独占取材 世界初!江戸切子を文字盤に使用した日本の技術と芸術を形にした腕時計 DAIZOH MAKIHARA「菊繋ぎ紋 桜」

 By : KAIROS
お詫びと訂正: 

商品の価格に誤りがございました。誠に申し訳ございません。

658万円+税 → 558万円(税込) 



昨今、独立時計師という言葉が多く聞かれるようになってきた。有名なのはAHCI(Académie Horlogère des Créateurs Indépendants)に所属する時計師のメンバーであり、日本にもそのメンバーが存在するのは周知のことであろう。
 2013年に日本人で初めて正会員メンバーになった菊野昌宏氏は本サイトでもおなじみの時計師である。菊野氏と言えばヒコみづのジュエリーカレッジにて時計製造を学び、日本の文化や伝統を取り入れた時計でもお馴染みの時計師である。
 しかし日本には、大きく知られていない時計師が存在する。その一人が、今回紹介する牧原大造氏である。

 牧原氏をご存知の方は、かなりの時計通の方であり、実は以前WMOでも紹介したことがあるのは憶えているだろうか?フィリップ デュフォー氏からも製造について学んでいる氏の作品は、ルサンティエを連想させる仕上げと日本の伝統を掛け合わせた時計作りで有名な時計師である。
 その際、牧原氏から新作が出来るので、という事を聞いていたのだが、ついに完成したというメールと写真を送って頂いた。しかし、その写真を見た筆者は久しぶりに、“実機を見てみたい”、と思い、無理を言って拝見させていただいた。




DAIZOH  MAKIHARA「菊繋ぎ紋 桜」
スペック
ケース          ピンクゴールドケース(直径42mm)
文字盤      江戸切子模様のガラス
針         手作業による青焼き
ストラップ    クロコダイルベルト+フォールディングバックル
ムーブメント   手巻き(Cal.DM01:ユニタス6498−1ベース)
石数       17石 
振動数      18000振動/時
防水               日常生活
限定数      8本
 


 文字盤には日本の伝統工芸江戸切子による  “菊繋ぎ紋”を、そして裏面には桜の彫金を施しています。日本の国花である菊と桜をモチーフにし、リューズサイドにも桜の模様を彫り込んでる。桜をモチーフにしているため、日本の伝統と技術を前面にアピールした手作業によるものである。またケース素材は桜モチーフを意識してピンクゴールドを採用したという。


文字盤
 文字盤の厚みは0.5㎜で、そこに模様をつけるために切り込みを入れているという。つまり完成時には更に薄くなっているという事である。そんな匠の技を見せてくれたのは、埼玉県にある株式会社ミツワ硝子工芸

https://www.saihou.net/index.html

 聞けば、文字盤になる0.5㎜のガラスに切り込みを入れるという難しい課題を、若き職人に託したという。自分の腕を信じ、難題をクリアーしてこそ真の職人。何度も失敗を繰り返しながら、完成したのがこの文字盤である。
 文字盤を見るとその模様の美しさ、また凹凸を見ることが出来る。またお気づきだと思うが、文字盤の下に日ノ裏輪列が透けて見えている。
 5時と10時位置にあるのが文字盤とムーブメントを繋げる足になる。文字盤はフラットのため固定する足をつけることが出来ない。そのため新たに別の技術者により薄い文字盤にドリルで穴を開け、足を取り付けている。なんという手間のかけようか!そして、ここからが牧原氏の時計学校講師ならではの経験が活かされているところである。
 ユニタス6498−1の文字盤を留める方法は、ムーブメント上の足固定ダボ(正式名称がわかりませんでした…)を回転させて足を留める。しかしそれでは足への負担と文字盤が割れる可能性があるという。そのためムーブメントサイドに穴を開け、ネジ留め式に変更したという。時計技術者ならではの観点にである!
 また文字盤上にインデックスがないため、傾斜した見返し(フランジ)部分に時間(又は5分)表示をドットのインデックスにしてにしているのだが、しっかり長針がインデックスに届いている。しかし驚いたのは斜めから見ると確認できるのだが、斜めのフランジに対して針が完全にフラットでなければ、針はフランジにぶつかり最悪は止まってしまう。また針を取り付ける際の圧力により文字盤は割れるであろう。その極限のセッティングに驚きを隠せなかった。

 そして筆者は、意地悪な質問をしてみた。「文字盤の耐久性は?」。牧原氏の答えは明白だった。「何度か完成体を落としてみました(笑)。それでも文字盤は大丈夫でした。なぜなら出来るだけ割れる原因を取り除いています。」という。先程のサイドのネジ固定方法もそうなのだが、実は文字盤とフランジの間に少し隙間を作ることにより、フランジが文字盤に接触して割れる事を防ぐという。なんという緻密な計算であろうか!


