ヴァシュロン・コンスタンタンの至宝レ・キャビノティエより、1点製作のユニークピース2機種が発表。SIHH2018での最多複雑機構時計!

 By : KITAMURA(a-ls)

ヴァシュロン・コンスタンタンから最高峰の特別なマスターピースが2本発表された。
「グランド・コンプリケーション“オーナメンタル”」と「グランド・コンプリケーション“クロコダイル”」。いずれも1点のみの製作で、ヴァシュロン・コンスタンタンの至宝と言える「レ・キャビノティエ」コレクションからのユニークピースである。


レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション“オーナメンタル”












レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション“クロコダイル”


「レ・キャビノチェ」とは、ヴァシュロン・コンスタンタンの技術の粋を集めて製作された時計だけに冠される名称であるが、あまり馴染みのない部分もあるので、少し説明しておきたい。

“キャビノチェ”とは"屋根裏部屋”の意味で、もともとは18世紀のスイスで高度な技術を有した時計職人を指す言葉だった。スイスの時計師には、窓さえあれば日光が当たることが約束される屋根裏部屋(キャビネット)を工房・アトリエとしていた者が多かったことに由来している。
高名なキャビノチェの顧客には、他に例のない時計を所有したいと欲する富裕層がいて、彼らの欲求と新たな技術開発に挑みたいマスターウォッチメーカーとの利害が一致し、その共同制作によって1点物の貴重な複雑時計が作られることが多かった。限られたユーザーが時計師と直接話し合いながら行う(Be Spoke=ビスポーク)という特別注文形式がこれである。
以来、伝統的に“キャビノチェ”と"ビスポーク”は、超複雑機構の時計や超絶工芸による装飾時計など、特注品の発注・製作を意味する言葉となっていく。
ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史的顧客たち、たとえばロシア皇帝アレクサンドル2世、ニューヨークの銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニア、自動車王ジェームズ・ウォード・パッカード、エジプトのフアード1世やファルークといった王、彼らはヴァシュロン・コンスタンタンが製作したユニークピースの熱心な収集家であり、そしてその注文窓口が「アトリエ・キャビノティエ」であった。
これはあまり知られていないことかもしれないが、他ブランドではほぼ絶滅した「キャビノティエ」部門が、ヴァシュロン・コンスタンタンにはつい最近まで2つ存続していた。
1)「アトリエ・キャビノティエ」:史上最も複雑な時計「リファレンス57260」など、顧客発注ベースのビスポーク・サービスを受注する部門(工房)。
2)「メートル・キャビノティエ」:今回の新作2点のように、ヴァシュロン・コンスタンタンが、その技術の粋を極めた世界1本の限定モデルを制作する部門

どちらも「世界唯一の時計を制作する」ということには変わりないのだが、違いは、その主導が「顧客の発注=(1)」か、あるいは「ヴァシュロン・コンスタンタン主導=(2)」かという点にあった。しかし2017年にこの2つの部門は統合され、「レ・キャビノティエ」という名称になったのである。ヴァシュロン・コンスタンタンにおいて、《Piece unique》や《Les Cabinotiers》の文字が刻印されるのは、ここで受注・製造された時計を示し、文字通り、世界に1本しか存在しない証しとされるのである。

ちなみに日本では銀座ブティックが、ビスポーク・サービス「レ・キャビノティエ」の窓口となっているので、世界1本限定のユニークピースのオーダーを相談することも可能だ。



(以下、プレスリリースを多少編集して引用)
高級時計においては極めて難度の高い複雑機構を数多く搭載し、芸術的なエングレービングによってその魅力が一段と引き立てられたモデルです。それぞれ手彫りのエングレービングが施されたゴールドのケースに縁取られて、ケースの表と裏の両側に文字盤が備わり、16または15種類の複雑機能を表示します。
これらをすべて動かす手巻きムーブメントには、まさに小型化の絶妙な技術と卓越した手作りの業が凝縮されています。

