パテック フィリップ、バーセル2019新作の"最強"モデル、5520P「アラーム・トラベルタイム」の実機&サウンド

 By : a-ls


パテック フィリップ新作ーーおいそれと買えるわけではないし、万が一清水の舞台から飛んだ気になって手を挙げたとしても、買わせてはいただけないケースすら多いのだけれど、でも、そうした現実的な面とはまたちょっとニュアンスの違う部分で、一刻も早く新作の全貌を知りたい・見たいという、わくわくした気持ちの高まりを、パテック フィリップには感じる。

この感覚はいったいどこからくるのだろうと、いつも思うのだが、言葉にするのはイマイチ難しい。
たぶんだけれど、自分が想う時計の美しさというものにいちばん近い存在というか、しかし美とはいってもデザイン的な美しさとかではなく、むしろデザインには好き嫌いが多々あるくらいだが(笑)、パテック フィリップの時計の放つ色香のような抽象的なものと、そしてその時計の背景から匂いたってくる志向のようなもの、それらが自分の思う時計の理想を掻き立てるわくわく感とでも言うのだろうか・・・。

それは、部品と部品とを組み重ねた機械としての構成に底知れぬ美しさを感じさせてくれるドイツ陣営の美感とはまた別の感覚なのである。誤解を恐れずこの感情の違いを述べるなら、ドイツ陣営の新作は初めて会うことになった同性とコミニュケートをとる際に抱く感覚(尊敬・憧憬・友情・親近)とかに近く、でもパテック フィリップへのそれは初対面直前の異性に対して思いめぐらす感情に近いような気がする。んー、わかってもらえたりしますかね・・・(笑)。ま、このことに関しては、日を改めて書こう。

で、今はこの5520Pである。



上の例えで押すならば、初対面では、″ああ、去年・一昨年にあった方のシスター・モデルか″程度で、まったく興味を抱かずにいたところ、ただごとではない機構を知ってから、気になり出し、いろいろ調べ始めるも、自分にはまったく手の届かない存在であることを思い知らされるという、ややストーカーチックな関係に、今はある。



大雑把には、速報記事でも触れたが、改めてその特性をまとめると。

①アラーム機能とトラベルタイム機能を組み合わせた、新しい自動巻ムーブメント、AL 30-660 S C FUSを搭載。
※公には言われていないが、パテック フィリップの往年のスタンダード、トラベルタイムの生誕60周年にあたる今年に特に用意されたモデルではないかとみている。
また今後、このトラベルタイム+アラームという形態は、いろいろなラインに組み込まれていく可能性も高いと予想する。


②15分刻みのデジタル・アラーム表示で制御され、ハンマーでクラシック・ゴングを鳴らす24時間対応のアラーム機構。
※ミニット・リピーターの音に関して、常に牽引的な位置にあるパテック フィリップが、グランドマスター・チャイムで披露したチャイムによるアラーム機能にさらなる改良を加え、ミニット・リピーターよりも手ごろな価格であの音を堪能できるモデルを市場投入した、これはちょっとしたエポックだと思う。


③アラーム作動中の誤操作を瞬時に回避する機能を含む、アラームに関する4件の技術特許を取得、さらに鳴り物モデルとしてはパテック フィリップ初の防水ケースを採用。
※前世紀のパテック フィリップのグランド・コンプリケーションは、使用者側がおのずと時計を気遣うことが自明とされていた気がするが、この作品は防水ケースを備えたパテック フィリップ初のチャイム・ウォッチであり、さらに故障を防ぐ、もしくは故障しない、実用的な時計作りが非常に意識されている。いうなればこの5520Pは、パテック フィリップ・グラコン史上に新しいディレクションが誇示された、重要かつ画期的な「マイルストーン・モデル」と言えるのではないかと感じる。



もうチェック済みの方も多いと思うが、パテック フィリップが作成した動画でも、上記①~③の特性がフィーチャーされている。



気になるサウンドに関してだが、基本構造はミニット・リピーターと同じく、ゴング1本をハンマーで打つというクラシカルな手法によって生まれる。35秒間、1秒間に約2回半、あの神々しいチャイムが時を告げてくれるのだ。
上の動画でも、3分35秒辺りでその音を聴くことができるが、ミニット・リピーターと同じ機構とすれば、アラーム音はクラシックなマニュファクチュールと同じわけで、本当に目が覚めるくらいの音量が出るのかという心配をされる方もあるかもしれない。



