IKEPOD IS BACK!! の個人的理解

 By : CC Fan

ある意味、”伝説”だったIKEPODが復活する、というニュースが報じられたのが2018年9月、元アイクポッドジャパンの”オープン回し者”としては興味津々でした。

実は、去年10月に、ノーブルスタイリング葛西氏とご一緒したスイス取材紀行の時にフットワークの軽い葛西氏が先行して新生アイクポッドの関係者に会っており、いろいろ情報を伺っていました。
その後、バーゼルのインキュベータースペース(カーステンも出ていたところ)で、”再会”したり、いろいろと紆余曲折がありましたが、ノモスなどを取り扱う大沢商会がディストリビューターになり、日本にも導入が決まったということで実機を改めて拝見する機会が得られました。

個人的にはいろいろな私情がありましたが、作り手の話を伺い、25年前のアイクポッドとは”別物”としてより適切なポジショニングを目指すと理解したのでご紹介したいと思います。

第三世代(Third Generation)という新生アイクポッドは第二世代のポッド(先ほどの回顧録を参照)のデザインをほぼそのまま復刻したものになります。



違いは2点、第二世代で特徴的だったベルトのデザイン特許はアップルに売却済みのため使えず、第一世代(シーズラグ)と同じ尾錠とベルトスタイルのラバーストラップになっていること、そしてミヨタのクオーツを使用し、10万円以下というプライスを実現したことです。

特に後者は個人的になかなか納得ができず、今回作り手に直接話を伺うことでやっと理解し、納得し、別物として楽しむと考えることができました。



マネージメント・ディレクターのクリスチャン-ルイ コル(Christian-Louis Col)氏。
今回来日し、直接新しいアイクポッドについての説明を行っていました。

アイクポッドに特別な思い入れがあった氏は休眠状態だったブランドとデザインの権利を購入し、復刻させました。
最重要なのはデザインであり、それ以外の要素を極限まで最適化することで、手ごろな価格するという決断を行いました。

個人的には今でも、第二世代アイクポッドの価格は行っていることの技術的困難さや、マークニューソンのデザインの価値を考えれば絶対的には適切だったとは思いますが、やはり相対的にはデザイナーズウォッチとしては高すぎると言わざるを得ません。
さらに、25年前よりも時計の値段はどんどん上がってしまい、現在は普通に買える良い時計が少ない…という思いも値段を下げるモチベーションだったようです。

正直に言えば、ミヨタの代わりにスイスエボーシュのクオーツを使えば、SWISS MADEラベルの基準を満たすことができ、文字盤上にSWISS MADEと書くこともできたそうですが、値段は今より上がってしまいます。
製品に自信があれば、原産国なんて関係ないということで、それぞれのサプライヤーから最も価格と品質のバランスを良いものを集めた結果、ムーブメントは日本製、ケースと風防は香港(中国)製、文字盤は台湾製、これは秘密でもなんでもなく、普通にオープンな情報です。
スイスの人件費は高い、そんな人たちを使ってこの値段が実現できるわけがないだろう?という正直さは素直に素晴らしいと思います。

特に印象的だったのは第二世代アイクポッドは”デザイナーの作った時計であって時計師の作った時計ではなかった”というセンテンス。
裏蓋がない一体型ケースはオーバーホールのたびに専用の工具を使ってムーブメントを文字盤側から抜かなくてはならず、困難(Difficult)だよね?と伺うと、困難なんて生ぬるい、悪夢(Nightmare)だったとのこと。
これはデザインを行ったマーク・ニューソン(デザイナー)のこだわりだったようですが、時計の維持(時計師)から見るとマイナスにしかならない仕様でした。
今回のアイクポッドは”デザイナーのデザインを時計師が作った時計”であり、メンテナンス(主に電池交換)もやりやすくなっています。

また、ベルトの取り付け部自体は以前のポッドと完全互換で、第二世代のアイクポッドにも使えるそうです。



25年の時を経ての邂逅…
どちらが第二世代で、どちらが第三世代か、わかりますか?



シンプルな2針。



クオーツクロノグラフ。



ケースや文字盤は比べれば気になるところがないとは言いませんが、”普通に”よく出来ていると感じます。



こちらは会場に展示されていた第二世代のオリジナル。

今回のデザインは25年前のリバイバルですが、”伝説のアイクポッドに挑戦したい”というデザイナーが表れているそうで、今後はより発展したデザインも登場しそうです。
更にムーブメントもクオーツだけではなく、機械式も検討中とのこと。

”デザインが良くて普通に買える時計”な第三世代アイクポッド、より幅広い層に受け入れられるのではないでしょうか。



元アイクポッドジャパンでも展示中…





おまけ、25年前のレアなダブルフェイス。
(葛西氏の奥様の私物)

関連WebSite

IKEPOD
https://ikepod.com/

大沢商会 アイクポッド
http://www.josawa-watch.com/ikepod.html