【特徴】
● 多彩な複雑機構とメティエ・ダールの融合
● グランド・コンプリケーション・ムーブメント
● ダブルフェイスの文字盤に(ミニット・リピーター、トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、均時差などを含む)計16または15種類の複雑機能を表示
● 18Kゴールド製ケース全体をすべて手彫りエングレービングで装飾
● 1点製作のユニークピース
「グランド・コンプリケーション“オーナメンタル”」は、ダブルフェイスが濃いパープルに彩られ、ケースのエングレービングに“ヴィクトリアン”と称される装飾様式が用いられています。一方「グランド・コンプリケーション“クロコダイル”」は、ダブルフェイスがスレートグレーに彩られ、ケースにクロコダイルの姿が彫られています。これらの格調高い時計に仕上げのタッチを加えるのは、エレガントなアリゲーターレザーストラップと、それぞれのケースを装飾するエングレービングのテーマと同じモチーフが施されたクラスプです。また、巻き上げ装置が備わる高級なマカッサル・エボニー(縞黒檀)製のウッドボックスも付属します。

1点もののユニークピースで、並外れたムーブメントとケースを特色とするこれら2つの新しい時計は、2005年に発表された世界で最も複雑な腕時計から想を得ています。その腕時計とは、ジュネーブに拠点を構えるマニュファクチュールのヴァシュロン・コンスタンタンが250年に渡って培った時計の専門技術を称えて作られた「トゥール・ド・リル」です。今回発表される、ダブルフェイスでケースの表と裏側に16または15種類の複雑機能を表示するこれら2つのマスターピースについても、小さな空間内に多くの複雑機構を組み合わせて搭載し、それらをメティエ・ダールの素晴らしい職人技で引き立てるヴァシュロン・コンスタンタンの専門技術がまたしても見事に発揮されています。


これら2つの新しい時計が誕生したのは、“レ・キャビノティエ”というヴァシュロン・コンスタンタンの高級時計の分野に設けられた特別な部門です。かつてのジュネーブでは、高度な専門技術をもった時計職人たちが屋根裏に工房を構え、名だたる顧客の注文に応じて1点ものの時計を製作していました。彼らは「キャビノティエ」と呼ばれましたが、そうした過去と結びつきを復活させたのが現在のレ・キャビノティエです。これら2つの時計は、傑出した時計技術とメティエ・ダールの専門的な職人技を融合させ、芸術的な1点ものを創作するというキャビノティエの哲学が反映された、本質的に二つとない逸品なのです。さらに、独立した機関が厳格な規定を設けて品質を認証するジュネーブ・シールの諸項目に合致して、その認証を取得しているのも誇るべき点です。


16または15種類の複雑機能を動かすムーブメント
2つのユニークピースにそれぞれ搭載された手巻きムーブメントには、ヴァシュロン・コンスタンタンが小型化と工作技術の両方で収めた目覚ましい成果が表れています。このムーブメントは16または15種類にも及ぶ複雑機能を動かし、しかも大半は天文表示に関するものです。時と分に加え、表側の第一文字盤にはこの他に、ミニット・リピーター、均時差、トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー(日付、曜日、月、閏年)、パワーリザーブ、日の出、日の入りの時刻といった11の機能が備わります。「レ・キャビノティエ・グランドコンプリケーション“オーナメンタル”」にはさらにリピーター機構のトルク表示もあり、ミニット・リピーターのパワーリザーブがわかります。裏面の第二文字盤にも非常に興味深い天文複雑機能がふんだんに盛り込まれ、天空図、分点(春分・秋分)、至点(夏至・冬至)、恒星時の時と分、ムーンフェイズ(月相および月齢)、四季と黄道12宮を表示します。




表側の文字盤
主要な複雑機能の多くがこちら側に集中していますが、各表示は一目瞭然に判読できます。複雑時計の熟達した技術を語るミニット・リピーターは、任意の操作によって時刻を時、15分、1分単位の音に変換して告げるチャイム機能に加え、巧妙な求心式フライング・ストライク・ガバナーも備わります。完全に無音でメカニズムを過度の損耗から防ぐこのガバナーは、ハンマーがゴングを打つ1音1音がはっきり聞き分けられ、一定の間隔でメロディが成り立つように、ストライク機構の速度を調整します。

ヴァシュロン・コンスタンタンにとって卓越した時計技術の象徴とも呼ぶべきトゥールビヨンは、キャリッジがブランドのシンボルマークのマルタ十字に象られています。1分間で1回転するトゥールビヨンは、重力による影響を軽減してムーブメントの精度を向上させるのと同時に、キャリッジがスモールセコンドの役を果たします。また、“未来の時間を記憶する”パーペチュアルカレンダーは、グレゴリオ暦の複雑なカレンダーを自動的に正しく表示し、人為的な修正は400年毎に1日しか必要ありません。平均太陽時と真太陽時の差を分で表示する有名な均時差の製作も、非常に専門的な技術を要します。この第一文字盤を締めくくるのは、カスタマイズが可能な複雑機構、すなわち日の出、日の入り時刻の表示です。これは利用者の都市に合わせて調整できるようになっています。