しかし不思議なことに、これがなかなかに大きな音量なのだ!
どうやら、通常のミニット・リピーターと異なり、ゴングはムーブメントにではなく、ケース側面に直接取り付けられていて、これが防水ケースによる音波の減衰を抑えているらしい。
上記の動画で説明しておられる設計部長のフィリップ・バラ氏に実際に鳴らしてもらい、それを記録した動画が以下のものだ。かなりざわざわした状況だが、ゴング音が非常に力強く響いているのがわかるだろう。



開発に5年の歳月を要し、574個の部品から成る、5520P「アラーム・トラベルタイム」。
2.5Hz (1秒あたり2.5回)の間隔で最大35秒までムーブメント外周を一周するゴングを打つ。
これは合計約90回のストライクに相当し、ミニット・リピーターと同じく、カラトラバ十字で飾られた受け(ブリッジ)の下の遠心ガバナーが規則正しく持続する音のリズムを実現している。
アラーム機構は、4時位置のリュウズで巻き上げるアラーム専用の独立したぜんまいを備えており、内蔵されたクラッチ機構が不注意によるぜんまいの巻き上げ過ぎを防ぐ仕組みとなっている。

ちなみに、搭載されているゴングは、ミニット・リピーターで言うところの、アワー用の低音のゴングなのか、それともミニッツ用の高音のゴングなのかを尋ねたところ、フィリップ・バラ開発部長は、

「その質問は初めて受けた。なので回答の用意がないが、私の経験から思うに、たぶん低い方のアワーのゴング・サウンドではないだろうか。力強く聞こえるから」、とのことであった。






4つのプッシャーの機能および文字盤表示の役割は以下のようになっている。




旅行中は、ケース左側面の2つのプッシュボタンのひとつを押すと、通常の時針を1時間刻みで前進(8時位置)、または後退(10時位置)させて、時計の精度にまったく影響を与えずに、現地の時刻調整を行うことができる。
現地時刻の操作を容易にするため、プッシュボタンには+または-の記号が刻まれている。
操作の前に、まずプッシュボタンを1/4回転させてロックを解除する(刻みが入っているため操作は容易である)。
操作が終わったら再び1/4回転させてロックする。


【表示】
時針(現地時刻)
時針(出発地時刻)
分針
秒針

時計は、センターに2本の時針を備えている。
ひとつはスケルトン時針であり、出発地の時刻を表示する。
もうひとつはスケルトンでない通常の時針であり、着用者のいる現地の時刻を表示する。
出発地と現地の昼夜は、それぞれ3時半位置(HOME)と9時半位置(LOCAL)に設けられた丸い小窓に、白と青の別で表示される。


サブダイヤル:
日付

文字盤下部のサブダイヤルが現地の日付を指針表示する。したがって現地時刻の時針を前進または後退させて真夜の零時を過ぎると、日付もこれに応じて変化する。2本の時針が同一のタイムゾーンを表示する時は、スケルトン時針は完全に通常の時針と重なり、その下に隠れるということである。


表示窓:
アラーム設定時刻の表示
アラームの昼夜表示
アラームON/OFF表示
現地の昼夜表示
出発地の昼夜表示

アラーム機能表示は、文字盤の上半分に配置されている。
読みやすさを保証するため、12時位置の二重表示窓に設定されたアラーム時刻はデジタル表示(特許申請中)を採用。
そのすぐ下には、午前6時~午後6時を白、午後6時~午前6時を青で示す丸い昼夜表示窓がある。
4時位置のリュウズを中間位置に引き出し、いずれかの方向に回して、15分刻みでアラーム時刻を設定する。
アラーム時刻の時、分表示機構が差動歯車を駆動することで、アラーム時刻は現在の現地時刻と絶え間なく比較され、歯車の″遊び″を補正するシステムにより、1分単位の精度で次のクオーター(15分)にアラームをセットすることができる。
例えば12時14分に、1分後の12時15分のアラームを鳴らすような設定もできる。この機構も特許である。



