ジャン・デュナン パラス

 By : CC Fan
またずいぶん時間が空いてしまいましたが、ジャン・デュナン(Jean Dunand)のタイムピース実機レポート最終回、パラス(PALACE)をご紹介します。
パラスは2011年のGTE(Geneve Time Exhibition)で発表されたモデルで、しばらくしてジャン・デュナンは休止状態になってしまったため、トゥールビヨン・オービタルシャバカと違い、日本に実機が来たことはないそうです。
他のジャン・デュナンのタイムピース同様、このピースも一仕様は一つしか作らないピース・ユニーク(Piece Unique)の原則を守っています。



共同創業者、ティエリー・ウルヴェイ(Thierry Oulevay)とクリストフ・クラーレ(Christophe Claret)がともにフランス人であることから、"フランスの黄金時代"である1880年から1930年ごろのフランスをイメージさせる意匠を各部に凝らしています。
ムーブメントは建築をイメージさせる鉄骨状のプレートによって組み立てられています。



ピントがずれ気味ですが、ケースサイドは1989年の第4回パリ万博の象徴として建築されたエッフェル塔をイメージした意匠とサファイヤクリスタルの開口部を持ちます。
この開口部により、ムーブメントの立体的な構造を正面からだけではなくサイドからも堪能することができます。



時間表示以外の機能はトゥールビヨン、リネア(Linear:フランス語)式表示のパワーリザーブインジケータ(向かって右)とGMT(向かって左)、モノプッシャークロノグラフです。
レースサーキットをイメージしたという楕円形のインデックスを持つリネア表示はあえて駆動するラックギアを目立たせています。
24時間表示のGMTは12時間ごとのレトログラードで、レトログラード時に矢印が180度回転することで、午前と午後を区別する仕組みです。



メインの香箱からトゥールビヨンまでの輪列は文字盤側に組まれており、シースルーバックからは伝統的な水平クラッチを用いたモノプッシャークロノグラフの機構を観察できます、各レバーは伝統的な円弧ではなく、特徴的な直線な意匠です。
これは蒸気機関車の動輪と連結棒をイメージしたデザインで、"当時のパワフルさ・荒々しさ"を表現しているそうです。
荒々しさを表現してはいますが、仕上げはきちんと行われており、そのコントラストが面白いです。



竜頭とは逆サイドから、こちらもエッフェル塔を模したデザインと開口部があります。



GMTの修正用プッシャーは6時位置に配されています。



立体的なムーブメント構造は伝わりますでしょうか…



12時側からです。
四角い地板に対して、クラーレが得意とする12時に香箱、6時位置にトゥールビヨンを配した基本レイアウトはそのまま使用し、サイドにリネア式ディスプレイを配置しています。

見えづらいですが、竜頭からの香箱にはモーターサイクルからインスピレーションを受けたチェーンが使われています。



マクロ撮影に限界があったので公式資料より香箱周辺の写真です。
チェーンによって香箱が巻き上げられる構造がわかります。

香箱と同軸にはクロノグラフの60分積算計が配置されており、積算計の軸は香箱軸を貫通しています。



ムーブメントは建築的な意匠を強調するため古典的な柱でブリッジプレートを支える構造を持ちます。
合計10本の柱がそれぞれのプレートを支えています。

スクエアケースに加え、48mm×49mmとまさに堂々とした巨大なケースに収まっており、腕につけることはあまり想像できない感じですが、その分非常に見応えのあるムーブメントになっています。

ジャン・デュナンのタイムピースは紹介した3本 グランドコンプリケーション(シャバカの記事で紹介)で、現在は2015年のバーゼルワールドで復活したものの、続報がない状態です。
しかし、来年のバーゼルでブースを確保しているらしく、新作?を出すという情報もあるのでより魅力的なピースが登場するかもしれません。

今後も注目していきたいです。

関連 Web Site (メーカー・代理店)

Jean dunand
http://www.jeandunand.com/index.php

CHRISTOPHE CLARET
http://www.christopheclaret.com/

Noble Styling Inc.
http://noblestyling.com/