パネライのコンセプトウォッチ「サブマーシブル Elux LAB-ID」実機レポート&その特許から構造を読む
By : CC Fanパネライがリリースした「完全機械式による発光」機構を備えた「サブマーシブル Elux LAB-ID」、パネライが1966年に特許を取得し、イタリア海軍の計器や滑走路、標識に使われたエレクトロルミネッセンス技術Elux Paneraiからインスピレーションを得た発光システムを備えています。
実機を拝見したのと、特許調査を行って構造の概要が分かったのでレポートします。
いきなり発光しているところを。
8時位置にあるガード付きのプッシャーを押し込むことでロックが解除されるような感触と音と共にシステムが起動、回転ベゼルのゼロ位置の丸、アワーインデックス、スモセコのサークル、アワーインデックス、パワーリザーブインジケータ、そして時分針が自発光します。
補助的にスーパールミノバX2も使われていますが、システムによる発光は機械式時計と同じエネルギー源のゼンマイで駆動される交流発電機による電力で賄っています。
「4つの特許取得」のシステムですが、発電システム自体は特許になっておらず、特許の内容はベゼルのライトを選択的に光らせる機構、回転する針に電力を供給する機構、システムの動作プッシャーを保護する構造、そしてTi-Ceramitechの製造方法が特許として挙げられています。
まずは発電機構を見ていきましょう。
時計本体の2つの計時用香箱に重なるように、ELUXシステム専用の香箱が4つ取り付けられています。
構造としては「ふんわり」な所もありますが、リュウズ・自動巻き機構と共に計時用香箱と共有しており、リュウズによる手巻き・自動巻き機構による巻き上げによって両方が同時に巻き上がっていくようです。
「先に計時用が巻きあがる」という事のようなので、計時用は巻き上がったらスリップし、それ以降はELUXシステム用の香箱が巻き上げられる、と予想しました。
6時位置にあるパワーリザーブインジケーターはELUXシステム香箱のパワーリザーブを表示しており、最大30分発光を続けることができるようです。
香箱から加速輪列を経て発電機へ回転が伝わります。
磁石が回転、コイルが固定の構造の交流発電機によって、80回転/秒の回転から240Hzの交流を生成します。
この交流をエレクトロルミネッセンスの原理で光るLED(発光ダイオード)に直接供給し、整流や安定化を行う電子回路の介在なしで光らせることを「完全機械式」と呼んでいる、と理解しました。
LEDには極性(アノードとカソード)があり、電流の方向が一定でしか光りませんが、2つをペアにして互い違いに接続することでどちらの方向でも光り、逆電圧に対する保護も兼ねるテクニックがあり、おそらくのようにしていると予想します。
交流で点灯させている、ということはELUXシステムのパワーリザーブが切れかかって力が弱くなってくると、発電機の回転速度が落ちることにより、LEDの「チラつき」が目で見てわかるという点からも判断することができます。
これで発光させることはできましたが、固定されているインデックスはまだしも回転ベゼルや針では動く対象に光または電力を伝えなければいけません。
これらの機構が特許になっています。
まずはベゼルを見ていきましょう。
単純に考えれば、LEDを回転ベゼルに設置すればいいと考えられますが、その場合は電力を伝えるための接点であるブラシが外部に露出することになり長期的な安定性に不安が残ります、逆にぎっしりとLEDを固定で敷きつめ、どの位置でも光が見えるようにする、とすると直接見えている部分以外の光を捨てていることになり無駄が多くなります。
この特許ではLEDは360°に均等に間隔を置いて設置し、それを透明または半透明の導光パーツ(108)によって開口部まで導く、という構造を提案しています。
この構造であれば敷きつめる方法よりも光の利用率は良く、LED自体は固定にできるので接点の問題も発生しません。
続いて、針への給電に関しては風防とケースで守られた比較的安全な場所のためブラシを使った方法が取られています。
針の取り付け部全体は絶縁素材で作られ、その上に電力を伝える金属素材のパターンが形成されています。
電力は文字盤基部の固定部分から短針(時針)の回転部に伝わり、更に長針(分針)の回転部に伝わる構造になっています。
短針の回転は内側の軸から上のフタみたいな構造を経て伝わります。
いわゆる「スリップリング」と呼ばれる構造に近いと考えられます。
特許図案の中の短針の構造、下側のスリップリング(302)から受け取った電力を自身のLED(404)と長針へのスリップリング(300)へ分配しています。
LEDは根元に取り付けられており、ベゼル同様に光を通す素材で作られた導光構造(402)によって均等に分配されます。
断面図を見ると短針の構造が上部まで伸びていること、中心の軸が凹構造で折り返していることが分かります。
最後の特許はELUXシステム起動プッシャーの保護システムに関するもの。
通常時はガード構造がプッシャーを覆っており、衝撃から保護します。
指先で軽く持ち上げることでプッシャーが露出、操作できるようになります。
操作性と保護能力を両立するスマートな方法と理解しました。
押し付ける力を発生させることで、遊びが少なくなるようにしているようです。
直径49mmのド迫力…
発光システムを内蔵しているためか、厚みがある独特の造形の針でそれがユニークな印象に一役買ってると感じます。
ただ、チタンをベースにしたTi-Ceramitech素材なので重さはそこまでではない、と感じました。
ケースバックにはELUXのロゴが。
ユニークなアプローチを研究開発するパネライの姿勢は個人的には非常に好印象です。
【お問合せ】
オフィチーネ パネライ
0120-18-7110
[Panerai]
パネライは1860年、時計工房兼時計店、そして時計学校としてフィレンツェに創業し、長い間イタリア海軍の納入業者として、特に特殊潜水部隊のための高度精密機器を納入していました。ルミノール、ラジオミールをはじめとする当時パネライが開発したウォッチは、何年もの間軍事機密扱いとされてきましたが、1997年にリシュモン グループの傘下に入った後、国際市場に参入しました。
今日、パネライはスイス、ヌーシャテルにある自社工房マニュファクチュールで自社製ムーブメントとウォッチを開発・製造しています。イタリアのデザインと歴史をスイスの時計製造技術と見事に融合させています。パネライウォッチは、独自の流通ネットワークおよびパネライ直営ブティックを通じて世界中で販売されています。
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