【プッシュボタン】
アラームON/OFF
現地時刻調整( 一押し毎に1時間前進)
現地時刻調整( 一押し毎に1時間後退)

2時位置のプッシュボタンによりアラームのON/OFFを行う。
12時位置直下の小さいベル型表示窓が、アラームがONの時は白、OFFの時には黒となる。
このプッシュボタンには、アラームのON/OFF表示窓と同じ形の小さなベルのシンボルが刻まれている。またこのプッシュボタンは、2つのタイムゾーン調整プッシュボタンと同じロック機構を備えている。


【調整ボタン】
日付調整ボタン


リュウズの3つのポジション:
1. アラームの巻上げ(時計回り)ムーブメントの巻上げ(時計反対回り)
2. アラームの時刻設定(15分刻み)
3. 時刻調整

防水機能は、プッシュボタンのロックが解除されている状態でも発揮される。

以上を踏まえて、アラームの時刻セットからアラームが鳴り終わるまでの動画を。




高度なセキュリティー機構にも触れておく。
アラーム機能を制御し、モニターするシステムは、誤った操作を行った場合でも、ムーブメント損傷のリスクを防ぐ安全・隔離機構を搭載している。
つまり、アラーム音が終わると、直ちにアラームのON/OFF表示が自動的に切り替わり、OFF表示となる。この状態では、アラーム専用ぜんまいを再び巻き上げるまで、再度アラームをセットすることはできない(=アラーム機構は常にぜんまいの巻き上げ状態を検出できなければならない)。
このため、アラーム専用ぜんまいの軸にフィンガー状の部品が取り付けられた複雑な仕組みが開発され、このフィンガー状の部品のなす角度が、ぜんまいの連続駆動可能時間を定義し、ぜんまいが完全に巻き上げられて初めてアラームのON/OFF表示がON表示に変るのである。一方、OFF状態に切り替えることはいつでも可能である。


着用者は、アラームが鳴っている間でも、まったくリスクなしに、別のタイムゾーンへの変更を行うことができる。
この場合、メカニズムとしては、鳴っているアラームを一旦中断し、アラームをOFF表示に切り替える。
また、新しいアラーム時刻が設定された際にも、アラーム音は中断される。

アラーム専用ぜんまいは4時位置のリュウズを時計回りに回すことによって巻き上げられる。クラッチ機構が内蔵されており、これがぜんまいの巻き上げ過ぎによるアラームの動作停止を防ぐ。
アラームのON/OFF表示がON表示になっていると、アラーム専用ぜんまいの巻き上げができないようになっている。
時計機能を駆動する主ぜんまいは、同じリュウズを反時計回りに回すことにより、いつでも巻き上げることが可能。





【仕様】
文字盤
• エボニーブラック・ソレイユ、夜光付ゴールド植字数字
• 現地時刻表示:黒塗りを施した夜光付ホワイトゴールド《バトン型》時針
• 出発地時刻表示:ホワイトラッカー仕上げのホワイトゴールド《バトン型》スケルトン時針



ケース
• プラチナ
• 直径:42.2 mm
• 総厚:11.6 mm
• 3気圧防水
• サファイヤクリスタル・バックと通常のケースバックが共に付属


バンド
• カーフスキン、カラーはブラック
• ピンバックル


ムーブメント
• キャリバー AL 30-660 S C FUS
• 自動巻

• クラシック・ ゴングで時を知らせる24時間対応のアラーム
• アラーム設定時刻を窓表示
• アラームON/OFFを窓表示
• アラームの昼夜を窓表示
• 出発地と現地の時刻を表示するデュアル・タイムゾーン機構
• 出発地と現地の昼夜を窓表示
• 現地の日付を指針表示
• センターセコンド
• 直径:31 mm
• 総厚:6.6 mm
• 部品総数:574
• 自動巻ローター:21金中央ローター
• 振動数:28,800振動(片道)/ 時(4 Hz)
• 連続駆動可能時間:最小42時間、最大52時間

 税込価格26'676'000円


【問い合わせ】
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
TEL:03-3255-8109

http://www.patek.com