ケルベダンズ マキシマス 世界最大のケージサイズを誇るセンタートゥールビヨン

 By : CC Fan
追記:重要な巻き味について失念してたので追記しました。

2018年のバーゼルワールドで見かけたものの、接点がなくて入ることができなかったケルベダンズ(Kerbedanz)というブランド、2019年のバーゼルワールドでは、ご縁があり作品を拝見できました。

というのも、"回し者冥利につきる"と言いますか、ノーブルスタイリング葛西氏の古い知り合い(中東系)がケルベダンズのマーケティングを行っており、再会した葛西氏に日本に紹介してよと要請、じゃあそういうのが得意なプレスを連れていく…という事で私に白羽の矢が立ったという経緯になります。

速報は載せましたが、こんなに遅れてしまうとは…

作品名はマキシマス(Maximus)、ラテン語Magnusを語源に持つ、"最大の"というシンプルかつ端的にキャラクターを示した作品です。

というわけで写真を。



いきなりすみません、上下逆です。
本来はリュウズが2時位置にある設計で、中央に超大型フライングトゥールビヨンが配置されています。
時分針はリング状の歯車に取り付けられたマーカーがトゥールビヨンを遮らないように表示するというセンタートゥールビヨンでは一般的な構造です。
同じような構造は独立時計師のベアト・ハルディマンやオメガのセンタートゥールビヨン、ヴィアネイ・ハルターのディープスペーストゥールビヨンにもありますが、特徴は何といってもマキシマスの名の通り大きいこと。

トゥールビヨンケージの直径で言えば、センタートゥールビヨンで最も大きいハルディマンのH1が18mm、非センターで最も大きいフランクミュラーのギガトゥールビヨンが21mmなのに対し、マキシマスは両分野で最大な27mm!とのこと。

さすがにこのサイズでは、1分で1周ではなく、6分で1周する構造で固定歯車とガンギ車の間に一枚変速用の歯車が入っています。
ただ、ゆったりと動いている感じとしては5振動と相まって、むしろプラスに働いていると感じました。
トゥールビヨンケージ全体で73部品、トータルの重量は1.35gと通常のトゥールビヨンよりかは遥かに重いながらも、サイズの割には軽量ですが、必要なトルクは膨大で並列接続された4つの香箱を備えています。

この香箱をリュウズで巻き上げるのは無理…という事で、リュウズの機能は時合わせのみとされ、巻き上げには別の機構が用意されました。



それがこちら、ダイヤル式の巻き上げ機構。
ダイヤルからセンターの防水ベアリングを経由した歯車がダイレクトに4つの角穴車に噛み合うことで巻き上げを行います。
リュウズそばには控えめなパワーリザーブインジケーターも。

巻き味はまさにダイレクトに巻いているといった一切の遊びがないゼンマイの反力が指にかかりますが、かみ合わせがよいのか"重い"とは感じましたが、"硬い"という感覚は一切ありませんでした。
また、各香箱に独立して2つのコハゼが付いている構造かつコハゼの刻みが小刻みなのでチチチ…と言う音が重なるような心地よい感覚で、"巻くのが楽しい"と感じる出来だと思います。
ちなみにパワーリザーブは54時間なので、2日(48時間)に一回は巻かないといけませんが、巻くのが楽しいので待ち遠しくなるのではないかと思います。
改めて数字にすると超大型トゥールビヨンがいかに"大食い"かわかりますね…



マキシマスという名前は古代ローマ帝国で偉大なものの象徴として使わており、その中でも偉大なる闘技場Circus Maximusがこの時計の直接のインスピレーションとデザインソースになったとのこと。

正直、ここまで突き抜けるとこれが動いているだけで最高!って思います。
これだけ大きなテンワがビュンビュン振れていれば、理論上は精度も出そうですが、どうでしょうね…?



ケース直径は49mm、厚みは正確な値が載ってないですがケース部分が15mm弱+ドーム型風防です。
一見すると重そうですが、チタンモデルもあるので充分使えそうです。

一回話を聞いた後、悪ノリでハルディマンを持っているコレクター氏を連れて行って、比較しましょう!とやったんですが残念ながら並んでいる写真を撮り忘れ、コレクター氏からもらおうと思ったらPCが修理中で写真が取りだせないとのこと…追ってフォローします。



その際にとったリストショット、大きいことは良いことだ!
こちらはDLCチタンケース。



ドーム型風防からトゥールビヨンの構造を堪能できます。



すさまじい存在感…



真面目(?)な話をすると、トゥールビヨンケージが極端に大きいおかげで、スペースに余裕があるため通常のトゥールビヨンで使われるような変形したスイスレバー脱進機ではなく、理論通りのスイスレバー脱進機が載っています。
駆動効率はこちらの方がよいはず。

このほか、ダイヤフルセットのマキシマスロイヤルというモデル(直径51mm)もあり、誤解を恐れずに言えば"別世界"感があります。



ブースではテクニックの実演も…
ブランド名の下に書かれているように、ヌーシャテル(Neuchâtel)にアトリエを構えます。



盛況でした。



今回アテンドしてくれた、Director & CMOのKalust Zorik氏。
今回のバーゼルで、ベスト3に入る良いキャラクターでした。



身振り手振りで大きいことは良いことだ!と表現しているの図です。

最後に公式?の動画を。







素晴らしい!

正直、日本で売れるとは思っていませんが、スルーするにはあまりにも惜しい作品なので紹介いたしました。
日本の代理店はないですが、ノーブルスタイリングさんがもし需要があれば紹介はできるという事なので、ご興味があればぜひ。
次のヌーシャテルで是非行ってみたいです…

関連 Web Site

Kerbedanz
http://www.kerbedanz.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/