正終わり

モードは以下の6つです。
Time(TME)…基本の2時間帯表示モード、メイン時分針と6時位置サブダイヤルに独立タイムゾーンを設定する
UTC(UTC)…Timeモードの6時位置サブダイヤルをUTCに固定するモード
クロノグラフ(CHR)…シンプルな2ボタンクロノ
アラーム(ALM)…24時間アラームの設定を行うモード
ライトレベルインジケーター(LLI)…現在のバッテリー残量・光発電量を確認する
セッティング(SET)…手動で時刻を設定するモード

2段引きリュウズの1段目は常にモード切替であり、それぞれのモードで更にリュウズを引くとモードに合わせた設定ができる、という階層構造になっているため、操作を覚えやすい、と理解しました。

各モードでリュウズを2段引きした時の機能は以下になります。
Time…タイムゾーン設定(メイン・サブダイヤル)
UTC…タイムゾーン設定(メインのみ)
クロノグラフ…針位置調整(常用するものではない)
アラーム…アラーム時刻設定
ライトレベルインジケーター…タイムゾーン修正(Timeと同じ)
セッティング…うるう秒調整・永久カレンダー調整・手動時刻調整

クロノとライトレベルインジケーターだけ少し例外的ですが、基本的にモードの機能に対応する設定項目が選ばれているのが分かります。

タイムゾーン設定





GPSで時間は常にあっていることが前提のためか、Timeモードでリュウズを2段引くと時刻設定ではなく、タイムゾーンの設定になります(手動時刻調整はセッティングモード内で行う)。

秒針が外周のUTCからの時差・代表空港のスリーレターコードを指し、リュウズを回して移動させることでリアルタイムに修正されます。
2時位置のボタンを押すと調整対象がメインの時分針、6時位置サブダイヤルと交互に切り替わり、「こっちが動く」という事を表すために針が軽く動きます。
4時位置のボタンは現在選択しているタイムゾーンにサマータイムを設定し、タイムゾーンごとに管理されるため同じタイムゾーンであればメインダイヤルとサブダイヤル両方がサマータイムになります。

タイムゾーン入れ替え



旅行時に便利なのがタイムゾーン入れ替え機能です。
ボタンを同時押しすると確認音が鳴った後、メインの時分針と6時位置サブダイヤルのタイムゾーンが入れ替わります。
使い方としては、複数のタイムゾーンを移動するときに一つ前のタイムゾーンをサブダイヤルに送り、その後GPSで現在の位置の時差を設定する…になるでしょうか。

分針がグルグル回っていることからわかるように、メイン分針・6時位置サブダイヤル共に時と分は独立したモーターではなく、分をモーターで回し、それを減速したものが時になる通常の二針クオーツ輪列のようです。
これはモーターの個数が少なくなる分、一個あたりが大きくできるメリットを活かし、通常のクオーツ時計のようなシングルコイルステッピングモーター(正回転は容易だが、逆回転には工夫が必要、逆回転の方が遅い)ではなく、ツインコイルステッピングモーター(時計用ではない一般的なステッピングモーター、正回転と逆回転が同じ速度)を使い、トータルで速度メリットがある方式を取った、と理解しました。
歴史をたどると以前のF100では、時・分・秒の独立モーターを使っていたようですが、F900やF990で時分を高速ツインコイルモーター+輪列にした方式になったようです。

「やりたいこと」による、とも思いますが、「時刻」すなわち時針と分針が特定の位相関係になる表示しかしないのであれば時と分を個別制御しなくていい分、よりシンプルな方式であり、個人的には好みです。
逆に時間だけ進めたい場合(分はそのままでいい場合)でもグルグル回さなければいけない、というのはその通りですが、タイムゾーン修正の頻度を考えるとそれなり速く回れば充分という戦略もあうるでしょう。

構成としては独立して回る多機能な秒針+二針(時分)みたいな構造であり、メインの分針は10秒ごとに1°(60秒で6°、60分で360°)、6時位置のサブダイヤルは1分ごとに6°動きます。
メインが10秒に1°動く、という性質を使うと秒針が秒積算計になるクロノグラフモードでも10秒単位で時刻を読み取ることができます。

「同時押し」のタイミングがかなりシビアで、私は両手で押さないとうまく押せませんでした。
逆に言えば「誤爆」することはほぼなさそうです。

GPS受信結果の確認と時刻情報受信



「モード」の概念があるため、GPS受信はTime(TME)またはUTC(UTC)モードで行います。
この状態で4時位置のボタンを押すと秒針が前回のGPS受信結果(時刻か位置かは問わない)が成功(OK)か失敗(NO)を指し示し、そのまま押し続けると時刻情報受信(RX-TIME)が実行されます。

時刻情報受信は1つのGPS衛星が放送しているGPS時刻と同期します。

時差の確認と位置情報受信



同じくTimeまたはUTCモードで2時位置のボタンを押すと秒針が現在のタイムゾーン(動画では東京TYO)の確認になり、同時に9時位置の機能サブダイヤルに現在のバッテリー残量が表示されます。
そのまま押し続けると秒針が位置情報受信(RX-GPS)を指し、位置情報の受信が行われます。

位置情報の受信は4つ以上の衛星が放送しているGPS時刻と衛星軌道データから現在の緯度・経度を計算し、時刻合わせと時差の設定を行います。
受信するデータと計算量が多いため、時刻情報だけの受信よりも時間がかかります。