ケース
今回、このケースを作成に協力したのはケイ・ウノ。ジュエリーを手掛ける同社は時計のデザインから作成までオーダーメイドも受注している。ジュエリーで得たノウハウを時計に活かしているのである。
 文字盤とフランジの位置計算、ムーブメントと裏蓋の距離、そして時計を手首にのせた時の心地よいフィット感を出すラグの傾斜角度。ジュエリーのようなフィット感は見事である。
 またケースサイドの仕上げも素晴らしい。裏蓋のサーキュラーサテンは、手首に当ることを考慮して荒過ぎず、しかしサイドはラグとの対比を強調するため少し粗目になっている。
 更に筆者が驚いたのはこのラグとミドルケースの仕上げである。通常、生産性を考えラグが鏡面の場合は、そのラグは裏蓋に取り付けられ仕上げられ、筒状のミドルケースをそこに落とし込み仕上げの違いを演出する。しかしこの時計は、ミドルケースとラグが一体になっている。つまり一度ポリッシュされたミドルケースからサイドだけヘアラインを入れたのである。なんという手間のかかる仕上げ。


ムーブメントCal.DM01はユニタス6498−1をベースにしており、地板や歯車はそのまま転用しているが完全に手作業による装飾が施されている。そして地板は新規に作成し、牧原氏の手作業による面取りや得意とするエングレービングが施されている。これはまさに芸術作品であり、言葉はいらないと思うので、写真を見ていただきたい。


 ネジ類も完全に磨きなおされており、ケースいっぱいに広がる見ごたえのあるムーブメントに日本の四季である春を連想させる美しい彫りにたは、ただただため息が出るばかりだった。
 今回、この時計はプロトタイプのため、受けは真鍮であるが商品にはジャーマンシルバーを使用するという。牧原氏は時計製造のノウハウだけではなく、エングレービングにも長けている。そのため、どのような素材を使用し、どういう出来上がりになるかも予想しているというのは、個人だからこそ出来る見事なこだわりである。

 さて気になるのは価格である。ピンクゴールドケースに江戸切子の特殊文字板。そしてムーブメントへの装飾や特殊エングレービングを行い、8本のみ製造されるこの時計は、658万円+消費税 558万円(税込)である。
 ご興味をお持ちいただいたお客様には、時計を持って直接説明に伺いたいと牧原氏はいう。この時計を見れば製造コストや手間賃を考えてこの価格になることはもちろん、作品に込める思いを直接伝えたいとそうだ。また時計店やデパート経由では価格を上げるしかなく、今回は直接販売の形態を選択したと述べていました。

 また氏は、勿論、特別注文(見積り)にもこたえてくれるという。筆者は日本の四季に合わせ4種類の花やケース素材をセットにする等の提案をしたが、もちろん可能だという。また文字盤に関しても自由が利くので、世界で1本だけの文字盤を作成する事も出来るという。
 下にある江戸切子文字盤の写真はそんなプロトタイプの一例である。  

 江戸切子は幾何学的模様だけでなく、曲線のある花なども作り出せるのである。まさに匠の技である!


 如何でしたでしょうか?スイスの時計ももちろん素晴らしい。しかし日本人が作る、日本人の感性の時計。大手にはマネのできない個人の良さを実感できる時計ではないでしょうか。
 「日本人だからこそ、日本を表現するものを作りたかった!」と牧原氏は言う。まさに日本の伝統技法を活かし、そのコンセプトに合わせ日本を表現している。これはもはや時計と言うより芸術作品ではないであろうか。

 日本が誇る時計師 牧原大造氏。今後の氏の活躍に注目したい。


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