時計の裏面
第二文字盤も機能が充実しており、それらが2層にアレンジされています。中央のディスクには天空図が描かれ、東西南北の方位点が添えられています。北と南の位置の窓に1年間の月と“真”の太陽時に一致する恒星時が示されます。その周囲に沿って回転する短針は月齢の表示用で、前回の満月からの経過日数を指し表します。また、カウンターウェイトに小さな太陽のモチーフがアクセントを添えた細長い針のほうは、日付と黄道12宮、四季、分点(春分・秋分)、至点(夏至・冬至)の表示を担います。

これら2つのムーブメントは、ヴァシュロン・コンスタンタンの歴代ムーブメントの中で最も複雑な部類に入ります。「グランド・コンプリケーション“オーナメンタル”」は839個、「グランド・コンプリケーション“クロコダイル”」は836個の部品から成り、どちらも全部品が直径33.9mm、厚さ12.15mmのサイズに集約され、58時間のパワーリザーブが備わります。16ないし15種類もの複雑機構を個々に作動させるメカニズムをこのような小さな空間に収めただけでなく、それらを完璧に機能させ、ダブルフェイスの文字盤の上に最適な視認性を実現したことは、離れ業以外の何物でもありません。ヴァシュロン・コンスタンタンが完全に自社内で開発製造したこれらのムーブメントを収納する直径47mmのゴールド製ケースは、ミニット・リピーターのストライク音が最もよく響くように特別にデザインされています。さらに、各部品が最善の性能を発揮するように微妙な調整と組み込みがなされ、仕上げについても入念に手作業で行われています。


"レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・オーナメンタル

この桁外れのモデルは、サンレイサテン仕上げが施された濃いパープルの上品なゴールド製の文字盤上に多数の機能を表示します。表側の文字盤は、アプライド・インデックス、ドーフィン型の針、繊細なスネイル模様のサブダイヤルなどが配され、精緻に加工されたホワイトゴールドのケースが放つ眩い輝きに包まれています。ベゼルとケースバンド、ラグ、クラスプに彫り込まれているのは、19世紀英国の“ヴィクトリアン”と呼ばれる建築様式から着想した装飾パターンです。ヴァシュロン・コンスタンタンが培ってきた伝統的な技を生かしたこの小さな彫刻作品には、器用で繊細な手の妙技が表現され、ここではエングレービングのさまざまな種類の細線細工と合わせて、パウンス装飾とバス・レリーフ(浅浮き彫り)の技法が用いられています。彫金職人がビュランやその他様々な専門工具を使い、手作業によってこの複雑な金細工を仕上げるには150時間以上を要します。

 

レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・クロコダイル

2頭のクロコダイルと大小のスケール(ウロコ)で装飾されたこのモデルは、強烈な個性を放っています。爬虫類を立体的に描写したデザインは1つのゴールドのブロックから彫り出され、パウンス装飾やエングレービングのさまざまな種類の細線細工(マット、サンドブラスト、ブラシ、ポリッシュ)の技法が駆使されています。注意深いコントロールを要するこの作業には、名人芸の技量が求められます。特にクロコダイルの目はこの動物のパワーを強調するキーポイントになるため、加工に細心の注意を払いました。また、ベゼルやラグ、ケースバックに散りばめられたウロコ模様の繊細な細工も、このミニチュアのマスターピースに生き生きとした表情や立体的な陰影をもたらしています。それを生み出したのは、まさに熟達のマスター・エングレーバーの専門技術です。このピンクゴールドの彫刻作品は、時計の表と裏側にそれぞれ配されたスレートカラーの文字盤とも、完璧にマッチしています。極めて見やすく美しい文字盤の表示は、表側に配されたアプライド・インデックス、リーフ型の針、繊細なスネイル模様のサブダイヤルによって一段と引き立てられています。 


「レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション“オーナメンタル”」と「レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション“クロコダイル”」は、ケースバックに“Pièce  Unique”、“Les Cabinotiers”、“AC”(Atelier Cabinotiers)の文字を刻み、アリゲーターレザーストラップと手彫りで装飾したクラスプが組み合わされ、修正ペンやルーペなどがセットになった贅沢なマカッサル・エボニー(縞黒檀)製の巻き上げ装置付きウッドボックスが付属します。




レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・オーナメンタル
リファレンス・ナンバー 80175/000G-B280 技術データ

ジュネーブ・シール 取得
キャリバー・ナンバー ヴァシュロン・コンスタンタン自社開発・製造
駆動方式 機械式手巻き
ムーブメント・サイズ 直径33.90mm×厚さ12.15mm
パワーリザーブ 約58時間
振動数 2.5Hz(毎時1万8000回振動)
部品数 839
石数 42
表示 時、分、トゥールビヨンのキャリッジによる
スモールセコンドの秒

【16の複雑機能】
1. ミニット・リピーター
2. トゥールビヨン
3—7 パーペチュアルカレンダー(日付、曜日、月、閏年)
8. パワーリザーブ
9. 均時差
10. 日の出時刻
11. 日の入り時刻
12. 天空図
13. 月齢と月相(ムーンフェイズ)
14. 恒星時の時と分
15. 四季、至点、分点、黄道12宮
16. リピーター機構トルク

各種調整 針の時刻合わせ:リュウズ(2ポジション)
ムーンフェイズ:ケースサイドの修正用プッシュピース
パーペチュアルカレンダー:ケースサイドの修正用プッシュピース(2か所)
天空図:リュウズとねじ込み式プッシュピース
ケース 18Kホワイトゴールド
ベゼル、ケースバンド、ケースバックに手彫りによる
ヴィクトリア様式の装飾パターン
ケース・サイズ 直径47.0mm×厚さ19.1mm
文字盤 18Kホワイトゴールド、濃いパープル、サンレイサテン仕上げ
18Kホワイトゴールド製のアプライド・インデックスと
18Kホワイトゴールド製の針
ストラップ ダークブラウンのミシシッピ・アリゲーターレザー、
手縫いサドルステッチ、ラージ・スクエア・スケール
クラスプ 18Kホワイトゴールド製クラスプ
ヴィクトリア様式の装飾パターン
ポリッシュ仕上げの半マルタ十字
付属ボックス マカッサル・エボニー(縞黒檀)製、巻き上げ装置付き
アクセサリー 修正ピンとルーペ
ユニークピース
時計裏面に《Pièce Unique》、《Les Cabinotiers》、《AC》の文字を刻印




レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・クロコダイル
リファレンス・ナンバー 9700C/001R-B187 技術データ

ジュネーブ・シール 取得
キャリバー・ナンバー ヴァシュロン・コンスタンタン自社開発・製造
駆動方式 機械式手巻き
ムーブメント・サイズ 直径33.90mm×厚さ12.15mm
パワーリザーブ 約58時間
振動数 2.5Hz(毎時1万8000回振動)
部品数 836
石数 42
表示 時、分、トゥールビヨンのキャリッジによる
スモールセコンドの秒
15の複雑機能
1. ミニット・リピーター
2. トゥールビヨン
3—7 パーペチュアルカレンダー(日付、曜日、月、閏年)
8. パワーリザーブ
9. 均時差
10. 日の出時刻
11. 日の入り時刻
12. 天空図
13. 月齢と月相(ムーンフェイズ)
14. 恒星時の時と分
15. 四季、至点、分点、黄道12宮

各種調整 針の時刻合わせ:リュウズ(2ポジション)
ムーンフェイズ:ケースサイドの修正用プッシュピース
パーペチュアルカレンダー:ケースサイドの修正用プッシュピース(2か所)
天空図:リュウズおよびねじ込み式プッシュピース
ケース 18K(5N)ピンクゴールド
ベゼル、ケースバンド、ケースバックに手彫りによる
クロコダイルの装飾パターン
ケース・サイズ 直径47.0mm×厚さ19.1mm
文字盤 18K(5N)ピンクゴールド、スレートカラーオパーリン
18K(5N)ピンクゴールド製のアプライド・インデックスと
18K(5N)ピンクゴールド製の針
ストラップ ダークブラウンのミシシッピ・アリゲーターレザー、
手縫いサドルステッチ、ラージ・スクエア・スケール
クラスプ 18K(5N)ピンクゴールド製クラスプ
クロコダイルの装飾パターン
ポリッシュ仕上げの半マルタ十字
付属ボックス マカッサル・エボニー(縞黒檀)製、巻き上げ装置付き
アクセサリー 修正ピンとルーペ
ユニークピース
時計裏面に《Pièce Unique》、《Les Cabinotiers》、《AC》の文字を刻印