スイス紀行、始動したボニクセンのワークショップに突撃、「究極」のカルーセルについて

 By : CC Fan

カンタロスリブートプロジェクト
のためにスイスに来ています。
どうせならスイスで取材しよう!ということでいくつかの取材を「熱いうち」にレポートしたいと思います。



関口氏のワークショップをWatches & Wondersシーズンに訪問したときに関口氏をサポートする「チーム関口」の一人であるジャソン(左)と再会し、現在新しいブランドをスタートさせていること、伝統的な時計製造技術の伝承を目指す永遠の時計財団(Time Aeon Foundation)のプロジェクトである「時計の誕生(Naissance d’une Montre)」の4作目として制作を目指しているという話を伺いました。

ジャソンは関口氏と同じく元クリストフ・クラーレ、最初期にカンタロスを根本的に見直すという「カンタロス・インプルーブメント・プロジェクト」で知り合い、クラーレ退社後にいろいろな時計ブランドをサポートする会社を立ち上げていました、関口氏同様にカンタロスが繋げた縁、とも言えそうです。

ブランド名は「ボニクセン(Bonniksen)」、トゥールビヨン同様に脱進機ユニットを回転させることで姿勢差をキャンセルするカルーセル機構を考案したBahne Bonniksen(1859 - 1935)の名前を冠しています。

ブレゲが考案したトゥールビヨンよりも後年のカルーセル機構はトゥールビヨンのデメリットを改善した機構でしたが、現在はトゥールビヨンほど知名度はなく、ブランパンが一部で採用するぐらいです。
ボニクセン本人は精度コンクール入賞などの実績によってカルーセルの有効性を証明してきましたが、さまざまな改善策を取り入れた「究極」の構成は第一次世界大戦の勃発により実現できなかったそう、その「究極」の構成を今回のボニクセンでリストウォッチとして蘇らせることを目指します。



こちらはTime Aeonプロジェクト提供のチームメンバーの公式写真、ボニクセンの共同創業者でCEOのJason Chevrolat(一番左)と同じく共同創業者のMaximin Chapuis(左から3番目)、グルーベル・フォルセイCEOのミシェル・ニデッグ(左から2番目)、David Bernard(一番右)の4人が写っています。

伝統的な手作りによる時計の誕生では、カルーセルを最大限フィーチャーした時計を制作します。


現在のスケッチ、12時位置のサブダイヤルに時分でセンターには秒で秒表示を最も大きく読み取りやすくする、という高精度を主張するデザイン、そして可視化されたカルーセル、とボニクセンの要素をデザインに落とし込んでいます。


裏面にはあまり見ない機構が…?

実際にお話を伺いましょう、ボニクセンのオフィスとワークショップが入った建物に向かいます。



築100年を超え、世界遺産にも登録されているという建物、この中にボニクセンがあります。



ジャソンが登場!



後述するカルーセルの特徴である逆方向の回転と緩急調整のインジケーションに用いられる+-の記号とカルーセルのCを意匠化したロゴ。



別件で関口氏も合流。



ジャソンの娘さんが描いた、というカルーセルのスケッチも。

ワークショップに移動します。



「ハンドメイド」に必要な手動工作機械群と時計師机が整然と並んでいます。
ボニクセンのためにジャソンがわずか半年で手配したそう。



旋盤、ボール盤、ジグボーラー…



「秘密兵器」のパンタグラフ、オリジナルをなぞると、機械的な仕組みで縮小したものを削り出します。



セットされたいたものは数字でしたが、使い方によっては歯車を削り出すことに使っている作り手もいるそうです。



インデックス付きの旋盤。



ジャゾンと盛り上がる関口氏。



グルーベル・フォルセイのブックレットのプロジェクト紹介にも載っている!の図。

さて、あらためて「カルーセル」とは何でしょう、とジャゾンに質問します。
その解説のためにアクリル模型が登場します。



トゥールビヨンとカルーセルの最も大きな違いは、トゥールビヨンがケージの回転に必要なエネルギーと脱進に必要なエネルギーを一つのセンターピニオンから供給しているのに対し、カルーセルは二つの輪列でケージの回転と脱進に必要なエネルギーを別建ての逆方向の回転で供給します。
これによりトゥールビヨンでは固定だった四番車がカルーセルでは回転します、四番車が固定だとケージ位置と四番車の噛み合い位置の関係は常に一定、偏りがあるとその誤差が常に発生します、対して回転していれば偏り自体を回転によって散らすことができます。
また別輪列にすることでケージに供給するトルクと脱進機に供給するトルクをより厳密に設定することができます、スケッチの時点で気が付かれたかもしれませんが、香箱も独立かつ異なるサイズにすることでより最適を目指しているようです。

この二つの逆方向の回転、が+-で示されるロゴの意匠につながります。



キャリバーナンバーは1892、これはボニクセン本人がカルーセルの特許を取得した年を冠しています。
またこの写真にはもう一つの特徴的な機構も映り込んでいます、おわかりいただけますか?



その部分だけを取り出した、別のアクリル模型がこちら。

カルーセルの下部の軸が摩擦車とかローラーと呼ばれる機構で保持されています。
これはすり鉢状のローラー三つでほぼ同径の太い軸を支える機構で、細い軸より摩擦で有利とのこと。
実際にはルビーのローラーで、金属の軸を受ける構造になります。

三つのローラーが正三角形上に配置され、その中心にケージの軸が収まります。



横から見ると構造がわかりやすいかも…と。

この機構はジョン・ハリソンによって考案され、ボニクセン本人も有効性は理解しており、実際に組み込もうと計画はしたものの、第一次世界大戦によって中断されて実現には至らなかったそう。
これを採用し、「腕化」することにより、今までは掛け時計や置時計でしか採用されていなかった摩擦車を腕で実現する、というのはかなり大きなチャレンジでしょう。



詳細は省きますが、カンタロスに対するアレコレを経て、個人的にはジャソンをかなり信頼していました。
その彼が取り組むからには単なるハンドメイド時計ではないだろう…と思ってはいましたが、今回お話を伺うとただモノではない、ということがわかりました。

まだまだ先は長いようですが、これからも追っていきたいと思います!


https://bonniksen.com/