【集中連載】時計作りの神髄 グルーベル フォルセイ ワークショップレポート 第四回・組み立て部門編

 By : CC Fan

【集中連載】

時計作りの神髄 グルーベル フォルセイ ワークショップレポート

最終回・組み立て部門編



ワークショップの概要と福利厚生・部品製造部門、仕上げ部門についてお伝えしたグルーベルフォルセイワークショップレポート。
第四回目の今回は、芸術品と同時にというより、芸術品であるからこそ時計として実際に使える実用品でもある品質を支える組み立てと品質保証部門をレポートします。



斜めの建物の最上階3階、日光が入るもっともよいロケーションに組み立て部門は配置されています。
これは、伝統的な時計製造で日当たりの良い屋根裏部屋(キャビネ)に組み立て机を置いたことが時計師の名称、“キャビノチェ“になった…と言うエピソードの”現代版”のようです。



組み立て部門の入り口から見ると、建物の主構造である木造作りが見えます。
構造や天井にも木材が使われ、現代的な外観と伝統的な内装のコントラストが面白いです。



木造の構造と天窓から降り注ぐ日光。



今回は入ることがかなわなかった2階は”最高機密”の頭脳部である設計部門、ステファンが居るときに再チャレンジだ!



さて、組み立て部門を。
伝統的な木製の時計師机に高さ調整ができる椅子を使って頭を机面の高さにして組み立てを行う伝統的な方法を取っています。
伝統的な日光の照明とデスクライトを併用しています。

仕上げ前のエボーシュの状態で一度組み上げ、動作を確認したのち仕上げ部門に手仕上げ、仕上げ済みの部品を再度調整しながら組み上げる、いわゆる二度組みと言われる手法がとられています。

“手作業で組み立て”と言っても、実際にはライン(流れ作業)的に一つの部品だけを組み込む時計師が複数居て複数個(30個程度)のムーブメントをトレイに乗せ1ロットとして流す現代的な方法と、一人の時計師がムーブメントの全工程を担当する伝統的な方法があります。
通常のメーカーでは数が多い普及機は前者の方法、コンプリケーションは後者の方法を使っているところが多いですが、グルーベル フォルセイはトゥールビヨン非搭載機であっても、もちろんすべて後者の方法です。



ムーブメントごとに組み立てに必要な情報を網羅した、”バイブル”と呼ばれるファイルが作られ、必要に応じて参照します。
また、写っているように“上履き”と“コート”により埃を持ち込まないようになっており、”医療機関グレード”の空気清浄機でクリーンに保っています。
曰く、花粉症(スイスにもあるとのこと)の時はありがたいとか…



顕微鏡やウィッチも備えられ、それぞれが使いやすいように配置を決めているそうです。

専用の機械台は4隅の足によってひっくり返った状態でも保持できるので、調整が容易です。
全てのムーブメントに専用の機械台が用意され、細心の注意を払って組み立てが行われます。

ふせ瓶の中にはいくつかの仕掛品が…



当然ながら、指サックは全ての指に装備し、万が一にも汚染することがないようにしています。
これはGMTアース。



良い職場環境…

組み立てられた時計は全数検査を行って出荷されます。
検査部門については写真の掲載はNG、文章だけでご了承ください。

グルーベル フォルセイは自らの時計を芸術品としていますが、“芸術品だから時計として使えなくてもよい”というエクスキューズ(言い訳)にはしないとしています。
そのため、出荷検査も極めて厳格、通常の高級時計に対して行われる5姿勢検査ではなく6姿勢検査で、COSC以上の社内規定精度を満たさないといけません。
そもそもの発明である傾斜トゥールビヨンが腕時計時代にあわせた姿勢差の少ないトゥールビヨンなのである意味”当たり前”とも言えます。

絶対数は少ないので過度の自動化は行われておらず、ウィッチの姿勢を変えながら定期的に歩度を記録する機械を使って経緯を観察しています。
ムーブメント単体ではなく、ケーシングした状態で数週間かけて精度を測定し、コンピューターによるトレーサビリティの確保も行われています。

伝統的な時計作り、伝統を受け継ぎ・超える、という宣伝上の言葉ではなく、実践として行っているということを思い知らされたグルーベル フォルセイのワークショップレポート。

変な言い方ですが、彼らは“芸術品”以上に”実用品”として時計を作っている…これが、私が受けた印象です。
最高の性能と耐久性、そして美しさを持った時計を自分たちが定めた最高の目標(完璧さ)に対して妥協無く作り上げる…これは、機械式時計が最先端のテクノロジーであった時代の考えであり、実用的な代替品としてクオーツがあり、機械式時計に求められるのは趣味性という現代には過度な要求であり、結果としての価格も途方もないことになってしまい、簡単には理解されないかもしれません、しかし、少なくとも私は応援したいし、見果てぬ夢ではありますが手に入れたいとも思います。

このレポートで興味を持っていただいた方には、まずカミネ旧居留地店で実機をじっくりと見ていただき、そしてその結果として、日本でのオーナーが増えていただけることを心より願っております。



【グルーベル フォルセイに関する問い合わせ】
カミネ 旧居留地店
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