時刻情報と位置情報も軽く押すと確認(成否・タイムゾーン)、長押しすると受信(時刻・タイムゾーン)と、自然な対応付けになっていると理解しました。

UTCモード



TimeモードからUTCモードに変更すると6時位置のサブダイヤルが回転し、6時位置のサブダイヤルの時差がUTC固定になります。
メインダイヤルの時差はボタンで確認できますが、サブダイヤルの時差はリュウズを引かないと確認できないため、確定でUTCになるこのモードは個人的には便利だと思います。



UTCからTimeに戻すときもスピーディです。

クロノグラフ



カンタロスが「完成」するまでクロノグラフはいいかな…と思っていましたが予期せず手に入りました。

クオーツだとスプリット(相当)やフライバック(相当)がついているものもありますが、追加機能のないシンプルな2ボタンクロノで、2時のボタンでスタート・ストップ、4時のボタンでリセットという操作になります。
6時位置の24時間表示が60分・24時間同軸積算計になる他、変わっているのは9時位置の機能サブダイヤルが1/20秒計になっており、ストップさせたときに1/20秒単位の表示を行います。
このモードの時は(というよりTime UTCモード以外は)GPSの受信を行わないので、GPSを受信したくないときにはこのモードにしておけばいいことになります。

クロノのリセットはモーターを早送りするクオーツクロノにありがちな方法ですが、高速なツインコイルモーターのおかげかハートカムのように「最短距離」で戻り、0秒を少しオーバーランして戻る「演出」もユニークです。

ライトレベルインジケーター



0100の「お守り」として欲しかったのがこの機能。
時分針と6時のサブダイヤルはTimeモードと同じですが、9時位置の機能サブダイヤルが常にバッテリー残量を表示するほか、2時位置のボタンを押すと秒針が0秒に移動し、1時間ごとインデックスを使い、0-6の7段階で現在のソーラーセルの発電量を報告します。
これで、明るさと発電量の感覚がつかめそうです。

セッティングは手動で時刻を設定・永久カレンダーの設定・うるう秒の設定などに使うので通常時はほとんど用がなく、アラームはまだ試していません。

半日程度使っただけですが、最初に述べたように、「モード」の概念を導入し、メインの時分表示以外はモードによって切り替わる、という方法で理に適っていると感じました。
GPSの受信速度も時刻情報だけならボタンを長押しする方が長い、ぐらいの速さなので歩いているときの信号待ちでも受信することもできそうです。



夜光はインデックスとメインの時分針だけで暗闇ではシンプルに視認性を高めています。

もちろん公式の操作ガイドはちゃんとまとまっていますが、「俺の理解」を一度書くことでより深く理解でき、便利に使えそうです。



フラグシップストアの時計は、「カンパノラ」コスモサインデザインに…前から?

そして、0100の時は持ち帰った「箱」はマングローブに…

2022年7月9日追記:高速度を追求したムーブメント運針の速さとモーターの使い方に「なるほど!」があったので追記します。

まず速さの方から、各種インジケーターを担う秒針を高速で回すことでストレスのない表示を実現している様子を動画に撮影できないか、という事でやってみました。



Timeモードでボタンを交互に押すことで現在のタイムゾーン(東京TYO)と最終受信ステータス(OK)を交互に表示させている様子です。
秒針が高速で移動し、ボタンを押してすぐに対応するステータスが表示されていることが分かるかと思います。
秒針と共に、9時位置の機能針も曜日とバッテリー残量の間を行き来していることが分かります。

もう一つはモーターの使い方について「なるほど!」というポイントを見つけたので紹介したいと思います。
クロノグラフを操作しているときに違和感を感じたことから始まります。



クロノグラフを停止させると、9時位置の機能ダイヤルが1/20秒積算計となり、1/20秒単位の測定値を表示、再スタートすると0位置に戻るのですが、どの位置でも(19/20秒であっても)逆時計回りで戻ります。
回転速度的に、シングルコイルモーターを工夫して逆回ししているように見えるため、これ時計回りで戻せばいいのでは…?と思いました。



リセットする場合も1/20秒積算計は逆時計回りで戻ります。

なんでこうなるのか?と悩んでいたんですが(ほぼ偶然で)理由が分かりました。



日付が変更される2つのタイムゾーンの交換を実行した様子です。
9時位置の機能針が高速で回転し、それに合わせて4時位置の日付表示が1日進むまたは戻る、という動作をしているのが分かりますでしょうか。

つまり、機能針と日付表示は同じモーターで動いており、通常の日付表示が真夜中(操作禁止時間帯)だけ日付表示に噛みあって日付を送るように、機能針の何回転かに1回、日付表示に噛みあって送る(または戻す)、という動作になっています。
逆に日付が関係ないときに噛みあわないようするためには機能針の回転範囲を制限する必要があり、クロノグラフの1/20秒積算計は進んだ分だけ戻ってたのはこのためだと考えられます。

この方法であれば通常時には1日1回しか動かない日付送りに独立したモーターを設けなくてよいため、よりシンプルな構造にでき、「なるほど!この手が!」と驚きと共に、という事は通常の24時の日送りも…?と思って待ち構えてみました。



回った!
曜日表示を切り替える時のアニメーション、と考えるとユニークな感じではないでしょうか。
「同じこと」をよりシンプルに実現する「機械」と「電子」を組み合わせたリュウズと同じく素晴らしいアイディアだと思います。

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