ショパール「L.U.C フル ストライク トゥールビヨン」とストライク ワン サファイアゴングの威力

 By : CC Fan

W&W2022でL.U.C コレクション25周年を記念したチャイミングウォッチ3作 「The Sound of Eternity」を発表したショパール

そのうちL.U.C フル ストライク トゥールビヨンL.U.C ストライク ワンを既存作のフル ストライクと共に拝見することができましたのでレポートします。
残念ながらフルサファイアのフル ストライク サファイアは速攻完売でサンプルすら来ないだろうとのこと…



フル ストライク トゥールビヨン(左)とフル ストライク(右)。
ショパールが開発した風防と一体化したサファイアクリスタルゴングは完全一塊のサファイアクリスタル結晶から削り出したもので、「つなぎ目」や「素材の境界」がないため、振動を効率よく風防表面に伝えて音(空気の振動)に変換することができます。



フル ストライク トゥールビヨン。
可動量の大きなスライダでリピーターのゼンマイを都度巻き上げる通常のミニッツリピーターと違い、あらかじめ計時香箱とは独立したリピータ用香箱をリュウズで巻き上げておいて必要に応じて解放するいわゆるソヌリに近い方式です(トリップリピーターというらしい)。

開口部の大きなスライダがないため防水に有利、かつ原理+安全装置で二度引き(鳴ってるときにもう一回引く)ができないため破損しにくいというメリットがあります。
計時・リピーターそれぞれの香箱のパワーリザーブ残量は2時位置の同軸パワーリザーブインジケーターで確認することができ、巻き上げはリュウズの回転方向による切り替えです。
また、起動もスライダのように巻き上げてるわけではなく、機構のストッパを解放するだけなのでリュウズ同軸プッシャを軽く押すだけです。



こちらはノーマルのフル ストライク。
機構がソヌリに近い、という事がなんとなく伝わりますでしょうか?
トゥールビヨンもそうですが、サファイアクリスタルゴングは風防と一体化している上に透明なので一見するとハンマーだけあってゴングがない?!というミステリー機構のような面白みも感じます。



フル ストライクのムーブメント側。
比較的コンパクトな計時輪列をリピーター輪列が取り囲んでいる構造が分かります。



フル ストライク トゥールビヨンのムーブメント側。
「兄弟機」ですが、トゥールビヨンを搭載するためにほぼ新設計した構造とのこと。

スライダの可動量で巻き上げ量(エネルギー量)が制限される通常リピーターと違い、潤沢な事前巻き上げ(プリチャージ)香箱のエネルギーが使える構造と、サファイアクリスタルゴングの音響性能によって腕リピーターとしてはトップクラスの音の大きさと響きを実現したフル ストライク。

残念ながらトゥールビヨンの方はちょっと不調で鳴らすことができなかったため、ノーマルモデルの音をどうぞ。



やはり実際に聞いていただきたい、とは思いますが録音でも澄んだ音の響きと音の大きさは伝わるのではないでしょうか?

そして個人的に注目したのは…



L.U.C ストライク ワン!
ベースは2006年に発表された金属ゴングのモデルですが、今回サファイアクリスタルゴングに最適化されて登場しました。
これにより、初めての金属ゴングvsサファイアゴングが実現したとの事です。
フル ストライクは確かに音が良いのですが、最初からサファイアクリスタルゴングを搭載しており、その良さがサファイアゴングによるものなのか、トリップリピーター構造によるものなのか厳密には切り分けられていませんでした。
そこで、金属ゴングを搭載していたストライク ワンを「サファイアゴング化」して検証するために初めてリピーター以外にサファイアゴングが搭載されました。

機構としてはアワーストライカーなどと呼ばれるもので、長針(分針)の回転を利用してハンマー駆動カムにトルクを蓄積、毎正時にそれを解放してハンマーを駆動することでゴングを叩いて「時報」を鳴らす機構です。
機構としてはレトログラードに近い(針が逆行する動作=ハンマーを叩く動作)といえます。



アワーストライカー機構は文字盤側にあるため、ケースバックからの眺めは通常のL.U.Cのマイクロローターと変わりません。

音を止めるためのブロック機構があり、作動されるとハンマーが最上位で固定されカムとの連結が切られ、ハンマーが落ちなくなるため音が鳴らなくなります。



昔のモデルでは10時位置に独立したブロック動作切替ボタンが有りましたがフルストライク同様リュウズ同軸とされ、目立たなくなりました。



ON/OFFは12時位置の小窓で確認できます。

さて、この音が非常に良かったのが驚きでした。
金属ゴング版と比べてどころか、個人的に並ぶものがないと思っていたカンタロスのクロノグラフソヌリ以上かもしれないと思える音でした。

カンタロスはある意味「チート」で、あれはクロノグラフ制御コラムホイールの規制バネ(相当)からハンマーを駆動するエネルギーを取っています、言い換えると「人の力」でハンマーを直接殴っているようなものです。
さらに、ゴングが一つでいいことを最大限利用しカテドラルゴングをたっぷりのスペースに納めて響かせるようにしています。

ストライク ワンもゴングが一つというのは同じですが、通常の一巻きのゴングでハンマーを駆動する力も分針から「横取り」した僅かなトルクに過ぎません。
それであっても充分に大きな音がする、という事は如何にサファイアクリスタルゴングを使って叩かれたエネルギーを淀みなく風防から放出することがプラスに働いているかの証明になり、そこから、フル ストライクの音の良さもサファイアクリスタルゴングの貢献が大きい(トリップリピーター構造ももちろん貢献はしている)という事が分かります。



最後に昔拝見した風防と一体化したサファイアクリスタルゴングの実物を。
製造に恐ろしい手間がかかるでしょうが、その分の価値はあるという事でしょう。

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