パテック フィリップがグランド・コンプリケーションの新作「5470P」を発表~同社史上初、1/10秒の測定表示が可能なクロノグラフ

 By : KITAMURA(a-ls)



パテック フィリップがグランド・コンプリケーションの新作「5470P」を発表~同社史上初、1/10秒の測定表示が可能なクロノグラフ
 


パテック フィリップが、WATCHES&WANDERSの閉幕に合わせて、新たな超高精度なグランド・コンプリケーションを発表した。話題的にも、そしてWATCHES&WANDERSの余韻をも総取りしてしまうかのようなド級モデル、5470P。その実体は、パテック フィリップ史上初となる、1/10秒の測定および表示が可能なクロノグラフだ。



なるほど、この方向性が残っていたかと、改めて唸らされた「5470P」は、パテック フィリップが腕時計でコンマ1秒の世界に踏みした記念碑的な作品となった。この機械工学上の新たなチャレンジにあたり、ベース・キャリバーとして採用したのはパテック フィリップ初の完全自社開発・製造のクラシックなクロノグラフ・ムーブメント(6件の技術特許をもつ)、2009年発表の キャリバーCH 29-535 PSだった。
開発から10年以上を経て完全に安定した感のあるこのキャリバーCH 29-535 PSに、1/10秒単位の計測・表示に特化したクロノグラフ機構を追加搭載したのが、5470Pのエンジン、「キャリバーCH 29-535 PS 1/10 」だ。


シングルプッシュボタン・クロノグラフ
シングルプッシュボタン・クロノグラフである「5470P」は、センターに2本のクロノグラフ針を備えている。ホワイトの針が通常のクロノグラフ針で、レッドの針(ラック・レッド塗装のSilinvar®製)が1/10秒単位の計測・表示をする針。この2本の秒針が専用の機構で駆動・制御されている。サブダイヤルは、右が30分積算計、左がスモールセコンドとなっている。




キャリバー CH 29‑535 PS 1/10。
手巻き
1/10秒シングルプッシュボタン・クロノグラフ。
センター・クロノグラフ秒針。
センター1/10秒針。 瞬時運針式30分計。 スモールセコンド。



●プラチナ・ケース内部に収められた最先端の手巻ムーブメント

CH 29-535 PSをベースとしているので、手巻、コラムホイール制御、水平クラッチで、振動数を4Hzから5Hz(36,000振動(片道)/時、1秒間に10回ジャンプ)へとハイビート化に改編している。1/10という精度を極めるには高振動のほうが望ましく、コンマ1秒の世界は10進法となり、時と時の間を10の目盛り区切りで表示したダイヤルの外周でコンマ1秒下を読むため、5Hzへの変更は理に適う。
このムーブの構造的な部分については、おなじみのCCFan氏がさらなる解析に入っているので、週明けにもその成果が発表されることだろう(笑)。



プッシャーを押し、計測をスタートさせると、白と赤の針が異なる速さで走り出す。ホワイトの針は60秒で一周、レッドの針は12秒でダイヤルを一周する。2度目にプッシャーを押して停止した時に、白い針が指しているのが秒、赤が1/10秒を指している。下の画像で読むと、1分20秒0ということになる。




しかし機構もさることながら、ユーザーとしては、プッシャーの押味とか、停止時の針とインデックスのジャスト感とか、帰零時の針のファンクションの美しさとか、そういうところが気になってしまう。早く実機が見たいところだ!!



さて、このチャレンジングなピースのデヴューに選ばれたのは、ダーク・ブルーのダイヤルだった。この選択には賛否あるかもしれないが、1/10計測というスポーツシックな機能であるゆえ、ホワイトダイヤルなどのクラッシック感よりもダイナミックなイメージを優先したものと思われるし、何よりもインジケーターが振り切れるような1/10秒というスピード感を赤の針で表現したことで、最も赤の映える文字盤色を選んだということだろう。

文字盤 :ブルーのニス塗装、ゴールド植字ブレゲ数字。
ケース :プラチナ仕様。 サファイヤクリスタル・バックと通常のケースバックが共に付属。 3気圧防水。
直径:41 mm。 厚さ:13.68 mm。





ストラップはエンボス加工ファブリック柄のハンドステッチ・カーフスキン・バンド、カラーはネイビーブルー。 折り畳み式バックル。文字盤のキーファクターであるレッドをステッチにアクセントとして取り入れている。





長年のシリコン研究の成果であるSilinvar®テクノロジーのすべての利点を活用
もうひとつの肝となるのは、パテック フィリップが《アドバンストリサーチ》で実験を続けてきたシリコンによる調速機など新素材を実装している点である。

以下は、パテック フィリップからの資料より抜粋。

『容易で迅速な計測時間の読み取りを保証するため、技術陣は、計測された秒と1/10秒を同心円状に表示する特許取得のシステムを考案しました。さらに効率、信頼性、精度という3重の目標を達成するため、マニュファクチュール パテック フィリップは、当社技術部門により開発され、2011年、《アドバンストリサーチ》モデル(17件の技術特許)に搭載された、先端的なOscillomax®調速機構を、現行コレクションとしては初めて統合しました。』

『パフォーマンスと精度に貢献する技術革新 効率、信頼性、計時精度という3重の目標を達成するため、パテック フィリップは、《パテック フィリップ・アドバンストリサーチ》部門により開発されたOscillomax®調速機構を採用することにしました。このハイテク調速機構は、Silinvar®テクノロジーのすべての利点を活用した3つの革新的なコンポーネントから構成されています。Silinvar®テクノロジーは、卓越した物理特性と機械特性(軽量、頑丈、耐磁性など)を持つシリコンの派生物をベースとしています。』

『機械式時計製作の技術的壮挙を凝縮 Silinvar®テクノロジーにおける《パテック フィリップ・アドバンストリサーチ》の革新的技術がすべ統合された高振動数のムーブメント(5Hz)と、1/10秒単位の表示を高速かつ正確に行う特許取得の技術により、5470P-001モデルは短時間計測の分野におけるパテック フィリップの技術力と革新の精神を体現しています。 』

『サファイヤクリスタル・バック(付属のプラチナ仕様ケースバックと交換可能)を通して、キャリバーCH 29-535 PS 1/10の繊細な構成部品とその精緻な仕上がり(縁に面取りとポリッシュ仕上げを施した受け、コート・ド・ジュネーブなど)を鑑賞することができます』



CH 29-535 PS 1/10 手巻
1/10秒シングルプッシュボタン・クロノグラフ。
センター・クロノグラフ秒針。 センター1/10秒針。 瞬時運針式30分計。 スモールセコンド。
直径: 29.6 mm。
厚さ: 6.96 mm。
部品総数: 396。
連続駆動可能時間(クロノグラフ非作動時): 最小48時間。
脱進機: Silinvar®製のPulsomax®アンクルとガンギ車。
Silinvar®製のGyromax®テンプ。
振動数: 36,000振動(片道)/時(5 Hz)。
髭ぜんまい: Spiromax®。



このラインが今後発展していき、いつかそのうちに、永久カレンダー、ミニット・リピーター付1/10秒クロノグラフ・・・なんて超ド級ピースも出ちゃうだろうなぁ! まさにマイルストーンとなる作品。新たなスタートに拍手である。



 【お問い合わせ】
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
電話:03-3255-8109