A.ランゲ&ゾーネ アントニー・デ・ハス開発部長インタビュー~新作 ランゲ1・パーペチュアル・カレンダーについて

 By : CC Fan

初の「完全オンライン開催」となったW&W2021 in Geneve、いわゆる「テレビ会議システム」を使った非対面のコミュニケーションも最早「日常」となった感じがあります。

今回はA.ランゲ&ゾーネ デ・ハス開発部長に新作、「ランゲ1・パーペチュアル・カレンダー」について伺いました。
パテックのインライン永久カレンダー同様、「推測」記事を作る予定ではありますが、まずはインタビュー内容をまとめたいと思います。


●新作発表イベントでのデ・ハス開発部長

ーーいきなりですがランゲ1トゥールビヨン・パーペチュアルと今回の新作は同じような表示と機構に見えました、パーペチュアルカレンダー部分に何か変更点はありますか?

『一見すると、この機構はランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルの機構と同じように見えるかもしれません。
しかし、今回は新しいランゲ1ムーンフェイズ譲りのデイ&ナイトとムーンフェイズを同じサブダイヤルで表示する機構を加えています。
この機構を収めるためのスペースとトルクをねん出するためにランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルからほぼすべての部品を見直すレベルの大幅な変更を加える必要がありました。』


新たに加わったデイ&ナイトとムーンフェイズを1つのダイヤルで表示する機構


ムーンフェイズの「月めがね」とデイ&ナイトの天空ディスク


ーー月末の処理は通常の日送りと同時なのか、それともタイミングがズレるのか?

『動力制御システムに蓄えられたエネルギーを一気に放出することで、永久カレンダーの切り替えはほぼ瞬間と言っていいほどの速さで行われます。
もちろん、動作シーケンスを考えると月末処理と日送り、曜日送り、ムーンフェイズのタイミングにはズレがありますが、その動きは特殊なハイスピードカメラで撮影でもしないと人の目で確認することはできないでしょう。』


ーー動力制御システムはリヒャルト・ランゲ プールル・メリット トゥールビヨンで文字盤の開閉に使われていたものと同じでしょうか?

『カムでエネルギーを蓄え、瞬時に放出するという基本的な考え方は同じですが、それぞれの機構に必要なエネルギー量や動き量など必要な要件に合わせてカムの形状はそれぞれ最適化しているため同じではありません。
パーペチュアルカレンダーでは1日(24時間)かけてエネルギーを蓄えて日送りを行うものと、1月(最大31日)かけて月末処理と月送りを行うものの、二つの動力制御システムが使われています。』


●ランゲ1トゥールビヨン・パーペチュアルの分解図

ーーそれは、新型ランゲ1の瞬転デイトの機構と同様のものですか?

『新型ランゲ1も考え方は同じではありますが、必要な要件に合わせて最適化しており、同じものとは言えません。
計時輪列の振り落ちを起こさないために僅かなトルクを連続して蓄積し、必要に応じて一気に放出します。』

ーー切り替えのタイミングはどのように調整するのですか?

『時計師が組み立て時に24時ちょうどに切り替えが起こるように時分針の調整を行います。
より厳しい社内基準はありますが、公開できる値としては24時の±1分以内で日付が切り替わるという基準とさせてください。
この基準内には入りますが、時刻や日付をマニュアルで調整した直後は歯車の遊びによって切り替えタイミングがズレることがあり、一度日付が変わった後はより正確なタイミングで動作するようになります。』



ーートルク蓄積機構は24時間常に負荷がかかっているのですか?

『負荷というより、常に弱いトルクを輪列から集め、深夜に放出する構造のため、深夜にのみ負荷が重くなり、振り落ちを誘発する通常の永久カレンダーよりも歩度に対する影響は少なくなります。』



今回のインタビューと公式動画で理解できたので、変更前のランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルの原理からスタートし、「変わったこと」「変わらなかったこと」両方を見ていく、俺のやり方こと「推測」記事も鋭意製作中!




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